触れた指戻す理由を探しつつ知らないままの形を守る 短歌拭き取れば消えてしまうと知りながら指を離せずしばらく置いた #短歌シャッターを下ろす手首の細さごと残して部屋はひとりを選ぶ #短歌変顔を安く差し出す夜の奥 本気の顔はまだ脱げなくて #短歌やわら
いまはまだそういう気分じゃないのです ドアの隙間に午後をはさめば #短歌思い出をたたむみたいに夕暮れは今日の輪郭やさしく消して #短歌真ん中で光るみたいにためらってわたしをわたしより先に知る #短歌年齢を脱ぎ捨てる水 胸に満ち名もなく泳ぐ午後が疼く
まだ食べる前の静けさ持ったままフォークの先が少し濡れてる #短歌靴の裏は消えるものだけど見ていたことは消えてくれない #短歌みんなもういなくなっちゃったあとだけど夜はちゃんとここにあるよね #短歌きったあともしずけさだけがつづくからここにいること
定食の小鉢を最後まで残したきみの名前を思い出してる #短歌改札の向こうで手を下ろすときもう見えなくても平気になるね #短歌大事だと言われすぎてしまった日 言えないことがひとつ増えたよ #短歌終電をわざと逃した改札で理由じゃなく て夜を見ていた #短歌
改行の位置を直して送り出す 昨日の人はもういないまま #短歌選択の重さを語る掌で透明な夜をひとり飲み干す #短歌あいまいなままの響きを置いてきて言葉の骨を拾えない夜 #短歌月明かり追わずに指を休ませていのちの線を静かになぞる #短歌返さないこともひ
言わぬまま続く関係夜にあり触れあう舌が熱を覚える #短歌破るたび白さが増していく胸で 言葉は箱に戻されていく #短歌通知音ひとつで揺れる自尊心 既読の秒針ぼくを測るよ #短歌陽だまりに老人の椅子ひとつ置き やわらかく折って座らせ #短歌掬うたびこぼれ
どこへ行く 聞かないことも約束で 軽い鞄のままでいようね #短歌飲み干せば済むはずなのにそのままで朝の光をちょっと試してる #短歌ポケットの底で小さく揺れている 肯定だけが体温になる #短歌ひややかな床にころんと落花生 少し眠れば芽も出るかもね #短歌
台所 火の名残ある指先を嗅げばひとりの暮らし立ちのぼる #短歌風紋を胸に写して立つひとよ 離陸しないで空を抱けり #短歌境界線そこに死の語を仮置きし水着は今日の防波堤なり #短歌ためらいをほどく仕草で風を抱き冬の名残を空に返せり #短歌くつひもをほど
夕焼けがなくなる前の呼び声で名前じゃないとこほどけて向かう #短歌トンネルの明るさだけを先に食べ鍋の底にはまだ夜がある #短歌丸くなる理由を川に聞かないで 止まった時間が石を抱いてる #短歌背に乗せた夜が答えでいいのかと神もいっしょに立ち止まって
雪になる手前で止めた願いとか触れない方があったかいやつ #短歌助詞だけ入れ替えながら暮らす日々 走る瞬間に文がほどける #短歌野ざらしの肺で吸い込む風があり勝つという名の理由を洗う #短歌曇ったら逆に落ち着く眼鏡越し世界は今日はぼんやりでいい #短
返却日忘れていいと言う声で背表紙ごと冬がひらいた #短歌待ってないもうここにいて終わってる 生きるってたぶんそういう作業 #短歌名の奥に踏み切れぬまま雪駄置く 冬を知らない素肌の罪よ #短歌受け取りはサインも要らず 冬だけど不在票だけまだあたたかい
見なければ平気なはずの通知音 消した指先まだ君を知る #短歌雨の日のフライパンだけ熱々で割られる前の卵が待ってる #短歌動かずに待ってるだけのぬくもりが折れないままの骨を照らすよ #短歌左右では足りないことを知っていてそれでも空を数えてしまう #短
使われず角の丸くなった石鹸は冬の終業をまだ信じてる #短歌輪郭ってたぶん後から追いついて現実だけが先に動くよ #短歌敬語だけ上手になってく夜がある 本音の位置がわからないまま #短歌脱いだあと空気がひとつ残ってて誰でもないをかかえて帰る #短歌ポケ
体温の行き場がなくて黙る午後 言葉は全部 内側を向く #短歌逝く冬を背中に受けて歩き出す その香りだけ少し先を行く #短歌 秘密だよって言われると開けたくて 音のないベル 胸にしまった #短歌まだ熱い指の記憶でまばたきし 起きる理由を作らずにいる #短歌
