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2023年09月14日12:10

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ソファーを処分しておおぶりな椅子を導入

《自己の再生と復権をめざして》
 文芸書の帯で「(人間の)再生」という文字を見ると、書き手が好みかどうかはさておいて惹かれてしまう。
 30歳を過ぎた頃から願っていた。人生が失敗した、という情況ではないにもかかわらず。
 昨夜、窪美澄の『晴天の迷いクジラ』(新潮文庫)を読み始めた。60ページのところで閉じ、クスリ一粒を服んでベッドに入った。
 解説が好きな作家白石一文で、それを立ち読みながら熟読してしまった。白石が鬱で苦しんでいたとき、この本に救われたというようなことが書かれていたのだった。解説の最後で「小説なんて娯楽の一種に過ぎないといった誤った通念がはびこりつつある昨今、一人一人の人生の救いとなりエールとなる小説がいまでも充分に成立し得るということをこの本で証明している」と書かれていた。
 ”たった今”の俺が読むにふさわしい。
 今日届いたばかりのオフィスチェアを、もう一度座面の高さや背もたれの角度などを調整してから、満を辞して『晴天の迷いクジラ』を読み出した。

 かれこれ数年前から「部屋が重ったるい」、と感じていた。
 その原因はいくつかあるのだが、いちばん自分にわかりやすいのは30年以上使い続けている重量感のある2人掛けソファーだ。買った当時は結構高価なイタリア製の本革製ソファーでずいぶんと気に入っていたのだが、だんだんと座り心地が悪くなってきた。それはソファーの劣化ではなく、自分の身体の変化に拠る。ソファーはなにも悪くない。
 この夏に入る頃から、老化に見られる足腰の筋肉の衰えを日々意識するようになって、座り心地のいいソファーか椅子が欲しくなった。ためしに家具屋へ行って、椅子の進化に驚いた。自分がまったく知らないところで、革命的と言えるほどエルゴノミクスが発達している。
 ネットでも何千脚ものオフィスチェアやゲーミングチェアが売られていて、足繁く通っているブックオフですら、店内の隅っこにしゃれたチェアがあるではないか。それまでまったく目に入らなかった。座ってみると、驚くほど身体に馴染む。
 しかし、いざソファーを捨てることを想うと二の足を踏んだ。なんか淋しいのだ。
 自分の一部を捨てるような気分。
 それは、夏が終わろうとする時に感じる淋しさに似ている。
 こうなると決断力に乏しい私は、理性ではなくて衝動に任せるしかない。
 で、先週、3夜続けて楽天やAmazonで口コミを頼りに検索をしまくったり、「ジモティ」でいい売り物はないかと探し、まだ決められないうちに、ソファーの重さがいよいよ心を圧迫した。で、ちょうど一週間前、市のリサイクルセンターにソファーの処分の依頼すると、9月15日にうかがえます、と電話が掛かってきたのでお願いした。
 先週の木曜日、ジモティで良さげなオフィスチェアが出ていた。
 椅子はスニーカーと同じで、その場でいろいろ試しても自分にフィットするかどうかは五分五分である。スニーカーでもチェアでも本当に自分jに合うかどうかがはっきりするのは使い始めて1週間だ。ネットの口コミはあくまで自分とは違うユーザーだから、鵜呑みにするわけにはいかない。
 ジモティの出品者に連絡をとってみた。と、大勢の人からオファーを受けている、とのこと。
 なので早々に諦め、県内の大型中古オフィス家具店を巡ってみよう、と考えをあらためた。
 と、今週日曜日、ジモティ出品者から連絡があって、いったん決めた人が感じ悪いのであなたに譲りたい、と。
 私が取りに行くのもよし、彼が運んでくれるのもよし、ということだ。こういうのは地元のありがたみ。
 自分のクルマが小さいので、運搬をお願いした。
 まず自分の部屋を綺麗にしなきゃ。ソファーを部屋の隅まで移動させ(これが超重労働)、ソファー周りの大きなラグを剝がして床を掃除をし、水拭きもし、ラグは日干しし、だらしなくソファーの影に積んでいた書類や新聞スクラップを整理した上処分し、こういうことをやっていると、あっと言う間に3時間くらいが経ってしまう。連日、こんなことをしていた。
 そして昨日、オフィスチェアを届けていただいた。
 予想どおりの座り心地で、しかも美品だった。
 たぶん私以上の綺麗好きだと思う。チェアはホコリ一つ付いていなかった。
 
 この椅子に座ってまず何を読もうか。
 こういう思案は楽しい。『晴天の迷いクジラ』他、候補は10冊くらいあって、そのなかに白石一文の長編もあったのだが、その白石が絶賛した小説だからいい内容なのだろう、と。
 自己の再生なんて簡単にできるもんじゃない。
 こんなふうに、これから先もちょっとした工夫を重ねていきたい。

 
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