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2023年09月24日19:59

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若林奮

武蔵野美術大学で若林奮の幻の大作を見たのは8月はじめ。

そのときに下書きしたのが以下の文章。

＊＊＊＊＊

「自分の部屋の中に森を作ることを考えていた」。

若林奮森のはずれ
@武蔵野美術大学美術館

若林奮(いさむ)(1936-2003)
東京都出身の彫刻家。
藝大在学中から個展を開き助手を経てﾊﾟﾘ研修、受賞多数、ｳﾞｪﾈﾂｨｱﾋﾞｴﾝﾅｰﾚには39回と42回に出品。

使用素材は鉄、銅、鉛、硫黄等。

その若林は、武蔵野美術大学で教鞭をとっていたとき
学内の工房に10畳ほどの空間を作りました。

いったい彫刻というものは、それが作品なのか
それともその外部が作品なのか
わからないところがあります。

鉄の部屋と呼ばれたそこは、最終的には周囲に植物や大気を表す板やｷｭｰﾌﾞが置かれ
内には振動尺や森のﾄﾞﾛｰｲﾝｸﾞを設置されて《森のはずれ》という作品になりました。

没後20年となる今年、それを再現展示しようとしたところ傷みが激しく
一部は再制作されて今回の展示となりました。

その他ｱﾄﾘｳﾑには《Daisy１》という金属彫刻が並んでいました。
これは名前の愛らしさとは似てもにつかぬ錆びた鉄の角柱で、130cmの頂きには
(見えません)紅色のﾍﾞﾝｶﾞﾗや白いｺﾞﾌﾝ、黄色のｵｰｶｰが潜んでいます。

その他
《The First White Core》Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ
《振動尺》Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ
など点数は決して多くはありませんが
一つ一つの強さに圧倒されました。

資料室も充実しています。
欧州で旧石器時代時代の洞窟を調査し
内なるものと外との境界について思いを巡らせた様子がわかります。

8月13日まで。
https://mauml.musabi.ac.jp/museum/events/20684/

＊＊＊＊＊

その後若林について、さらに作品《振動尺》について知りたくて幾つかの文章を読むうちに
晩年の作品を中心とする展覧会があると知り
漸く行って参りました。

令和5年度第2期所蔵品展
没後20年若林奮
@横須賀美術館

若林の晩年の大作《Valleys(2nd Stage)》は美術館前庭に設置されています。
同作は生前には屋内展示しかされておらず、
作家が亡くなる前年に、改めて潮風に耐えるよう表面加工するなど練り直して
遺志を引き継いだ形で設置されました。

中を通り抜けられる堂々とした大きさで
周囲の自然と一体化しながら独立性を保っています。

展示室では《valley》に関わる膨大なﾃﾞｯｻﾝのほか
病を得てから手掛けたﾄﾞﾛｰｲﾝｸﾞや小品まで180点余という物量で驚かされました。