消えぬ線なぞれば夜の折り目ふかく たたんだ闇の足ひらけゆく #短歌
ひとつぶのあしたをポケットに入れたまままだ座らない光ゆれてる #短歌
たぶんもう誰のものでもない肩がハンガーひとつ選びきれない #短歌
ポケットの底で光がこすれあう まだ名もない日ひとつ拾って #短歌
今日という袋をたぶん閉じる音 鍵と紙片でできている夜 #短歌
だれもいない道のつづきに置いてきた
手のぬくもりがまだまぶしいね #短歌
この春を半分だけもらったから手のひら少し明るくなった #短歌
言葉より先にほどける夕暮れで白い吐息が距離をつないだ #短歌
かくし持つまなざし淡くほどけつつ花の奥よりひかりこぼるる #短歌
もしもまだ飛べる重さでいるのなら財布の音は聞こえない夜 #短歌
出口って言葉を先に思うから指の祈りがほどけないんだ #短歌
たぶんもう意味より先に届いてる 声のかたちのないあたたかさ #短歌
初心ってどこに置いたの帰り道 いなり寿司だけ先に食べたよ #短歌
ポケットにしまいきれない春があり まだ呼ばないで花の名前を #短歌
だれもまだ気づいていない机には結び直した沈默がある #短歌
ポケットにまだ乾かない風ひとつ きみの住所を思い出してる #短歌
だれもまだ呼ばない名前のところまで水のひかりが歩いていった #短歌
だれもまだ知らない夜を持ち帰るポケットの底すこし明るい #短歌
裏側のほうが光る気がしてる 触れないものにばかり会う夜 #短歌
ふわふわの白をこぼして閉じる本 ゆびのかたちがまだ残ってる #短歌
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