夏みかんはんぶんこした記憶だけ濡れたポケットにしまっておくよ #短歌
好きだったあなたのうしろ姿だけずーっと見てたバス停の午後 #短歌
コンビニのアイスを溶かす帰り道 みずいろの空がひどく眩しい #短歌
ひんやりとした白い殻のなかで眠るようにきみの影を忘れる #短歌
足音が途切れたあとの踊り場にひとりきり待つ傘のしずくよ #短歌
海の底みたいな部屋のカーテンを揺らすあなたの不在の気配 #短歌
のぼりきった先の天井を見上げてはしずかに夏をやり過ごす日々 #短歌
すれ違う時に目を伏せる理由だけノートの端に小さく書いた #短歌
ひらり降る庭の隅っこ 埋められた小さな秘密を思い出せない #短歌
夕立のあとのにおいがかすかにするガラス戸ごしの町の背表紙 #短歌
お湯沸かす間くらいは泣かないと決めて静かな夜を見つめる #短歌
缶ビールあければ夜の静けさがみちみちてくる無力な僕らに #短歌
雨粒の落ちる音だけ聞いていた 青い水たまりのふちで小さく #短歌
びしょ濡れの背中を見せて笑うからうつむくしかなくなっちゃったよ #短歌
どん底にいると思えばそれだけで笑えてしまう僕らの夜だ #短歌
たよりない言葉をつむぎあう夜の静けさに雨の音だけがして #短歌
冷蔵庫の奥で惑星みたいに冷えている野菜たちの不条理な色 #短歌
不揃いな形を許し合うように煮込まれていく温かなスープ #短歌
洗いもの終えて静かな窓を開け月はわたしの手まで冷えている #短歌
本音とは誰にも抜けない剣だから鞘ごと愛を練習してる #短歌
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