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2017年04月12日06:45

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無知の告白

 LGBTの人は、日本では「左利きの人の数」と同じくらい存在しているそうです。だけどそれを本人は必死に秘密にするから、私はそれを知らずにのうのうと生きているわけです。私は、左利きの人にはしょっちゅうお目にかかりますが(職場にも何人もいます)、LGBTの人と直接口をきいたのは、これまでの人生でほんの数人にすぎません。つまり私は「LGBTの存在に無知」なのです。

【ただいま読書中】『女どうしで子どもを産むことにしました』東小雪・増原裕子 著、 すぎやまえみこ 漫画、カドカワ、2016年、1000円(税別)
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 「ディズニーランドで結婚式を挙げたレズのカップルがいた」というのは、何かで聞いたことがありましたが、そのカップルのその後のお話(コミックエッセイ)です。
 結婚して3年目、渋谷区のパートナーシップ証明をとり、会社も立ち上げ、理解者が増え、地域にも馴染み、幸せに過ごしていた二人ですが、「子供がいる家庭」が欲しくなります。
 私は一瞬不思議な気分に包まれます。これが男女のカップルで結婚して3年だと「子供はまだ?」攻撃が始まる時期かもしれませんが、レズのカップルだったらそもそもその“攻撃”はありません(別の“攻撃”はたっぷりあったでしょうが)。それなのに子供が欲しくなる、というのはどんな心理状態なんだろう、もしかして「カップル」というのは「子供」が参加して安定する構造なのかな、なんてことも私は思ったのです。
 二人は悩みます。「ふつうじゃないカップル」が子供を持ちたいと思うのは、単に自分たちの「エゴ」に過ぎないのではないか、子供が「ふつうじゃない」といじめられるのではないか、子供が不幸になるのではないか、と。
 ここでまた私は不思議な気分になります。「親になってはならない」という「欠格条項」があるとして、そこに「同性カップル」はあるのだろうか?と。私の感覚では「児童虐待をする人間」は「親としての欠格条項」に当てはまります。そんな人間は親になってもらっては困る。ただ、教育と訓練を受けてからだったらOKでしょうから「絶対的な欠格」ではなくて「相対的な欠格」です。それを上回る「ひどい人間」(「絶対的な欠格」に相当する人)って、どんな人でしょう? 「同性カップル」はそんなに「ひどい人」です?
 二人はいっぱい話し合い、そしてシリンジ法(ドナーの精液を注射器で体内に注入する方法)を選択します。問題はドナー。誰でも良い、というわけにはいきません。話を持ちかけられたゲイの友人は、それがきっかけで親にカミングアウトをし、さらに自分のカップルの彼とたくさんたくさん話し合うことになってしまいます。
 ところで、二人の妊活を批判する人からの意見に「子供も同性愛者になってしまう」というのがあったのですが、ではこの二人が「異性愛者のカップルから産まれた同性愛者であること」をこの批判者はどう説明するんでしょうねえ? 私から見たら「福島から避難した人をバイキン(触ったら自分も汚染されるもの)呼ばわりすること」と同レベルの発言に見えるのですが。
 同じく批判者からの「子供が可哀想」も、アメリカでは「意味不明」と言われてしまうところが私には興味深かった。アメリカ社会ではステップファミリーが当然だから「ふつうではないカップル」がすでに「ふつう」になっているからかもしれません。ただ日本でも、子供は自動的に不幸にはなりません。不幸にする人がいるから不幸になります。で、親が子供を守ろうとしても子供が不幸になるとしたら、それは周囲に「自分の気に入らないカップルの子供を不幸にしたい」という悪意と偏見を持った人間がいるからかもしれません。
 少数派の視点からは、自分の“常識”のふだん見過ごしている部分が照射されて、なかなか痛快な気分になれました。本書に感謝。


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