きれいだと思ったはずの切り口がなぜかさみしく机を照らす #短歌
なにかにはなりかけていた ぬくもりを知らずに捨てて眠ったままよ #短歌
大人ですと言ってしまえばかなしみもくちどけのよい飾りになるわ #短歌
わたくしが忘れぬことのやわらかさ気づかぬふりで背を向けたきみ #短歌
指先でなぞったようにおぼえてる 右の八重歯とあなたのくせも #短歌
なぞるたびわたしの手からはなれてく きみの曲線 初夏のぬかるみ #短歌
たしかではない火加減にうつむいて検索窓へ ひとりぶんの夜 #短歌
風のなかすれちがうたび右の手がわたしを知らずふれていかない #短歌
きみがいて いない食卓 たった今 空を塗るには足りないバター #短歌
ラベルだけ剥がしながらの沈黙になにを捨てたかわからなくなる #短歌
薄明かり みずからを撮る機械にもうしろ姿が映る気がした #短歌
水たまり もう乾いてる午後三時 肩で重たく傘がきしんだ #短歌
池袋 信号の上 しずむ影きみをきらいと口にした羽根 #短歌
耳裏に残るかすかなひかりさえ忘れてしまう 夢のうた声 #短歌
夢のなか 笑っていたのはモリッシー 目覚めた部屋に雨が降ってた #短歌
凍るにはあたたかささえ足りぬから冷たいままで深くなる夜 #短歌
バースデーレシピノートにしるしつけ 不安ひとさじ すりつぶす夢 #短歌
指先がふれた湯気からほどけだす 言えない言葉あなたが飲んだ #短歌
並んではいけない気がして少しだけ横を向いてるキューピーとあたし #短歌
エナメルの靴がひとりで意思を持つ 帰らない夜 履かれるあたし #短歌
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