殴り合うことでやっと手のひらが温かったことを思い出す #短歌
沸き立ちて声のようなる泡ひとつ蛸は静かに茹でられてゆく #短歌
まつげから光を落とす小悪魔と夜の端まで歩く悪女と 短歌
指の跡つくほど近づく午後の部屋 想像という名の現実がある #短歌
フェンス越し犬のしっぽが揺れている止まるたび午後がやわらかくなる #短歌
浅い夢くりかえし見る午前四時 息をするたび形が変わる #短歌
フライ飛ぶ音を追いかけ目を細め風の向こうで世界が変わる #短歌
信号の青を待ちながら息を継ぐ守るべき身の境界として #短歌
ライトフライ背丈を越えて落ちていく届かぬものを追ってしまった #短歌
画面には風の動きが映ってる誰もいないのにざわついている #短歌
力こぶ分別ごとに立ち上がるやさしさだけを使っている手 #短歌
安さには名前がなくてまぶしくて抱えたままで夜を越えてる #短歌
じゃあいらない 風にまぎれて消えたもの 名前を呼べばひかりはにじむ #短歌
絵にすればきっと省かれぬことばかり蜂が止まった午後のやわらか #短歌
カレーより先にひかっているスプーン 名前のない日くり返してる #短歌
のぞきこむ乳の白さにゆれる冬 わたしの影は推薦の茎 #短歌
十年後見たら泣く写真たぶんこれピースの指がまぶしすぎてる #短歌
避難通路ふいに笑ってしまう夜 非常口だけあかるくて好き #短歌
葉のうらで蟻を待ってる午後の手にチョコのにおいてがまだ残ってる #短歌
もしあの日太ってなけりゃと思うたび鏡の中で笑ってみせる #短歌
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