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2023年11月09日17:44

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「Magical Mystery Tour」の始まり――ジョンとポール、もう一つの出会い

ポール・マッカートニー、ジョン・レノンと出会った日を回想する https://www.udiscovermusic.jp/news/paul-mccartney-first-meeting-john-lennon-podcast-clip?fbclid=IwAR3uWYc1-IeXnE294wpKezAJqQ3nyKHPamEztRRb3F0-1Apgtkxnkbd9NLo

この記事でサー・ポールがジョン・レノンと初めて出会ったときのことを回想しているのだけど、多くのビートルズの伝記で書かれている、1957年7月6日にリヴァプールのセント・ピーターズ教会で行われたジョン・レノン率いるスキッフル・バンド「クオリーメン」の演奏を見たポール・マッカートニーが、バンドに興味を持ち、ジョンたちの前でギターを演奏しながら「トゥエンティ・フライト・ロック」や「ビー・バップ・ア・ルーラ」を歌い、その腕前に惚れたジョンがバンドに誘ったのがジョンとポールの出会いであった――という伝説的なエピソードをあっさりと覆してしまっている。

「セント・ピーターズ教会での出会い」は、それこそミックとキースの出会いや、ブルース・スプリングスティーンとクラレンス・クレモンズの出会いや、ジョー・ストラマーとミック・ジョーンズの出会いなんかと並ぶ、ロック史上の神話的なエピソードで、ロック・ファンにとってはまるでその場に居合わせたことがあるかのように鮮明に脳裏に浮かんでくる名場面である。それなのに、実はジョンと初めて会ったのはバスの中でのことだった――とここでポールは回想している。歴史を書き換えなければならない重大なエピソードが、さらっと語られている。

「ジョン・レノンを初めて見かけたのは、彼がバスに乗り込んできた時だった。彼は黒いジャケットを着て、もみあげに、たくさんのグリース(ワックス)を使ったロッカー風の髪型で、少し年上のようにも思えた。私は“彼はかっこいいな。全く知らない人だけど”と思ったのを覚えている。何が起こったかというと、普通は他人に話しかける時ってこんな感じで話しかけるだろう。“あなたの趣味は何ですか?”、“何をするのが好きですが?”ってね。そう話しかけられたら私は必然的に、“まあ、いくつか曲を書いているんだ”と言う。すると彼らは大抵“へえ”とそのまま受け流して別の話題になるんだ。でも、私がジョンに会って、おしゃべりしていた時、彼は“僕もだよ”って言ったんだ。それで完全に打ち解けた。それから“君の曲を聴かせてくれたら、僕の曲を聴かせてあげるよ”ってことになって、それで私たちは一緒に仕事をするようになったんだ」

ポールももう81歳で、昔のことの記憶は色々あいまいになってきているのかもしれず、ポールとジョンが初めて出会ったのがセント・ピーターズ教会だったのかバスだったのかの真相は、もはや確かめようもないけど、この「バスの中での出会い」というのも、劇的と言うことでは「セント・ピーターズ教会での出会い」には劣るかもしれないにせよ、もっと日常的な感じでありそうなリアリティということでは上のような気がするし、その後音楽の歴史を変えてしまう「ソングライター・チーム」の始まりの瞬間としては、こちらの方が美しい。

ちょっと年上のツッパッた感じのカッコいい少年がバスに乗り込んでくる――車内の空気が変わるのが伝わってくるような一瞬である。そして、隣の席に座った二人は、挨拶代わりの会話を交わす、普段だったら挨拶で終わるところが、お互いの趣味が作曲だとわかり、二人は打ち解け、急速に絆は深まっていき、そこから始まった伝説は終わることなくいまだに続いている――この「バスの中の出会い」には、短編小説が一つ書けそうなくらいの機微や感情が詰まっている。

10代の頃のポールにとって、バスは日常的な移動手段だったらしく、バスをモチーフにした「A Day In The Life」「Magical Mystery Tour」「Early Days」といった曲をポールは書いている。バスの中でのジョンとの出会いは、ポールにとってまさに「Magical Mystery Tour」の始まりだったのかもしれない。
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