物理学者で情報理論学者でもある渡辺慧さんの「認識とパタン」を読んでいたら、「醜いアヒルの子の定理」というのが出てきた。どのような２つの個物を取り出してもその類似度は同じである、という理論だ。アヒル同士を比較してもアヒルとカラスを比較しても、その類似度は同じだというのである。
一切の価値観を捨てればと云う但し書きがあるが、ほうなるほどといったんは感心したのだが、ほとんど意味のない理論のような気がしてきた。この理論では、例えば出発点の術語として、「白い」と「1kgより重い」という２つしかないものとすると、この世界は次の四つに分節されます。
a. 白くて、1kgより重い
b. 白くて、1kgより重くない
c. 白くはなく、1kgより重い
d. 白くはなく、1kgより重くない
この分節された領域を組み合わせて、個物間に共通する特徴の記述を作ります。
特徴� �a.b.に共通する特徴 特徴�А�a.b.c.に共通する特徴
特徴�◆�a.c.に共通する特徴 特徴�─�a.b.d.に共通する特徴
特徴�� a.d.に共通する特徴 特徴�� a.c.d.に共通する特徴
特徴�ぁ�b.c.に共通する特徴 特徴�� b.c.d.に共通する特徴
特徴�ァ�b.d.に共通する特徴 特徴�� a.b.c.d.に共通する特徴
特徴�Α�c.d.に共通する特徴
ここでインチキなのですが、a.b.c.d.を４つの個物とみなすのです。つまり、「白い」とか「1kgより重い」というのは何の意味もなく、個物を分離させるためだけのものであり、個物が分離された後は忘れ去られ、単に個物の組み合わせによる「特徴」を合成するのです。
ちなみに、個物a．と個物b. の共通する特徴は、� きА↓─↓�の４つとなります。
その他の個物間も同様に４つの共通する特徴を持ちます。当たり前ですが‥‥
なんの価値観も持たなければものごとを分類できないのは当たり前のことで、こんなマッチポンプ的な定理を持ち出すことはないように思います。
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