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2021年11月15日01:32

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アウトサイダー・アート

寒すぎ。11月、日没後の屋外上映会。

文化芸術×共生社会フェスティバルin美術館
映画「地蔵とリビドー」野外上映会&トーク
@滋賀県立美術館
フォト




アールブリュットに力を入れてきた滋賀県立美術館、
保坂健二朗ディレクター(館長)を迎えて「らしくなって」きました。


上映会に先立ち、「木のホール」で関連トークを聴きました。
以下そのメモ。

登壇者(手話通訳つき)
・奥山理子(みずのき美術館キュレーター)
・山下完和(やまなみ工房施設長)
・保坂健二朗(滋賀県美ディレクター)

保坂(以下)保:
まず自己紹介をお願いします。

奥山(以下 奥):
みずのき美術館は2012年京都府亀岡市にオープンした美術館です。
母体は車で20分ほど離れた知的障害者施設・みずのき。そこで1964年から行われている絵画教室の作品2万点の管理をしています。

山下(以下 山):
やまなみ工房は滋賀県立美術館から車で20分のところにあります。
そこで35年施設長をしています。こんな格好ですが(山下さん、ロン毛に帽子、デザイナースーツにブーツでかっこいい)歌ったり踊ったりはしません(笑)。今日は生配信されているので炎上しないよう気をつけます。

保: そもそもなぜ映画を作ったのですか。

山: 元々美術や福祉に興味はなかったのですが、工房の88人の人達が魅力的なものを作るので発信したいと思ってやってきました。こうして美術館で話しているのも不思議です。ただ、美術館に展示しても美術の好きな人にしか知ってもらえないので、もっと他の人にも伝えたいと(映画を作りました)。

保: 言い出しっぺは誰?

山: 大阪の広告会社の笠谷さんです。今は様々な媒体で展開しています。僕が今着ている服、映画、写真集等…タブーの中にヒントがあると思って何でもやっています。

保: かつてタブーとされたことということですね。
例えば個人の名前を出さないとか、写真は撮っても後ろからとか。いまだにタブーとして残っていることはありますか。変わってきた理由は何でしょう。

奥: みずのきは施設開設が1959年、絵画教室は1964年から、とやまなみより古いのです。また入所施設であることも違います。
そこで本人がどこまで外に出てよいのか、(作者)本人が紹介されるほうがよいのかというところから問題でした。

山: (作品が)海外の美術コレクションに入ったのもみずのきが先陣をきっていました。

奥:ただし対外的に固有名詞が出ているのは10数人というのが実情です。

保: 1998年の丸亀が公的美術館での初期展示ですね。
滋賀県美では2016年に初めて作品が収蔵されました。
2013年にベネチアビエンナーレにサワダさんの作品が出てアールブリュットへの関心が高まったこともあります。
しかし美術の興味がない人(山下さん)がなぜアトリエを始めたんですか。

山: 施設をアート化しようとしたわけではありません。以前は内職のようなことをやっていたんですが、
僕が勤めて半年経った頃、落ちていた紙にある人が殴り書きしていた。その自らやっている行為の時の表情を見て、本人の望んでいること、やりたいことに取り組む方が良いのではと思ったんです。
彼らに芸術という意識はなくて、やりたいことをやっている。それを保坂さんのような人がいいと言ってくれてラッキー、という感じですね。

奥: 施設は彼らの人権や尊厳を支えているはずなのに
こちらの設定した状況の中で過ごしてもらっていた。
食べて寝るだけでなく障害者も少しは人間らしく過ごしてもらうために情操教育をと。
それで西垣籌一さんがプログラムを作って選抜メンバーによる絵画の時間を作りました。
西垣さんは京都市立芸大で日本画を学ばれ、NHK出版から『無心の画家たち』(絶版)という本を出されています。

保: 選抜に漏れた人はどうしていたんですか。

奥: 初めは誰でも参加できたようですが、日頃の制作物から10/100人が選ばれました。2軍もあって、でもその人達は展覧会には出ない、とか。
時々新しい人がはいると全人にテストをしたり。

山: スタッフ26-4人のやまなみは美術家がいないので作品の評価ができません。
保坂さんはどちらにも行っていらっしゃるのですよね。びっくりしませんでした?

保: とても驚きました。
みずのきは美術館設立の時にもお手伝いしましたし。
堀田さんとか、個展できるくらい作品がある。
その絵画教室がこのホールの1/4くらいの小屋。
西垣先生が指導している様子は今で言う"密"。

山: 映画のやまなみは新しい建物(2020)が出来る前なので貴重な映像です。
今は一階がカフェ、2階3階がアトリエでキャラが各々変えてある。賑やかフロアでは机が円陣に配置してあるし、黙々フロアはブースになっていて。
僕らは指導はできないけれど環境は整えられるから。

奥: 私はみずのきのアトリエしか知らなかったから絵具の香りのこもったアトリエを想像していたら、広いし明るいし。これからはこうした場で制作するのがモチベーションになるんだなと。

