胸の奥ひらくしぐさで世界まで一瞬ひかり跳ね返ってく #短歌
書き終えて立ち上がらない文字たちが拍手の代わりに白を見ている #短歌
待つという動詞をそっと置くように泡が消えるまでここにいますか #短歌
鳴らないと思っていた夜ひとつだけ星より低い音がしている #短歌
あとすこし近づいたならきえそうな色まで抱いて話がしたい #短歌
のみこめば澄んだふりする水だからうなずく音も少し冷たい #短歌
脱ぐことではじめて分かる重さかな床に残った昨日のかたち #短歌
ふり下ろす赤の細さに気づくころ楽譜の橋形もう薄暗い #短歌
助かったそこあのにある長い昼 白い包帯が影をつくった #短歌
号令のあとに残った黒い雨 焼けた地図だけ更新される #短歌
羽を持つ夢のつづきを昼に見て洗濯物がよく乾いてる #短歌
旅の夜 能面ひとつ連れ帰る 名前のない顔灯りにゆれる #短歌
ゴンドラに切り取られた街重なってりのない予告編になる #短歌
猫になり呼ばれる名前まだなくてそれでも胸はあたたかいまま #短歌
きぼうってラベルの剥がれた試薬瓶 月と雪とをふりつもらせる #短歌
本を閉じ少し静かになる部屋で続きを待ってるみたいな気持ち #短歌
雪になるその手をまだ止めないでした白く折れるまで話は続く #短歌
思い出は増えると重い砂の箱 波に戻れず指のあいだで #短歌
夜の奥 押せば戻れる気がしてる誰もいない家あたたかいまま #短歌
名前って呼ばれるたびに開くんだ 抱かれてる花もう世界です #短歌
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