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2022年07月04日03:12

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気軽に笑える映画だからこそ、本気で差別の問題を考えてみたいのです。マキシム・コヴァール&セドリック・ル・ギャロ共同監督「シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち」(2019)。

物語は、オリンピックの競泳にフランス代表の有力候補だったマチアス(ニコラ・ゴブ)が、同性愛に関する差別発言をして出場資格を失いかけるところから始まります。それに対して委員会は、ゲイの水球チームを監督してクロアチアでの世界大会に出場すれば処分を取り消すということになり、気が進まないながらも監督を引き受けるという展開です。

監督のセドリック・ル・ギャロは、ゲイの水球チームにいたそうで、そのあたりから発想した物語のようです。だから、最近ではありがちなゲイ選手とストレートな選手との衝突からスタートし、とりあえず仲よくなって精進するというお約束パターンが展開します。そのお約束が、それなりに快調でコミカルなので気楽に見ることができました。

マチアスが競技のために家族を犠牲にしていて、母親はほとんど離婚しようとしています。そこへゲイ水球チームの監督をするわけで、娘ヴィクトワール(マイア・クェスマン、写真3)を一緒に連れていくことになります。思春期の娘が、ゲイ選手たちと楽しそうに過ごすあたりがミソ。くったくのない少女の笑顔でお約束の展開もすんなり納得してしまうのでした。

一方でゲイ選手たちもそれぞれの問題を抱えており、ある者は癌の末期だけれど治療する苦痛よりも試合で活躍する“華”を取ります。また競技などにゲイ仲間が進出できるよう生涯をかけて運動してきた人物も、ある意味別の差別感覚を持っていると分かるなど、多彩なエピソードが盛り込まれていました。

実はもう続編「シャイニー・シュリンプスの復讐」が完成しているようで、フランスでは2022年4月に公開したらしい。続編にも娘ヴィクトワールが出ているようですから、僕は見なくちゃいけないな。それはともかく、こういう作品は気楽に楽しめるということが重要です。そういう意味でよくできていると言えるでしょう。

とにかく差別というものを、差別している側は意識せずに差別してしまうことがあるという、基本的な問題点を明確にしてくれます。僕もそういう意味では差別的な発言をしているかもしれないし、そのために誰かを傷つけたことに気づいていないかもしれないわけで、そういう問題なのだと大いに反省しました。

ところが、反省したところで解決にはならないわけで、とことん自分自身の心の底まで改造しないといけないわけです。つまり、かなりありきたりなテーマに見えても、実際問題としては差別是正へと向かっていないことあったりすることが問題なのです。たとえば今回の選挙において、今なお時代遅れなLGBTQ差別を公言している候補者がいて、とても恥ずかしいことだと思います。

でも、ひるがえって自分のことを冷静に考えると、まだまだ問題点が多いのでした。長年のお笑いやジョークなどで、すでに定番化している文言などがとくに危険です。公の場で、本人が気づかずに暴言を吐いている例のなんと多いことか。それらについても、自分の問題として見直さないといけないのだと感じました。

そういう意味で、ヴィクトワールちゃんは素直な目でゲイ連中と親しくつきあえてよかったね。かつて「ER 緊急救命室」で、白人の消防士が黒人に対してうっかり“You people”と言ってしまい、その場が凍りついた描写がありました。それを肝に銘じて、本気で問題に取り組む必要があるのだと、僕は個人的に考えています。

つまり社会的な弱者に対して“同等の権利”を認めるという意味は、50:50で応対していては同等ではない、ということですね。こちらが社会的弱者の位置に並ばないと同等ではない。それは“消費税が全国民に等しい比率でかかっているから公平だ”という言葉が不公平なように(人間のような人格を認められている法人が最終消費者に負担を転嫁しているから法人や高所得者たちが有利すぎる)、数字のアヤでごまかされてはならない真理なのでした。

ということから、本来的に社会的弱者である我々一般市民は、もっと弱者同士で手を組もうではありませんか。僕はあと四半世紀、一歩一歩少しずつでも、前進していきたいと考えています。
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