山: うちは全員メジャーリーガーだと思ってますから。
そもそも西垣先生は何故指導されたんですか。

奥: 創設者の出口が絵画に精通していたので芸術家の方とも親交がありまして。

山: 雲の上の存在ですよみずのきは。

保: 美術館を作るとかデータベース化とかその理由は。

奥: 西垣先生は2000年に亡くなられました。直前まで指導されていたのですが亡くなられたのは大きかった。
先生は週1回金曜日に来られていました。その他の日の入所者は畑仕事とかお散歩とか。
施設が古いので外から人が来ることはありません。家族さえ疎遠になっている人が多い。入所者が接するのは職員だけ。
そこへ西垣先生はベレー帽にロングコートでザ・画家という感じで外車に乗っていらしていた。しかも必ずミスタードーナツの箱を持って。
ですから3時になると先生のコーヒーとドーナツがいただける。先生は外の空気を持ってきてくださる存在でした。
皆先生の影響を受けて、オザワさんはベレー帽を被っていましたし、ヤマザキさんはキャンバス前の立ち方とか先生のコピーそのもの。
カリスマ性をお持ちでしたから亡くなられると、先生のいないアトリエ…畑仕事に戻ってしまったメンバーもいましたし、年取って描けなくなる人もいました。
他方やまなみのような新しい自由なものが出て来て…その10年間は"みずのきはもう終わりじゃないか"と…。
でもそこで歴史は残そうということから保存も展示もできる場所を作ろう
ということになりました。
ただ作品が屋根裏倉庫にあっても…みずのきの作品は夏に色がとけ、冬に固まると言われていましたから。(笑)

山: みずのきの作家さんたちは展覧会で張り切ったりする?やまなみは王道じゃないなと。

保: 王道は本来ないでしょう。みずのきは利用者が住んでいるげれど、やまなみは通所だから「外」を知っている人たちという違いだけ。
山下さんのこれだけはというモットーは?

山: 何がしたいか何が得意か「もともと」な人はいません。それが1週間でわかる人もいれば10年かかる人もいる。僕らは今日どうすればこの人が楽しいか、しか考えていない。内職の時は納期やら不良品やら大変でしたがもうそれはないので。

保: (映画の中で)作り手をわかろうとする山下さんを
ご覧下さい。
奥山さんはこの映画で好きなところはどこですか。

奥: 実際にお会いしたことのある方が出ているのは嬉しいですね。
印象に残っているのはまずラーメンの袋をずっといじっている方がいて、その存在が許されているという福祉施設の豊かさを感じました。
その人が気持ちよく過ごせているか、辛いときしんどいと言えているかは大事ですから。

山: 彼女は言葉のコミュニケーションができません。もう27年間毎日サッポロ一番醤油味を毎日1つずつもらっていじっている。お母さんも偉いよね。これが幸せだとはっきりしているのならそれでいいじゃないかと。
年月日を付箋で貼ってそのラーメンを全部残してきたら、それが美術梱包されて今度愛知へ行くんです。面白いでしょう?

奥: もう1つ、やまなみに最近来られた知的だが躁鬱で波がある人とか。そういう人はみずのきにはいないので。自分の創作について話す森さんとか。山下さんとの会話、キュレーターのロジャーマクドナルドさんとの関係性等、福祉施設と出会ったことのない人には興味深いのではないかと思います。

山: 森さんは抽象的でかっこいい作品を描く方なんですが、青山スパイラルのオープニングにはビシッと決めてきて施設長に間違われていました(笑)。ヘッドホンで現代音楽を聴きながら制作する。好きな音楽が一緒だったことからロジャー・マクドナルドさんと意気投合してました。
展覧会では作品と一緒に、彼にインスピレーションを与えた音楽も聴けるような展示にしていましたね。

保: 滋賀県立美術館では来年1/22から『人間の才能』という展覧会をやります。
映画に出てくる鵜飼結一朗さんの作品では、13m余りある百鬼夜行の巻物?を展示します。彼にはコレクターが30人待ちで一点200万で売れるとか。
また新しい作家としてはかみつちばしさん、でしたっけ?新世代だなあと思いますがデジタルでカリグラフィのように架空の本やDVDジャケットを作る。最近は映画のエンドロールのようなものをパワポで作ってて、そんな機能あったっけとこちらが思うくらい。

山: 三歳から文字に興味があったそうですからね。

保: 何かこれからの告知はありますか。

奥: みずのき美術館ではコレクション展を12月までやっています。

山: 1月から3月は、やまなみ工房→滋賀県立美術館→みずのき美術館 が見学コースになりますね。運転手しましょうか。

保: (笑)そのフットワークの良さでやまなみの情報が拡がるのですね。
今日は有り難うございました。
この後野外上映会です。皆さん暖かくしてご覧下さい。

フォト



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映画『地蔵とリビドー』
監督:笠谷圭見

印象に残ったのは、

・「具合が悪いときによい作品ができる」と話す作家が複数名。
アートはお薬になるのですね。

・ニューヨークのギャラリスト(日本人)、
作品を選ぶポイントは作者の中の葛藤/奇妙な果実/消化。それってアウトサイダーアートに限ったことではありませんね。

・そして作品をプリントした布を使った丸山昌彦さんの服のファッショナブルなこと。
山下施設長がお召しになっていたのはこれですね。

http://a-yamanami.jp/
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(↑↑とっぷり日の暮れたナイトミュージアム)


いただいた資料によりますと大阪難波にやまなみのアウトサイダーアートとコラボした宿泊施設があるようです。
建物裏にはグッズの自動販売機があるとか。

https://www.ninedesign.jp/distortion9/
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