たとえばの怒りは君に届かずに体温だけがゆるくのこった #短歌
顔だけが半分笑う午後三時 湯気のむこうでまっすぐじゃない #短歌
祝日を誰かが決めて消していく土曜の赤は人のあかしだ #短歌
なんという濡れ衣ですと笑いおく夕立すぎて傘たたむ音 #短歌
触れながら骨を撫であう夜の底やわらかさよりかたさを抱く #短歌
下手なもの出せぬと告ぐる口の端 技巧はやがて祈りに変わる #短歌
干しながらあなたの形づくる透かす午後 風のうちにも肌の温度が #短歌
遺影では白目の父が風を見てこの世の青をまだ測っている #短歌
ニュースより早く煮つまる鍋の中 愛ってたぶん焦げても食える #短歌
湯のあとに腹の鳴るまで歩いてく名店というだれかの神話 #短歌
もつに合う酒を問われてうなずいた愛とはたぶん味の持続だ #短歌
アルミ缶潰す瞬間浮かびだすわたしの奥の牙のやさしさ #短歌
言葉より沈黙多く配りつつもったいぶって煮詰める時間 #短歌
汗にしか光らぬ布をまといゆく労働向きの愛の重たさ #短歌
ひたすらに部屋を貫く西日から守ることこそ触れることなり #短歌
偽物に似た党名を君が持つ触れずにいれば水音がする #短歌
光とは砂糖の粒を言うらしく果実の芯に風が集まる #短歌
氷まで麦の記憶でできている人のからだの7割の午後 #短歌
立ち飲みの開店前に陽がのびて笑う準備をしているようで #短歌
しずくとはやがて乾くと知りながらそれでも窓に寄り添っている #短歌
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