模範などそもそも無いよと言われても手元の答え丸めてしまう#短歌
本当に誰もいないという廊下には少し遅れて島分の足音 #短歌
VRの境目あたりを指でなぞる まだ帰れないきみの輪郭 #短歌
意味なんてあとでつくもの知りつつも好きな曲だけ鍵にしてゆく #短歌
勝ち負けじゃないしと呟く その声の微熱みたいな揺れを見ていた #短歌
抜糸あとぽつりと残る空洞に人のいなくなったホールの気配 #短歌
もう来ないでくださいの文字置き去りに風だけがそっと部屋を通ってく #短歌
臓器ある縦笛として吹かれたい 脊髄までを揺らすひかりで #短歌
必死さを代わりに背負う君がいて無言のままに靴だけ減ってく #短歌
師走とは海老のせわたと口笛のまざる台所 母のうしろ手 短歌
ただ豚足むしゃむしゃしてただけなのに君の機嫌に触れた気がして #短歌
箸置きにちょうどいいよと笑う君 その小石だけ旅をしてきた #短歌
指先にカレーの風がしみてくるパンをちぎれば部屋が光って #短歌
間違えていいよと告げた声の先 たくらみさえもぬめる夜更けに #短歌
子供用おせちの角を指で追いまだ知らぬ年のひかり集める #短歌
だいじょうぶと告げる指先ふるえつつ毒も祝福もあなたは運ぶ #短歌
探しても探してもまた立ちもどる鍵のない部屋の静かなひかり #短歌
効き過ぎたらことば一枚のみこんで喉の奥までしずかな雨音 #短歌
液化してなおも形を探す夜 関節に置く蜘蛛のやわらかさ #短歌
恋愛を知らぬ指先にたよりなく缶コーヒーの曇りをなぞる #短歌
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