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2014年12月24日07:16

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無限の連鎖

 食物連鎖は「命」の特定生物への集中です。すると資本主義社会での「経済」を「お金の循環」と言い換えたら、食物連鎖と同様、特定生物(金持ち)に集中していくのは、「自然の摂理」と言うしかないのでしょうか。ただし、食物連鎖の場合「頂上の生物」もいつかは死んでそれまでに吸収したすべての命を自然に帰しますが。

【ただいま読書中】『ビールの歴史』ギャビン・D・スミス 著、 大間知知子 訳、 原書房、2014年、2000円(税別)
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 ビールの歴史は1万年前まで遡ります。トルコ・イラク・イランにまたがるクルディスタン地域で新石器時代の人びとが最初のビールを製造したことはほぼ間違いがなさそうです。そしてそれ以来、ビールは世界中のほとんどの地域で作られてきました。ビールに限らず古くから様々な醸造酒が造られていますが、人類が放浪生活をやめて穀物を栽培・貯蔵する定住生活を始めたのは酒を飲むためだったかもしれない、と著者は一発かましてくれます。
 シュメール人は、5000年以上前に粘土板に数種類のビールの製造法を記録しています。穀物からパンを作りそれを水に浸して自然発酵させるというやり方です。紀元前2000年頃バビロニア人がシュメール人を征服すると、ビール造りは“国家事業”となりました。ハンムラビ法典には20種類のビールが登場するそうです。この時代、ビールはただの嗜好品ではなくて、宗教的にも重要な意味を持っていました。それはエジプトでも同様で、神々への捧げ物としてビールが用いられています。
 ブドウができるところではワインが人気でしたが、ブドウが育たない寒冷地では麦がよく育つからビールが人気となります。バイキングもビールで景気をつけていました(スカンジナビアで乾杯が「スコール」なのは、敵の頭蓋骨(scole)でビールの乾杯をしていた風習に由来するそうです)。612年にフランスのメッツの司教に就任したアルノーは、不潔な水と病気の関係に気づき、「ビールを飲め」と繰り返し説教しました。そのせいか、ビール醸造の中心地は、修道院でした。
 ホップはビールの殺菌剤(と風味づけ)として用いられます。ホップ以前には様々な薬草が試されていて、その中で最もよく用いられたのはノコギリソウとヤマモモだったそうです。どんな味の「ビール」なんでしょう?
 近代欧米では、家庭でも広くビールが造られていました。従事するのは主婦です。しかし、産業革命で都市への人口集中が起こり、ビール産業が発達します。蒸気機関は、ビールの製造にも輸送にも活躍しました。鉄やコンクリートも醸造業界は積極的に取り入れます。パスツールはビールの低温殺菌法(パスチャライゼーション)を開発します。1970年代にイギリスではビール会社は「ビッグ・シックス」と呼ばれる6社に絞られ、伝統的な「エール」は「ラガー」に駆逐されそうになりました。ところがこういった大会社のビールに欠けると消費者が感じたのが「個性」です。そのためでしょう、80年代から「クラフト(手作り感覚の地ビール)」が流行します。
 ビール造りの基本は昔からほとんど変わりません。まず麦を水に浸して発芽させ麦芽にします。そこでデンプンが糖に変わります。良いところで発芽を加熱して酵素の働きを止めますがその作業を「焙燥」と呼びます。その温度の違いで様々なモルト(麦芽)が生まれ、それが最終的なビールの風味や色の違いにつながります。ビールメーカーは複数のモルトをブレンドすることが多いのですが、それはワインと共通ですね。次は麦芽をどろどろのお粥状のマッシュ(糖化液)にし、一定の温度を保って糖化を進めます。このマッシング得られた甘い麦汁を沸騰するまで加熱しそこにホップが投入されます。ホップも、一種類の場合もあれば複数の場合もあります。濾過された麦汁は発酵タンクに移され酵母が添加されてアルコール生成が始まります。発酵には、上面発酵(比較的高温で活動し液の表面に浮く性質を持つ酵母を使用)と下面発酵(比較的低温で活動し沈む性質を持つ酵母)がありますが、最近は自然発酵(空気中の野生酵母を使用)もベルギーなどで採用されてきているそうです。
 ベルギーではビールは「伝統文化」で、多種多様なビールが存在し、それぞれにふさわしいグラスが用意されているそうです。これは、ベルギーがかつてオーストリア・フランス・オランダに支配された歴史を持っていることの影響が大きいのかもしれません。このベルギー名産のユニークなビールの一つが「ランビックビール」で、その名称の使用には厳密な基準があります。材料は、未発芽小麦と大麦麦芽、2〜3年貯蔵して香りも苦みも飛んだホップ。麦汁は浅くて蓋のない樽に入れられ、天然の野生酵母や微生物が入り込んで発酵が始まります。ですから品質はバラバラ。基本的にとても酸っぱいそうです。
 ドイツビールと言えばミュンヘンと答えたくなりますが、ここでは「オクトーバーフェスト(ビール祭)」が盛大におこなわれます。600万〜700万の観光客が集まり600万リットル以上のミュンヘン産ビールを飲みほすそうです。でもそれだと1人1リットル? 意外と少ないですね。桁が一つ違うんじゃないかしら。ドイツの章では様々なビールが紹介されますが、私が興味を引かれたのは「シュバルツビール」。ローストした麦芽を使う「黒いビール」ですが、西ドイツではほとんど忘れられていたのが東ドイツでは保存されていて、ドイツ統一でまた注目されるようになったのだそうです。
 ビール生産量は、かつてはアメリカがトップ、ドイツが2位でしたが、現在はアメリカが2位、ドイツは5位です。では現在のトップは? 中国だそうです。中国のビールは9000年の歴史を持っていますが生産量がどんと伸びたのはここ20年のことです。
 イギリスの歴史で面白いのは、ビールが「健康のため」に推奨されたことです。貧困層を中心に安いジンが多くの人の健康を損ねたため、ビールがその代替として推奨されたのでした。
 アメリカのビール産業の基礎を作ったのは、イギリス人ではなくてドイツ人でした。アメリカの大手醸造会社の多くを築いたのはドイツからの移民です。20世紀初頭に禁酒法が施行されます。1850年にメイン州が「ドライ・ステート(禁酒法を実施した州)」となり各州が次々禁酒法を施行、1920年に全米で禁酒法が施行され33年に廃止されるまで、合法的な会社は、ノンアルコールビールや麦芽飲料、「ニアビール(アルコール度数0.5%)」の生産で生き延びます(生き延びることができなかった醸造所の数は数えられないようです)。
 飲む場所、グラス、マナー、飲む量……国によってあまりに違うことに私は目をぱちくり。日本の「とりあえずビール」も中国だったらマナー違反になるそうです(最初の飲み物を食事の最後まで続けるのがマナーだそうで)。 
 文学、映画、音楽にもビールはよく顔を出しています。著者はとても楽しそうに、古典詩から20世紀のオペレッタや映画からも、自由自在に「ビール」を取り出します。そして最後はコマーシャル。楽しいビールのコマーシャルが世界中に溢れているようです。まあ、気むずかしい顔をして飲むのは、ビールには似合わない気がするから「これでいいのだ」でしょうね。


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