水槽のガラスに映る自分だけ息をしていて世界が遠い #短歌
どこか遠くで鳴る踏切の重だけがうすい曇り空をとおっていく #短歌
本を読むことでひとりを忘れた日 今は読まないことまで孤独
説明を減らして描く夕焼けは見た人ごとの正解になる #短歌
恋なんて言えないままで幾度も引き出し開けてしまう辞書です #短歌
バス停の骨組みだけが夕暮れて帰れないこと知っているよう #短歌
きみと食べたかき氷の赤がまだ溶け切らないで夏をまとわせる #短歌
冷凍庫の氷がカラリとおって鳴るだけの透明すぎる午後のサイレン #短歌
戻れないかたちに曲げてしまったのふたりの夏を責めるみたいに #短歌
ひだまりという暖簾の裏でおじさんが靴を履きなおしてる #短歌
向こうからビニール袋を頭にかぶったおっさんが走ってくる午後 #短歌
ロードサイドのファミレスの窓に映る正しく生きてるぼくの薄さよ #短歌
ルールなんてない方がむしろ苦しいと気づいてしまってからが本番 #短歌
「身代金いくらにする?」と問いかける僕らの世代の安い誘拐 #短歌
誰にも言わない秘密にしたまま今日で世界が終わってもいい #短歌
追い抜いた風の匂いが少し切なくなるのはなぜだろうかな #短歌
まともなふりをするのにもう疲れたから僕の形を忘れてほしい #短歌
消費社会の端っこで今日 僕が生きてる証明のように #短歌
冷たさに触れて確かめ夏だった 虹の死骸を水が撫でゆく #短歌
風吹けば色は名前を忘れゆき花びらだけがそれを知ってる #短歌
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