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2022年01月23日20:53

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野口謙蔵

最初の作品《村の子供》(189.2×290)がすごい。製作年不明でｷｬﾝﾊﾞｽにも貼られず丸められていたそう…

野口謙蔵
@滋賀県立美術館

昨年生誕120年となった野口の展覧会にやっと行くことができました。

野口は1901年滋賀県生まれ。
東京美術学校(現藝大)に学び
27歳から3年連続で帝展入選
30歳で特選
42歳で(帝展文展から転化した新文展の)審査員となりながら
その翌年急逝した画家です。

今回の展示は常設扱い。
作品点数は日記など関連資料を含めても36と
こじんまりしているのですが
絵画はいずれも大作で見ごたえ十分です。

ﾒｲﾝﾋﾞｼﾞｭｱﾙの《霜の朝》は東京国立近代美術館の収蔵品ですね。
ﾁﾗｼ裏の《梅干》も見て風景のなかに少女の点景か…
という予想のもとに行ったのですが、実物ははるかに豊かな色彩と光に溢れていました。
1940年頃に作風が変わってからの単純化(抽象化ではありません)作品群が特に良かった。

日記や書簡から製作過程もリアルにうかがえて興味深い。

講演会を聴きました。

まず蒲生町文化財担当の田中浩氏により野口と取り巻く人々の驚くほど詳しい解説。

続いて主任学芸員山口真由香氏による作品解説。
これも大変よかった。

まず滋賀県美における野口の位置づけ。

滋賀県美の収集方針は
①日本美術院を中心とした近代美術
②滋賀県ゆかりの美術工芸
③ｱｰﾙﾌﾞﾘｭｯﾄ
④芸術文化の多様性を確認できるような作品

…という訳で、野口は②に当たります。
現在滋賀県美が所蔵する野口作品は29(うち寄託3)、関連資料3だそう。
1986年と2001年にも特別展を開いています。
《霜の朝》が東京から来たのは今回初。大きいですからね。

解説は野口の近影から始まりました。
ｱﾄﾘｴでしょうかｲｰｾﾞﾙを前にして、でも着流しで畳の上、座布団に座っている製作風景。
これぞ日本と西洋のﾏｯﾁﾝｸﾞを図った野口らしくて大好きな写真です、と山口さん。

野口は芸術を支援する有力近江商人の家庭に育ちました。伯母は南画の女王・野口小蘋。野口も藝大にはｽﾄﾚｰﾄで合格しています。
当時の藝大西洋画科では丁度ｶﾘｷｭﾗﾑが変更され、2年間で基礎を学んだ後はｾﾞﾐのような"教室"を選んで指導を受けるようになっていました。
そして野口が選んだのが和田栄作(後に文化勲章受章)。他には岡田三郎助、藤島武二の教室があり、卒業時には黒田清輝の指導を受けるｼｽﾃﾑでした。

藝大卒業のあとはどうするか。
通常は海外留学し、帰国後に「帰欧作」を発表して官展出品者となる。
例えば藤田嗣治、佐伯祐三、小磯良平など皆そのｺｰｽです。
しかし野口は滋賀に帰りました。なぜか。

1つには故郷への思い。
2つにはｱｶﾃﾞﾐｽﾞﾑ主流の洋画壇への疑問。
3つには自身の製作への疑問。

野口は在学時代の作品をほぼ全て処分しています。
それほど厳しい姿勢をもって画業を続け
1928年に《庭》で帝展初入選。《梅干》《蓮》と実績を重ねて《獲物》で特選。
←これは行方不明だそうですが、続く特選《閑庭》《霧の朝》は今回みられます。

ここで野口作品を読み解くｷｰﾜｰﾄﾞ紹介。
①庭
②水辺の情景
③蒲生野
④身近な動植物への眼差し

各々作品を示しながらの見所解説です。

ほら、画面端にﾅﾏｽﾞがいるの気づきましたか? 後で確かめてください、とか。

画面が青と緑で単純に二分されているようですが、実際にこのようにみるには麦畑の中に身を低くしなければならない。また遥か見渡すためには身を高くしなければならない。1つの画面に視点が複数あるのです、とか。

画業の特徴をまとめれば
・日本画西洋画という枠を越えた表現
・詩的な情趣を豊かに感じさせる文学性
になります。

実際に野口は山頭火らと親交し、うたもよんでいます。
雪の上にのこした手のかたが夜眼ざめるとわたしに呼びかける野謙

亡くなるとき枕元に置かれていた書物も、和洋の西洋画集、日本画集、句集、論説と幅広かった。
本当に早逝が惜しまれます。

＊＊＊＊＊

始まったばかりの企画展については
また後日記録する予定。

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