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2017年07月05日22:45

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姿勢

 人は何かをよく見ようとするときには、自然に前屈みになり頭を垂れます。よく見たくない場合には、胸を張り、世界から目をそらします。

【ただいま読書中】『遺伝子発見伝』R・J・デュボス 著、 田沼靖一 訳、 小学館、1998年、
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 オズワルド・T・エイブリーは1900年にコロンビア大学医学部に入学しました。当時は実験医学は「何の役にも立たない」と見なされている時代でした。しかし時代は少しずつ変わり始め、基礎医学や実験医学のために開設されたロックフェラー医学研究所にエイブリーは(そして後に著者も)参加することになります。
 ロックフェラー医学研究所の特徴は、異なる分野の一流の専門家たちがフレンドリーに雑談をしていてそこから学際的な研究がどんどん発展していくことにありました。エイブリーも様々な才能を自分の研究室に引き入れて、肺炎双球菌に関して多角的で学際的な研究を展開します。ただしエイブリーの興味の焦点は「人間と細菌の相互作用」にありました。人は免疫で細菌に対抗しますが、細菌はその免疫に対してまた別の手で対抗してきます。その過程の本質が何であるかを追い求めていたのです。
 エイブリーたちの研究は、肺炎双球菌の増殖と変異にも及びます。肺炎双球菌は形質転換(タイプが違う型に突然変わってしまう現象)を起こしていましたが、その原因となる物質がDNAであることをエイブリーの指導の下でマッカーティーが突き止めました。皆驚きました。当時核酸は重要な物質であるとは見なされていなくて、エイブリーは「肺炎双球菌にDNAがあることを誰も知らなかった」などと言っています。さらに驚いたことに、DNAによってR型菌がS型菌に形質転換すると、そのS型菌の形質はそれ以後遺伝をするのです。ということは、DNAは遺伝に関係している?
 これは当時としては“異端”の考え方でした。当時「遺伝子」としては「タンパク質」が最有力候補だったのです。しかしエイブリーらによって「DNA」が「遺伝子」ではないか、という仮説が提出されると、強烈な批判と共に、その仮説を真剣に検討する動きも生じました。そういったエイブリー(と肺炎双球菌)とは別の系での実験結果から「DNAこそが遺伝子の本体だ」と人々は認めるようになっていきました。ただエイブリーは化学的な表現を好み、「遺伝子」よりは「形質転換因子」と呼ぶことを好んでいたそうです。
 不思議なのは、これだけの大発見をしたエイブリーがノーベル賞を受けられなかったことです。ノーベル賞選考委員会は時々チョンボをしますが、エイブリーにノーベル賞を与えないという決定も私には大チョンボに思えます。こういったことって、あとから訂正できないんですかねえ。


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