どこにでも行ける切符をポケットにしまったままで君のとなりに #短歌
美徳だと呼ばれた死よりまぶしくて自販機の灯が背中を照らす #短歌
ホームには音楽だけが届かずに空振るイヤホンごしに #短歌
くろしろの模様の傘にあいた穴 そこだけ青がふつうに広がる #短歌
ロケ地です 案内板の矢印が生まれた町を異国に変える #短歌
どうしても眠れぬ夜は想像す皿を回している月のねずみたち #短歌
暗記する声の途中でとまる息 知らない涙したたっている #短歌
思い出はこぼれそうにもならないでぬいぐるみの中にとどまっている #短歌
読み取れぬカードを胸にしまいこみ田んぼの中をバスが通るよ #短歌
とりかえた本のしおりにはさまれた小さな文字が光ってみえる #短歌
無邪気さを子どもみたいに持ち歩き紙袋からパンを落として #短歌
しんぱいを言葉にすれば軽すぎて耳のあたりをゆっくりなでる #短歌
黒い群 押上駅につめかけてだれが主役かもうわからない #短歌
局番を知らぬ携帯握りしめ会う日を待てば風が通った #短歌
これはいつ買ったゴマかと手にのせて賞味期限は声をひそめる #短歌
眠りさえ深くはならずひびわれにそっと降りつぐ文字のざわめき #短歌
黒き羽ひとひとひとと交じりあい風の高みで名を呼びあうか #短歌
芽ぶきつつひかりを受ける菜の葉にもわたしとおなじさみしさがある #短歌
百までは数えた気がする 軒先で歌いそこねたままの雨粒 #短歌
わたくしはただ趣味原理もてあそび 頁の闇にすこしねむれる #短歌
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