高速の風をまとっていく夜を眠気と地図で分け合うふたり #短歌
見抜けないふりのうまさで暮らしてる 街灯下では誰もが俯く #短歌
夕陽とは重さのある絵の具だと思って歩く今日の輪郭 #短歌
仮装したまま怒られる通り雨 誰も正義の顔をしている #短歌
消しゴムの粉ふみしめていた道をいま似たスニーカーで踏みなおしてる #短歌
まぶたには湖 そこにいたという話をいまも信じてしまう #短歌
選ぶとはしずかに降る夜のことポスターの目を見返しながら
そのへんにあるものたちの光りかた 午後の記憶をゆるく混ぜあう #短歌
おかわりをしてる手だけ生きていてわたしは湯気のほうを見ていた #短歌
誰ひとり名を呼ばれずに消えていく霧の白さに似ていた朝だ #短歌
出す気ないじゃんのじゃんまで優しくて帰りの電車をひと駅飛ばす #短歌
こわれたる時計の針のふるえにもあの日のことを責めてしまうよ #短歌
街灯の明滅だけで泣くシーン 手ぶらの神がそっと通った #短歌
路地の果てひかりが壁を舐めており呼吸のようにやさしく遠い #短歌
画面越しうなずく角度までは知る たぶんわたしもそこにいたのだ #短歌
かさぶたをめくるみたいに銀杏のかおりを受けて胸がひらく日 #短歌
ひかりごと通り越してはまたもどる群れのうちなる呼吸のよう #短歌
やさしくと言えば世界がゆるまって花びらみたいな嘘を見ている #短歌
マダレーナ通りの名を言いかけて傾く午後にひとがこぼれる #短歌
いま黙るしかないような静けさを草の根ひとつずつ撫でながら #短歌
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