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2016年09月02日07:12

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スピード違反

 片道2車線の坂道で中央寄りの車線を時速60kmでゆるゆると下っていたら、高校生が乗った自転車が左側の車線を追い越していきました。

【ただいま読書中】『生涯最高の失敗』田中耕一 著、 朝日新聞社、2003年、1200円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4022598360/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4022598360&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 「サラリーマンがノーベル賞を受賞した」と一時大騒ぎされた田中耕一さんの自伝です。あまりに誤解が蔓延するのにたまりかねて、本当は自己宣伝などしたくない性格なのに真実を少しでも広めるため(それと「理系の人間はもう少しアピールを上手にしなければならない」という持論を実践するため)に筆を執ったそうです。
 田中さん自身、「どうして自分がノーベル賞?」と思ったそうです。「レーザーによるタンパク質の質量分析」では、世界的にはヒーレンカンプとカラスが開発した「MALDI」という方法が有名です。論文もヒーレンカンプとカラスの最初の論文は田中の論文より早く投稿されましたが受理されたのは田中の論文より1箇月後でした(たぶん査読に時間がかかったのでしょう)。ただ、ヒーレンカンプとカラスは論文の中で「前年の田中の発表(まだ論文にはなっていなかったもの)に刺激を受けた」と謝辞を述べていました。著者に言わせると「田中は0を1にし、ヒーレンカンプとカラスは1を100にした」ことになります。そしてノーベル賞は「0を1にした」ことを最重要視します。
 著者は島津製作所で「基礎実験」「新製品の開発」「営業」「ユーザーと一緒に応用分野を開発」の“ワンサイクル”を最初の質量分析機からなんと4回も経験しているそうです。これは島津製作所では“少数派”だそうです(かつてはこんな人は多くいたのですが、“専門職”が多くなってきているそうです)。著者はご自分のことを「エンジニア」と称します。現場とユーザーとを愛する視野の広いエンジニアです。だから昇進試験はまじめに受けず、40歳を過ぎても主任だったのだそうです。
 分野は違いますが、私自身も現場を愛する人間なので、気持ちの一部はわかるような気がします。出世をしたいわけではありませんが、出世してしまうと現場から遠ざかってしまいますからねえ。
 マスコミに対する苦言もあります。「講演をしてもまじめな話は無視され、その合間に挟んだジョークばかりが報じられて、『田中は変人だ』というイメージがひたすら広げられた」のだそうです。そういえば「サラリーマン受賞者」というのは広く報道されましたが、「質量分析」について真面目に報道したものを読んだ覚えのある人は、どのくらいいます?
 実際に著者が開発した手法がどのようなものかは、本書をどうぞ。実にわかりやすく書いてあります。さらに「独創性」というものが、実は誰にでも備わった特性であると著者が信じていることもよくわかります。ただ、セレンディピティー(著者の場合、間違えて作ってしまった混合物を、もったいないからと実験してみたら大成功だった)は誰にでも訪れるものではないかもしれませんが。
 ちなみに、著者はノーベル賞受賞後に「田中耕一記念質量分析研究所」の所長に就任しましたが、ご自身の名刺には「質量分析研究所」とあるそうです。自分の名前が冠されているのは、なんだか恥ずかしいのだそうで。


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