あたたかいとも言えないこのお湯にただいまみたいな顔で沈んだ #短歌
消印のない夕ぐれを折りたたみことばの外へ歩いて帰る #短歌
揺れている花のむこうで言えなくてさよならだけが光をこぼす #短歌
降りる駅決めないままで揺れている 沈黙だけが手をあたためる #短歌
結ばずにいた紐ごと連れてゆくやさしさだけがほどけないまま #短歌
着直した名の皺をまだ抱えつつ夜の廊下を静かに曲がる #短歌
ことばより確かに今日を閉じてゆく皿の音だけ残して消える #短歌
ただいまと言わない部屋の明かりからひとりの今日をそっと着直す #短歌
自由って言葉にそっと触れてみるまだ持てるほど軽くはなくて #短歌
お清めの塩を切らしている夜にまだ帰らない靴だけ並べる #短歌
信号の青を味方に駆け抜けて風の続きをまだ探してる #短歌
濡れたままポケットの中で鳴る鍵を誰の帰路とも知らず握った #短歌
そこにいた証のように残る熱 触れぬことでのみ保たれている #短歌
ちょっとだけひんやりしてたその手から夜がこぼれてきた気がした #短歌
線路って夜だとなんかすごいよね ひかりいっぱいつながっていく #短歌
届かないことを選んだ指先がそのまま夜に線を引いてる #短歌
もういない土のぬくもり思い出し芽吹きのことを信じてみたい #短歌
乾かない袖を夜ごとに畳んでは明日のかたちを少しずらした #短歌
ぬるくなったスープの縁をなぞる指 言い過ぎたかことだけ残して冷める #短歌
もしもしと呼べば夜だけ濃くなって兄は桜の向こうに立つね #短歌
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