急ぐ手が季節を追い越す音がする 冬はいつでも未処理のまま #短歌背負われた春の行き先知らぬまま花は花とて地面に眠る #短歌読まれないってやさしいね ときどきね言葉が浮いて自由だからさ #短歌知ってても言わないでいる時間ってさ たぶん人間の発明だよね
背表紙の呼吸がそろう夜がある 読まないままの約束たちよ #短歌濡れたまま名前を持たず歩いてる 言葉になる前 ひとのかたちで #短歌体温は忘れ物です たぶんだけど世界はそれを回収しない #短歌売れなくて助かっているものたちがこの世の大半なんじゃないかな
指先で書かないままの白を抱く 名前になる前のぬるい光の #短歌温かいというと壊れそうだからさ そっとしたまま朝を待つんだ #短歌コンビニでいちばん安いガムを買う つづきのぼくが噛みはじめてる #短歌スマホには容量不足の表示だけ今日も消せずに増えてい
丸くなったかたちのほうが先にいてぼくらはあとから理由をつける #短歌正解と呼ばない場所に光るもの 夜はそこだけ撫でていきます #短歌電源を切ってもどこかで鳴っていて静けさだけが増えていく部屋 #短歌言わないでいるってこともたぶんひとつの続け方なん
欲が立つと言われた後に夜がある そこにあるだけ少し信じる #短歌湯気のなか肩書き眠る砂糖飴 舌で溶かしてひみつになるよ #短歌それでいいだれにもみせずあるくひとよろいの中にねつがあるひと #短歌塾やめたその日の雪が甘かった 世界がすこしやさしくなる
紙片舞ひ謝罪の外へ円を描し軽きものほど留まらずにして #短歌でかい主語持ったまんまで黙ってる 影だけ先に行っちゃうんだ #短歌なんとなく濡れていい日にしてしまうきみがやさしいだけの理由で #短歌夜の端落ちた母音を拾い集め声にならない声を抱える #短
無言の座 息を合わせて明くるれば語らぬ慈悲で身に染みにけり #短歌聞かぬまま枕に伏せて夜更けゆく 言の葉やさし夢を避けたり #短歌動かないままの熱だけ残されて影がゆっくり深くなるのだ #短歌うまいって言う役目だけ口にして味の外側でうなずいている #短
立ち止まることも行き先だったんだ 靴が小さくうなずいた夜 #短歌拍手ってほどけるとただの空気でさ 床だけちゃんと現実してる #短歌なんかもう言葉が重くてドア重くて蝶番だけが全部知ってる #短歌それ以上言わないための帰り道 靴音だけが話し続ける #短歌
戸は閉じて名だけが外に滲み出る踏まれぬままの白の真実 #短歌飲み込んだことばは夜の栄養で減ってく闇が少しやさしい #短歌待つ側になってしまった午後だから椅子が世界を先に休ませる #短歌欲しかった空は在庫切れ それでも似たような青を袋に入れる #短歌
灯りだけ先に点いてる椅子の列 来ない未来を責めずにいる夜 #短歌運命って言う前にもう火が入る もやしはだいたい正直だよね #短歌 病気と金の話で日が暮れて触れずに残る空の明るさ #短歌終バスが走馬灯みたいだったから今日はちゃんと帰れる気がする #短歌
終わりって言えば終わると知っていて言わずにここに少し座ってる #短歌若さって気づかぬうちに換金し減った分だけ夜が軽いよ #短歌白き頁 窓に預けて影を読む 声なき選択 羽音に似たり #短歌熱のなか名前失う水の色 飲み干すたびに春が遠のく #短歌手をほどく
靴ひもを結び直して朝になる誰にも見せぬ鎧を着てる #短歌秤から落ちた重さで夜は満つ 名付け損ねた世界の端よ #短歌絵が好きな人間にとってこの街は完成しない下書きのまま #短歌言いかけてやめた分だけ椅子がある 座っていいよ今日はここまで ##短歌別にい
拾えない紙片ばかりが増えていき謝りきれない軽さで回る #短歌主語でかいだけで会話が進まないわたしの影が先を歩くよ #短歌デフォルトが増えていく町 夕立に逃げぬままで傘を差し出す #短歌欠けたまま走り続ける名を名乗る 数は減っても止まらない声 #短歌
夢だって言えば壊れる距離にいて電話の熱が夜を決めてる #短歌固結びほどく理由がなくなって今日という日が少し長持ち #短歌まだ言葉要らない席で息をする黙ってくれる朝が助ける #短歌聞けばもう眠れなくなる言葉ほど夜にやさしく置いていかれる #短歌何もせ
1個目ですでに転んでいる話 最後まで聞く役を引いた日 #短歌進まなくていいと知ったら急にある戻る道にも名前がついた #短歌届かずに拍手がほどけ残るのは濡れない名前と乾いてる床 #短歌去り際の言葉の重さを残したまま蝶番ひとつ夜にきしめく #短歌火葬場の