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2023年08月12日21:43

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新宮晋とレンゾ・ピアノ

空間を造るふたりのアーティスト。

平行人生
新宮晋+レンゾ・ピアノ展
@大阪中之島美術館
フォト



新宮晋の展覧会は2017年に兵庫県美で観ており
ご本人の講演会も聴いています。

でも今回は建築家のレンゾ・ピアノとのコラボ。
どんな化学反応がおきているか楽しみにして行きました。


関西人には関西空港の建築家とその天井空間に作品があるアーティストとしてお馴染みのお二人。
まず驚いたことに、新宮とピアノは同い年でした(今年87歳)。
しかも今回の展覧会の
初日7/13→新宮の誕生日
最終日9/14→ピアノの誕生日
…なんとまたお洒落な。


2人が初めて会ったのは1980年代終わり頃、大阪のヒルトンホテル。
関西空港プロジェクトのため来日したピアノが新宮に会いたがったのだそうです。
ピアノが設計した関西空港ターミナルビルはグライダーか鳥が羽を休めているような形です。
ダイナソーと呼ばれるその長い空間の空気の流れを表出する彫刻を作ってほしい、という構想でした。
ところが会ってみると新宮はイタリア語を話すし(それまで日本語の打合せが続いて疲れはてていたのだそう)
同い年だ(50代)というではありませんか。

ここで話は遡ります。

新宮は1937年大阪生まれ。
東京藝大を経てイタリア政府奨学生としてローマへ6年間留学。
この間に具象→抽象→立体 →動く彫刻 と作品が変化していきました。

一方ピアノは1937年ジェノバ生まれ。
ミラノ工科大学在学中に2年間フィレンツェで学ぶ。

1970年の大阪万国博覧会では(ともに33歳)
新宮は会場中心にあった"進歩の湖"にフローティングサウンドを浮かべ
ピアノは2つあったイタリア館の1つを手掛けていました。
実は近いところで仕事をしていたのですね。

本格的な共同の仕事としては関空がスタートとなりました。
◆関西国際空港ターミナルビル+《はてしない空》1994
新宮の作品タイトルはいつもロマンチックです。

以後、
2人は度々同一のプロジェクトに関わります。

◆レンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップ+《海の響き》1991
◆ジェノヴァ港再開発+《コロンブスの風》2001
◆バンカ・ポポラーレ・ディ・ローディ+《水の花》2001
◆銀座メゾンエルメス+《宇宙に捧ぐ》2006
◆565ブルームソーホー+《虹色の葉》2019
◆スタブロス・ニアルコス財団文化センター+《宇宙、叙事詩、神話》2016
等々…

展示会場では、入ってすぐにレンゾピアノの102の建築が配置された架空の島《アトランティス島》の模型がどーん。

フォト


左に長く延びるのが関空。
中央付近に《ポンピドゥセンター》もありますね。

2人のコラボ作品はスタジオアッズーロの映像とともに展示。
宇宙を感じさせるBGMが流れています。
後半は各々のソロワークを紹介。

ピアノの模型は ため息が出るほど端正。
一方、新宮の風をとらえる作品は揺らめく影まで美しい。
フォト



会場では2人の対談映像が流れています。
明るいグリーンのセーター姿のピアノは饒舌でした。

まずは最近の財団活動を語ります。
財団のアイデアは60歳で伊勢神宮に行ったときに浮かんだそう。
物事は20歳から学び習うこと20年、そして造る20年を経て、いま自分は何かを還元しはじめる年代なのかなと思った。
それを実際にはじめてみると、若い世代に与えることで得ることも多い、と。
そしてマルグリット・ユルスナールの「アイデアは闇をみる勇気がある時に生まれる」という言葉を引用していました。

新宮が、ピアノと仕事をすることで自分は予想できないものが引き出されると言うと

それは「選択的新和性」。
別々の人生を歩んでいても我々は自分を駆り立てるものに親和性がある。
例えば私は"軽さ"に興味がある。
これは父親が同じ建築でもセメントや石等の重いものを用いていたことへの反動なのか。
港町で生まれ、水に浮かぶ船や揺れるクレーンをみていたせいなのか。
余分なものを削ぎ落として本質に近づこうとしている。
新宮も重力への挑戦をしているのではないか?
自分がずっと牽かれているのは日本とアメリカである。
ゆらぎ、透けるような線の明るさ、自然を切り取り嵌め込むことは日本的である。
一方アメリカは自由。
イタリアに生まれ育ったら美に縛られ、歴史に縛られる牢獄だよ。

それに対して新宮は、自分はイタリアへ留学しなかったら
具象油彩→抽象→立体彫刻 という道はたどらなかっただろうと述べていました。
(自分の生まれ育った文化との距離は難しいのでしょうか)

会場最後には、今後の各々のプロジェクトが紹介されていました。

レンゾ・ピアノは
丸の内の東京海上新社屋。(2028年完成予定)。
これまでにないほどの「木の柱」が使われるそうです。未来へ繋がる賢いものを。

一方新宮晋は
《地球アトリエ》。地球の素晴らしさを子供たちへ、未来へ伝えるプロジェクトです。

各々の精神はきっと継承されてゆくのだろうなと思わされました。

9月14日まで。
https://nakka-art.jp/exhibition-post/parallel-lives/


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