ねえ聞いてカレーのあとにハヤシを食べるひとの隣で水だけ飲んだ #短歌
ぼくたちは怒りの粒子まきちらし夏の気圧に押しつぶされる #短歌
冷えきった食肉センターの午後三時 となりの声をまだ信じてる #短歌
葛藤に名前をつけて水をやる 花になれとはもう言わないが #短歌
笑顔には値札があると知った夜 やさしさの在庫はあと少しだけ #短歌
割り箸と保冷剤って書かれてた 誰もが「明日」を待っていたんだ #短歌
歯並びがきれいなだけで好きになる それ以上なにもされていない #短歌
ありえない色の花持ち帰った夜 ふつうの水に活けて眠った #短歌
どんな空でも飛ぶって決めた日をわたしの中の青空と呼ぶ #短歌
あれはきっと奪うための火だったわ 灯るたび消えるまぶたの裏で #短歌
しあわせかどうかは知らない 信号のたび同じ背中がゆれている朝 #短歌
ここにいた誰かを想う午後だった 山菜だけがちゃんと踏まれて #短歌
月がうすくなる昼過ぎ 泣くほどのひとがいないときの風が吹く #短歌
破れたままの襖に差した西日には過去と呼ぶには新しすぎる #短歌
アルゴリズムに触れる記憶が疼きだす心はまだこの星にあるか #短歌
黙ることだけ選んだ日々の様 砂だけを吐くアサリの午後に #短歌
かけっこの最初の一歩だけでいい 全力だった証しとしては #短歌
実家にはもう帰れないと気づく夜 お客さん用の布団に眠る #短歌
拾ったと言わずに抱いたその日からぼくにも少し爪痕がある #短歌
やわらかな光に包まれていたいだけ間接照明だけが優しい #短歌
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