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2023年05月13日22:42

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マティス、ピカソ、シャガール

南仏にもいい美術館があるのですね。

パリから1000キロ
芸術家たちの南仏
@DIC川村記念美術館
フォト



最近みているマティスやピカソとも繋がりがありそうで
楽しみにしていきました。

展示室入口では
大きなスクリーンでリュミエール兄弟の《ラ・シオタ駅への列車の到着》(1分)をループ上映していました。
機関車が駅に着くと、ステッキに帽子の紳士や19世紀のロングドレスの女性や子供連れ等でごった返すプラットホーム。

【展覧会構成と作品】
◆第1章 南仏の光
19世紀、鉄道の発達により旅行者として出掛けた地中海沿岸で南仏の光と出会ったアーティストが残した作品たち。
キスリング、マルケ、デュフィ、ドラン等。
・セザンヌ《マルセイユ湾 レスタック近郊のサンタン村を望む》。
吉野石膏はいい作品を持っていますねえ。

◆第2章 避難、あるいは収容
この章はショック。
第二次大戦中 「敵性外国人」として収容されたドイツ人アーティストや
フランスのドイツ降伏から亡命のビザ発給を待っていたシュルレアリストたちが集まる土地となっていたこと。
ピカビア、マン・レイ、ヴォルス、アルプ、ドローネー等。
・エルンスト、ブルトン、アンドレマッソンらが共作したトランプ《マルセイユのカード遊び》(個人蔵)が面白い。
・ハンス・ベルメールのデカルコマニー(宮崎県美)は初めて見ました。

◆第3章 南仏での展開
南仏での作品といえば!の章
マティス、ピカソ、レジェ、シャガール等
・フライヤーのメインビジュアル・ピカソ《女のランプ》はここに。
・それよりピカソがフランソワ・ジローから着想した《三脚花瓶》が可愛い!図録の表紙になっています。

◆第4章 モダンアートが南仏の残したもの
晩年を南仏で過ごしたアーティストたちの資料。
・マティスのヴァンス・ロザリオ礼拝堂
・ピカソのヴァロリス・ピカソ美術館収蔵の壁画《戦争とと平和》《世界の四つの部分》
・ニース・国立シャガール美術館の《聖書へのメッセージ連作》
どれも本物をみたいものばかりでした。

出口通路には関連写真を展示。
・三脚花瓶とモデルのフランソワ・ジローの2ショットとか
・陶芸に打ち込んだマドゥーラ工房でのピカソとシャガール(ピカソはご多分にもれず上半身裸 シャガールはチェックのシャツ) の2ショットとか。
すごい。


講演会を聴きました。

「知覚の感光板について」
写真家、東京藝術大学美術学部先端芸術表現科教授・鈴木理策

写真家の鈴木さんが何故?
と思ったら
『MONT SAINT VICTOIRE』
という写真集を出していらっしゃるのですね。
つまり当時のアーティストたちがみたもの、それを
現代の作品にしている方から彼らの考え方を探るというわけです。

お話は 展覧会入口で上映していたリュミエール兄弟の映像の「いま」を撮影したものを見せることからはじまりました。

ホームが映ると客席どよめき。
閑散としたホームに2両編成(えー18世紀は10両はあったよー)の電車が入ってきます。
乗降する人々。
あら、車掌さんがおしゃれ。さすがフランス。
と思ったらあれれ、犬を抱いた女性も降りてきました。
バスケットに入れたりしないの?…

「普通は"見たいもの""必要なもの"を見ている我々に対して
カメラは潜在的に潜んでいる世界まで映します」
それが魅力でありやっかいでもあると。

現在リュミエール兄弟が映画の元祖といわれていますが、
実際はエジソンのキネトスコープの方が先。
ただエジソンの機械は1人で見るものだったところが違います。みんなで見ると一層楽しいですものね。

そして「話を聞いた後に、皆さんに今夏は南仏に行こう!と思わせるのが今日の目的です」。

実際、鈴木さんのセザンヌ愛は相当なものとお見受けしました。
何しろ斉藤義重さんから、絵画の成り立ちは物語の表現である、しかしそれがなくなるのがセザンヌ、彼が目に見えるものだけを描いていったことが大きな美術史の転換点だと思う…
といったお話を聞いて
「それは写真のことだ!」と思って2週間後(!) にはエクス・オン・プロバンスへ行ったのだそうで。
ご自身の写真集のタイトルにもセザンヌの言葉から
『知覚の感光板』(2020)とつけているほど。
セザンヌのアトリエは観光スポットになっていて
彼が描いたモチーフもそのまま置かれているのだそう。
クローゼットにはご本人の衣服が掛かっていて
「ジャケットとか着てみようかと思った」。

イエール、カマルグ、エクスオンプロバンスと作品を次々に見せていただくと本当に旅心が誘われます。
サンヴィクトワール山への道。不意に現れる灌木。刻々と変わる山肌。
南仏じゃないけどパリのフォンテーヌブローとか北のエトルタの写真も素敵でした。

講演会後の質疑応答。
問。
絵画も写真も主観から逃れられないのは同じではないか。
答。
写真が客観、と言ったのは、写真に写っていればそれは現実だということが誰にもわかるということ。
ただし昨今のデジタル世界ではそれも揺らいでいますが。

問。
以前の展覧会で雪の写真が素敵でした。雪を撮る面白さは何ですか。
答。
撮影は機材が重いし大変なので以前は若い人に助手で来て貰っていたのですが。
雪の世界は音もないのです。そこでこちらが撮っているのを彼はじっと見ている。
段々どう見えているのかとか気になってきたので、辞めてもらいました。
作品としては紙の白さと雪の白さのギリギリの違いが面白いです。

講演の後には5冊限定のサイン会がありました。
事前に購入された作品集にもサインは頂けたようです。

6月18日まで。
https://kawamura-museum.dic.co.jp/art/exhibition/

*****

川村といえば常設も見逃すわけにはいきません。

特集展示が行われる105室は企画展繋がりで

・ピカソの版画〜1910年代を中心に〜
おなじみ《レオニー嬢》など。
エッチング8、ドライポイント5、その組合せ1、エングレーヴイング1。

シュルレアリスム室の奥、105室では

・ヴォルス 晩年(といっても30代)のヴァッシュ&インクが5点。
同室にあった
・瀧口修三 のデカルコマニー
とともに繊細でよかった。

200室・旧アンナの部屋には
・ジュールズ・オリツキー《高み》。
(サイ・トゥオンブリーのドローイングと彫刻は201室に移動)

104室 コーネルの箱
・星ホテル
にもコンニチハしてきました。


庭園の池には
芍薬と睡蓮・花菖蒲に白鳥。
フォト




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