消し忘れみたいに胸の奥でまだ小さな湯気が立っている夜 #短歌
アイロンをかけても消えない線があり たたんだ夜の深さを知った 短歌
空席のまぶたを閉じるみたいにね時間の羽を胸へしまった #短歌
ハンガーが少し重たい気がしてる きみのかたちがまだ揺れている #短歌
風がまた砂利を転がしまぶしさにザラザラしたる春の断面 #短歌
鍵とレシート触れ合う音だけがきょうの終わりをゆるく知らせる #短歌
踏みしめた気配のあとをなぞる風 さよならよりも白い光よ #短歌
春がきて手のひらの上やわらかにあたまをのせて晴れを分け合う #短歌
名の前のやわらかい距離あたためる だれでもないと言う息の白 #短歌
自分だけ守る作戦描きつつ春のまなざし花にかくして #短歌
紙幣よりやわいまぶたをひらく夜 人の形は羽で測れる #短歌
くるくると祈りを指で巻きなおし出口のほうを見ないふりする #短歌
聞くほどに輪郭のない声ばかり 耳のひかりをそっとはずした #短歌
散ることを季節のせいと言いながらきみの不在を抱いている午後 #短歌
細くなる会話の糸を結ぶ指 つよがる背中 月がやわらぐ #短歌
浮き足のまま買いすぎた絵はがきが夜の鞄で急に色褪せ #短歌
水音をまぶたの裏で受けとめて羽の隙間をすり抜ける午後 #短歌
止めし火の暗がりにまだ息があり 抱えた星は名を持たぬまま #短歌
さわれないままのやさしさ置き忘れ 月の裏側ひかりにほれる #短歌
むすばないゆびのかたちがまだあってページのすみに白がふくらむ #短歌
★
ログインしてコメントを確認・投稿する