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2016年07月17日06:16

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完全装備

 朝っぱらから遠くにサイレンの音がする、と思っていたら、通勤経路途中のマンションの前に消防自動車とパトカーが何台か止まっていました。火事かあるいは救助が必要な事故か、と思いましたが、車を停めて野次馬になったら周囲の迷惑でしょうからさっさと通過したので詳細は不明です。
 私が注目したのは、消防自動車の横に立っていた消防士。ヘルメットと防火服をしっかり着用していて、これでマスクをつけたら火災現場にそのまま突入可能な恰好ですが、問題は暑さです。あれ、絶対に暑いですよねえ。熱中症で倒れたりしないように、不必要な場面ではもう少し“軽い”恰好にできないのでしょうか。万一に備えるためには寛ぐわけにはいかないでしょうが、どう見ても「今燃えています」という状況ではなかったものですから、消防士の健康がちょっと気になりました。

【ただいま読書中】『HSPと分子シャペロン ──生命を守る驚異のタンパク質』水島徹 著、 講談社(ブルーバックス)、2012年、940円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062577747/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4062577747&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 1962年にショウジョウバエの幼虫(つまりはウジ虫)に熱ショックを与える(生育環境の温度を37度から50度にする)と、特定の遺伝子の複写が増えその結果特定のタンパク質が生産されることがわかりました。そのタンパク質は「HSP(熱ショックタンパク質)」と名付けられましたが、のちに、大腸菌から人間まで、同じようなHSPを作ることがわかりました。細胞に一番快適な37度から急に42〜50度に環境の温度が上がると細胞はせっせとこのタンパク質を生産するのです。
 高熱菌という80度の熱水中で生きている細菌は、温度が急に90度になるとHSPを作ります。面白いのは、精神的なストレスでもHSPが作られることです。
 HSPは分子量や機能で、大まかに10種類、細かく分類したら100種類以上のタンパク質が存在しているそうです。
 HSPがストレスから細胞を守る、の前に、ストレスはどのようにして細胞を傷害するのでしょう?
 タンパク質は基本的にアミノ酸が1本の連鎖となったものです。ただしただ並んでいるだけでは何も起きません。その一本鎖が複雑に折れ曲がって「立体構造」を形成することで「そのタンパク質の機能」を発揮することになります。しかしアミノ酸同士の結合力は弱く、その立体構造は常にゆらゆらと揺らいでいます。その立体構造が少しでも傷害されるとタンパク質は変性してしまいます(卵の白身に熱を加えると、タンパク質内部に畳み込まれていた疏水的なアミノ酸が表面に出てきてタンパク質が水に溶けることができなくなり、白身は白濁します)。ではHSPはどのようにタンパク質の変性を防ぐのか? 先ほどの卵の白身だと、HSPは表面に出てきた疏水的なアミノ酸に結合して、それが他のタンパク質と結合しないようにブロックします。さらにHSPは、変性したタンパク質を元に戻す機能も持っています。このメカニズムがまた面白い。いろんなやり方で変性したタンパク質を修繕するのです。
 ふだんのHSPはHSF1というタンパク質と結合して細胞の中で静かにしています。そこにストレスが加わると、他のタンパク質と同様HSP(とHSF1の結合物)も変性し、HSF1が分離します。それでHSPが機能し始めるわけですが、同時にHSF1はDNAに結合し、HSPの合成を始めます。つまりストレスでタンパク質が変性すること自体が、HSPを活性化させると同時にHSPの増産も開始させるのです。なんとも巧妙な仕組みです。
 かつての貴族社会で、大事に育てられたお嬢様が社交界にデビューするときに、お嬢様は本当に何もできませんから(着替えどころか、お尻を拭くことさえできないお嬢様もいたそうです)そこに付き添って細々と世話を焼く係の中年女性のことを「シャペロン」と呼びました。それと同様に“一人”ではなにもできないタンパク質に付き添って、立体構造を作らせ、必要な場所に移動させ、そこで機能させ、変性したらそれを修繕し、最後に分解、そういった「シャペロン」としての役目をHSPが果たしているのだそうです。逆に言えば、HSPがもしも存在していなかったら、私たちは生存できません。さらにHSPは、タンパク質だけではなくて傷を受けたDNAの修復にまで関係をしているのだそうです(これは著者オリジナルの研究)。これはすごい話です。
 著者は、HSPの研究をベースに、医薬品と化粧品の開発をしているそうです。これからあっと驚くようなものが次々登場するかもしれません。本当に楽しみです。


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