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2017年02月04日07:09

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野生動物のドック

 野生動物について私たちはどのくらい知っているでしょう? 生態については研究が進んできていますが、たとえば野性で元気いっぱいのニホンザルの血圧の正常範囲とか肝機能の正常値とか、獣医学的な話はどうなんでしょう? 動物のドックをオープンしてそこにみんながぞろぞろとやって来てくれたら、データがたくさん取れて研究者は嬉しいでしょうねえ。

【ただいま読書中】『生まれ変わる動物園 ──その新しい役割と楽しみ方』田中正之 著、 化学同人、2013年、1700円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4759813527/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4759813527&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 東日本大震災の10日後、京都で著者が所属する京都大学野生動物研究センター主催の公開シンポジウムが開催されました。そこに集まった「動物園人(動物園で働く人たちの自称)」は重い課題をつきつけられます。「動物園は、必要か?」。
 著者は「動物園をフィールドとする研究者」という、日本ではちょっと珍しい存在だそうです。その動物園でサルの「お勉強」を著者は試みます。「実験」と言うと「動物実験=動物虐待」と噛みついてくる人がいるから、言葉を変えているそうです。実際にやっているのは、コンピューターのタッチモニターに触ったらご褒美のりんごのかけらがもらえることを学習することなので、たしかに「お勉強」ではあるのですが。
 チンパンジーでも「お勉強」が行われましたが、これがまた読んでいて面白い。完全にチンパンジーの自主性に任せています。4人(本書では「類人猿は『人』で数える」と宣言されています)のチンパンジーにモニターは2台。当然“力学”が働いて、お勉強が進む個体もいれば落ちこぼれも生じます。ところがその落ちこぼれの雌が腹膜炎で急死したとき、群れには意外な現象が起きました。落ちこぼれにも「他のチンパンジーのモチベーションを高める」といった「群れの中での存在価値」があったのだ、という話に、私は「人間ではどうなんだろう」と思ってしまいます。
 野生の類人猿は世界中で減少しています。すると動物園は「ノアの方舟」のような役割も果たさなければならないでしょう。「地球の未来のため」の視点が各動物園に必要なのです。また、野生環境では観察が困難なこと(夜間の行動など)の観察も可能です。その研究結果をフィードバックすることで、動物たちのQOLを向上させることができるかもしれません。
 公式に上げられている「動物園の目的」は「種の保全」「教育・環境教育」「調査・研究」「レクリエーション」の4つです。つまり「子供のための施設」ではありません。ということは、大人もせっせと動物園に通った方が良い、ということですね。


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