あなたにも解るようには言えなくてたとえば花を思い出すしか #短歌
各駅のとまるたび増す沈黙を本読む人の肩がゆるめる #短歌
千年を伝える衣を身にまとい今日の雨にもただ濡れてゆく #短歌
土手の風カーテンふわり吸い込まれ部屋番号の尽くるあたりに #短歌
秘密には値段がついていたみたい話すたび少し遠くなる人 #短歌
ぴったりを選ぶ儀式のあとすぐにタグはもう要らない身体になるの #短歌
うなずけば世界はすこし傾いてやれと仰るのなら水を汲む音 #短歌
やわらかくひとの日々とはこんなふう くたびれながら光をのこす #短歌
チョコよりも早くとけてく午後四時の光が冬を受け入れている #短歌
点字ブロックの黄をふみしめるようにして「おかえりなさい」がゆっくり届く #短歌
白という逃げ場をなくす絵の具皿にじむはじまりそれでいいんだ #短歌
その場しのぎではなく雨のにほいして帰る理由をまだ言はぬまま #短歌
あのひかり昼と夜とのあはいにも伸びゆく音を耳が覚えて #短歌
紙コップうすくあたたかそば湯とは名ばかりのものさみしく飲み干す #短歌
知らぬ名のひとへ宛てたる封筒にそっと転居の札を貼りけり #短歌
エアコンの温度下げようかと言う声のまえでしずかに氷が沈む #短歌
光熱費コンビニで払ふ夜の手にひかりはまだも自前でともす #短歌
笑い方だけうまくなってください女友達 言葉の奥の鏡を隠す #短歌
買われ待つ静けさだけがうつくしく黙ることこそ売るということ #短歌
丸くても割ればすぐにもろきこと愛の形と君はいふなり #短歌
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