わかってる顔してうつむく その子にもかなしいことがいくつもあって #短歌
あのときと誰かがふりかえってくれた気がして止まる犬と同じく #短歌
かなしみがたりないのではなくたぶん ことばが順不同で置かれている #短歌
夕方のバスを降りてもたぶんまだ僕の住む家だけわからない #短歌
だれにも選ばれないことをいたずらのようにうけとっていた午後 #短歌
裏側にまわしたままの手があるの 恋も洗濯物もしずかなまま #短歌
答えはたしかにあるのに野に置かれたものは沈黙だった #短歌
ひらけば少しだけ泣きたくなる街が夕暮れのたびしかけ絵本に #短歌
死ぬんだよきみもっていう音ひとつ 夜のコップに沈んでひかる #短歌
しぬことが始まりならばかがやきもまるめろの実のかたちで許す #短歌
弁当のホチキス外す指先に「恥丘」\の語がまだゆれている #短歌
ガイドには書かれていない砂ひとつ なにを失くしてここにいるのか #短歌
よりかかることしかできぬわたしたち きしむおとにもなれていく夜 #短歌
誰ひとり来ない小径をひとひらの薔薇の記憶を踏まずに歩く #短歌
弟が走るかたちになるひかり ゆびのさきでもえている夢 #短歌
だれにもみえない場所で泣くようにかいがらふみし音をかえす波 #短歌
走っても追いつけないのは涼しさとしなずにすんだ何かの記憶 #短歌
信号が青になるまでこの雪を「雨だったこと」にしていいですか? #短歌
はだにまだねむりの膜がのこっててわたしはひとをやっていません #短歌
生まれてはしずかにおちるものなちがわたしの皮ふでつづける会話 #短歌
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