恋人と呼ぶときだけがうまくいく音の丸さであなたを呼べる #短歌
わからないことを抱いて歩くしか 風の粒まで考えすぎる #短歌
ふたりして脱いだぬくもりを腕に掛け春の証拠を探しに行こう #短歌
パンくずを指で集めて並べれば必要なのは塩気くらいだ #短歌
砕け散る雪の粒らがまぶしさで生のかたちを言いそびれたまま #短歌
腹立つくらい器用な君がまた黙って誰かの髪をなおして #短歌
あの店の湯呑を両手で受け止める怒られてなお人は伸びるよ #短歌
くちなしの実つぶしながらも染めている声の端から冬がはじまる #短歌
ただのことただの治療と書きながら息を合わせる夜の点滴 #短歌
風ひとつ抜けては竹を鳴らしつつ剥き出しの声わたしに返る #短歌
占いは卒業しましたので今日の空たとえばそれが答えでもいい #短歌
それっぽい文体をまねてみた夜の構文だけがやけに正確 #短歌
ニュータウン午後の信号は青ばかり死を話すには明るすぎてね #短歌
わたしにも運命にも口がある スプーンを奪い合う昼下がり #短歌
パンくずを追えば夜にも道がある 僕たちは飢えているのかもね #短歌
名を呼べば喉という野に羊歯が満つ楽しさだけが生きてる証 #短歌
保険とはやさしさよりも静けさで心拍数を撫でてゆくもの #短歌
腫れる音サーカスの輪をすり抜けて拍手の中に浮く手の群れ #短歌
昨日まで確かに在ったものたちの空気抵抗をまだ身にまとう #短歌
冬空に編まれた皮膚の境界を引っ掻く癖がまだ治らない #短歌
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