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2022年12月25日20:19

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まさかの「良性発作性頭位めまい症」

 朝、ロフトベッドから降りようとして、最後の段で転がり落ちた。フローリングの床上で起き上がろうとしたのだが、目が回るというかバランスが取れないほどに身体がぐらついた。這ってリビングまで行き、もう一度立とうとすれども立ち上がれない。脳梗塞かと思ったが、頭が痛いという症状はない。
 iPhoneで調べると、どうやら「良性発作性頭位めまい症」という症例らしくて、簡単に言ってしまうと三半規管に耳石が紛れこんだのが原因とのこと。が、身体感覚はずっとぐらぐらしているのがなんとも不安で、妻に頼んで119番の救急車を呼んでもらうことも考えた。
 そのうち吐き気がしてきたので、わが家でいちばん暖かいガス暖炉の前に横たわっているうち、15分くらいで眠ってしまった。
 1時間後、目が覚めた。まだ身体のふらつきは残っているものの立って歩けたのでひと安心。正午くらいにようやく身体は平常を取り戻すことができた。ホント焦ったし、めげた。今月に入るや否や次から次へと用事が舞い込んできて、慢性疲労症候群ならぬ急性疲労症候群になったのだろう。そう割り切ることにする。

 朝は気がつかなかったが、iPhoneのメッセージに出版社の元代表からショートメッセージが入っていた。慌てて返信する。関東大震災時の朝鮮人虐殺を題材にした小説の問い合わせだった。私のプロレタリア文学熱に火を付けたのがこの元社長だ。この先自分ができることをして彼のためにしてあげたい。
 午後3時。身体はほぼ問題なさそうなので、散歩に出る。
 15分後、野菜直売所に行ったら、おばさんが声を掛けてくれた。
「この間もう売れてしまったと言ってた山芋だけど、小さくて売り物にならない芋をあげようか。廃棄するので」と言われたので、「もらいます、もらいます」と応える。
「毎日、一ついいことがあって、ひとつよくないことがある。今日は朝起きたらいきなりめまいがして歩けなくなった。で、幸運なことにこんなに貴重な芋をゲット!」などと、同世代のお気楽さでホンネトークをしたら、おばさんは良性発作性頭位めまい症の経験者だった。救急車を呼んだらしい。
 ともあれ、擦ってもおダンゴくらいに粘り気のある本物の山芋をごっそりともらえて、めちゃ嬉しい。半年くらいの健康を約束してもらえた、って気にさえなった。
 帰宅後、乙川優三郎さんの連作短編集を開いて読書に耽溺。彼の作品を読んでいると時々、メモ用紙に引き写したい言葉の用法とか、まったく知らない言葉が出て来る。iPhoneの辞書アプリで調べて意味や用法を読んでみる。来年、長文の文学解説を書かないといけないので、これから数カ月は言葉や文学理論をまるで「貯金」するかのように蓄えなければいけないので、正月と言わず今日から新たなノートを作ろう。

 北陸から東北、北海道にかけて大雪による混乱や停電があって、ニュースを見ていると自分の心身まで冷えてくる。昨日はロシアのミサイルが着弾したウクライナ・ヘルソンの映像で、焼け焦げてフレームだけになったクルマが映っていた。もし自分のクルマがこんなふうになったらどれだけつらいか。それがクルマだけでなく家を破壊され、人間の命さえ奪ってしまう。ロシアの、というより人間総体の愚かさを見せつけられるたび、自分の暮らしとは直接的な関係などないのに、人間という存在自体に嫌気が差す。私は幸か不幸かマッチョ思想がまったくないものだから、暴力というパワーゲームの醜さを憎む。現実というのは、戦争というようなわかりやすい暴力とは別に、過剰な競争だとか権力争いだとか、あるいは嫉妬とか自分だけがよければいいというような極端なミーイズムとか、大ネタ小ネタの暴力が無数に集積されている。仏教的な目で社会を眺めると、落胆が大きい。

 夜、早速売り物にならない山芋をいただいた。
 美味しい食材だとしみじみ思う。タラバガニや骨付きラム肉もそれはそれは美味しいけど(笑)。
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