返した手ほんのわずかな温度差がわたしの夜を説明してる #短歌
たたまれた布のやさしい匂いからまだ帰らない今日を感じる #短歌
呼ばれてもすこし遅れて歩き出す わたしの影をわたしが追って #短歌
昨日よりやさしい影を雲に見て戻す箱には鍵をかけない #短歌
すこしだけきつい靴紐ほどかずにこのまま夜を連れて帰ろう #短歌
こわれてもたたんだままのいのちみる でんわのむこう はるさめですか #短歌
ぼくたちは雨を説明しなくなりただ濡れている人類だった #短歌
紙という物質としてそこにあり それでも手紙になりたがってる #短歌
指先に残る硬貨の冷たさが使われなかった時間を照らす #短歌
エンジンを切った車の窓に夜 速さだけまだふわり座ってる #短歌
布団ごと夜を巻き込む身をよじりちいさな意思を入れるポケット #短歌
赤福をそっと割りあう手のそばで同じ甘さがゆっくりほどける #短歌
水底で名だけ増やしているぼくはどの呼び方で浮かび上がれる? #短歌
窓際の消えないチョーク 粉のまま 帰る合図をまだ書かないで #短歌
「いいですよ」ってすぐ言えるその人が職場の空に雲を減らした #短歌
壊れると知っているから握るのか光のままで終わらせたいか #短歌
コインたちぼくの未来を計量し どの自販機もまだ押させない #短歌
声にすれば終わりが来ると知りながら言葉の縁に立っているだけ #短歌
触れたことそれだけ残すための手で空気の輪郭静かに抱く #短歌
振り向いてもう一度だけ確かめる外のわたしをしまうみたいに #短歌
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