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2023年12月25日21:46

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「鬼の筆」春日太一

「鬼の筆」戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折
箸:春日太一
私は映画ファンだけど、評論家を目指しているわけではないので、あまり分析力はない。映画を観る基準は、まず好きなテーマや原作であること、次に監督と俳優をチェックするくらいで、脚本家の名を気にしたことはない。よく知らないし。でも、橋本忍だけはあまりに頻繁に見る名前なので、覚えてしまった。

知らぬ者のいない黒澤明の名作から松本清張原作映画、リアル残酷時代劇まで好きな作品は高確率でこの人が担当している。まさに日本映画最高の脚本家だ。
「七人の侍」「羅生門」などレジェンド級名作の成立秘話はミステリさながらの面白さだ。人によって発言内容が微妙に異なっているのが面白い。黄金期の力作群の話題も興味深い。最も衝撃的なのは、原作に向き合う態度だ。原作を柵の中の牛に例えて、観察したあとで生き血を吸うのだと言う。凄い言語センスだな。
競艇狂いだったらしい。意外なようで納得できる俗物ぶりである。芸術と文献に埋もれる書き手には、あんな凄い話は書けないだろう。

「山の兵隊」は日本軍の結核療養所を描いた処女作だが、映画化されていない。見たかったな。自分のプロダクションで「八甲田山」「砂の器」を大ヒットさせたあと、ヒット作の公式を盛り込んだはずの「幻の湖」で大コケする。偉大なクリエイターの老残というよりは、面白い作品を作る難しさを痛感した。

日本映画ファン必読の力作である。★★★★★
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