二膳の箸 さざ波みたいに重なって名前の知らない誰かを想う #短歌
するりと滑り落ちた優しさに名前をつける夜はもう来ない #短歌
お寿司なんて食べている場合じゃない 花江夏樹よりぼくを愛せよ #短歌
恋の話を聞くたび耳に届くのはきみの声した夢の残り香 #短歌
誰かのために詠んだ歌さえくじを引く手の震えに寄り添っている #短歌
本当は君に届けたかった そんな歌が誰かの明日を救っているの?
夢の中だけの贅沢 現実は改札口の無機質な音 #短歌
聞かせたい言葉はたまってゆくばかり 夢の出口で息を止めてる #短歌
爪を切る誰かを傷つける刃物を自分に向けて試しているだけ #短歌
切られた爪の先まで私だと言えないままでゴミ箱に捨てる #短歌
きれいに割れなかった木のささくれが午後をひっかき血がにじむよう #短歌
もう二度と観ない映画の半券がいちばん君に近かったかも #短歌
自動ドアの光に溶けていく影 僕はもう昨日の風の中にいる #短歌
見送った扉のあとに残る風 わたしは何を連れてきたのだろう #短歌
窓のそとは少しだけ苦いどら焼きの重さを手首に飼って返信 #短歌
メンテナンス過多な心に絆創膏 いつまで続くこの片付けは #短歌
コンクリートの裂け目に溜まる雨水の空の青さだけ盗んでく #短歌
窓の外 海は昨日と同じ色 わたしも今日は踊らずにいる #短歌
湾岸のひかりのなかに捨ててきた跳ねるこころのあとの鈍痛 #短歌
踊らないこころのままに街はすぎ ゆりかもめには誰も乗らない #短歌
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