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2021年06月12日21:52

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神宮スズメの独り言2021春〜61〜その差はラッキーボーイ

ボクは隣に座る友人に向かって言った。「森田、キャッチボールしなきゃだめだよね」

2−1と慶應がリードして迎えた全日本大学野球選手権準々決勝の6回表、上武は2死1・2塁というチャンスにブライト君を打席に迎えていた。この大会においてすでに9打数6安打4打点、2本の本塁打を放ち勢いに乗るブライト君は今日は4番に起用されていた。だが、第1打席、第2打席ともに無走者で打席に立ち慶應の森田君に抑えられていたのだ。しかしここでは放った彼の打球は3塁手の右寄りに転がる詰まったゴロ。

慶應の3塁手下山君はグラブを差し出し送球態勢に入ろうとしたが、ボールはグラブの右を抜け、バックアップに入ったショートの左に転がった。打球は完全に死んでいたためすぐにショートの朝日君がボールを拾い満塁となったのだが・・・・

スタンドからも慶應の2塁手廣瀬君からも3塁塁審に対して守備妨害だとの声が上がった。ボクはいつもの1塁ベンチのずっと上の席から見ていたが、はっきりとはわからなかった。だが、ボールは下山君のグラブに収まる前に右に逸れた。これはイレギュラーだったのか、2塁走者と3塁手が接触したのか、2塁走者に打球が当たったのかはわからない。

慶應の堀井監督も出てきて4氏審判による協議が行われた。ボクがキャッチボールをしろと言ったのはこの時だった。慶應の捕手福井君は三本間でその協議を見つめていたし、森田君もマウンドよりホーム寄りの場所に立っていた。

投手と言うのは冷たいもので、味方の野手が負傷して担架で運ばれても自身はキャッチボールを続け次の投球への集中力を切らさないケースが多い。しかも慶應の捕手福井君は主将だ。結局守備妨害は認められず2死満塁から試合は再開した。ビデオ判定がない以上、ほとんどの場合こんな抗議が通るはずはない。守備妨害があって審判が確認していたらすぐにジャッジされるはずだし、それがなかったということは守備妨害が本当になかったか、それともそのプレーをどの審判も見ていなかったかの2通りしかない。だからビデオを使用しない限りこの大会では判定が覆ることはない。それは選手たちもわかっていたはずだったのだ。だからボクはすぐに森田君には次の打者に対するためにキャッチボールを始めるべきだと思ったし、何よりも福井主将がそれを促すべきだったのだ。

結果論を言っているわけだはないが、プレー再開に打席に入ったのは進藤君。今日はブライト君が4番に入ったため5番となっていたが、本来なら4番を打っている。そしてその初球。ストレートを叩いた彼の打球はライナーでレフトスタンドに突き刺さる。この合間に集中力を切らさないことが大事だと思った森田君のその初球が逆転満塁本塁打だった。ベンチに帰ってきた進藤君は3人の走者が待ち受ける中、吠えながら帰ってきた。


慶應は1回2回とともに2人の走者を出しながらも無得点。3回もバントヒットで出た渡部遼人君が盗塁を試みるが上武バッテリーはカウント2−2から外して盗塁を刺した。初回にはきれいにレフト前に運んだ渡部君が上武のアンダーハンド投手上村君のフォームを完全に盗んで楽々盗塁を決めたため当然のように警戒していたのだろうが、見事な盗塁阻止だった。このままいけば慶應は流れを上武に明け渡すところだっただろう。だが、続く下山君がしぶとく内野安打で出塁すると4番の正木君が目の覚めるようなライナーでレフトスタンドに叩き込む。これが彼のこの大会初安打だ。これまでは押し出し死球と犠飛で打点こそ挙げていたが・・・・

正木君の本塁打は打った瞬間わかる。乾いた打球音と打球の速さ。攻撃力では勝る上武に対してこの本塁打による先制点はかなり効いたと思う。

5回の表に先頭の進藤君に2塁打を打たれ送って1死3塁とされた慶應は無走者に対する内野守備を敷いた。2塁手とショートはアンツーカーから外野芝に入ったあたりにポジションをとる。内野ゴロなら1点どうぞという守備体系で、門叶君はショート真正面のゴロに倒れるが1点を返した。

もしあの3回に盗塁で刺されたあと無得点に終わっていたら、この守備も前進体系を取って大量点とされたかもしれない。正木君の本塁打によって1点くれてやっても主導権はまだ慶應だと主張していたのだ。

だが、5回のこの進藤君の満塁本塁打で立場は一転する。5−2とされた慶應はその本塁打の後の芳賀君を内野ゴロに抑えると、その裏、先頭の廣瀬君が2塁打。3塁へ進んだ広瀬君が北村君の犠牲フライで何とか2点差とくらいつく。6回を終わって5−3・・・

ここの追加点が大きかったのかと思う。

7回からは森田君は交代かと思ったが続投、そして三者凡退にとる。そしてその裏の慶應は1番からだったが代打に石川君を送った。彼の打球は1塁ゴロ。守備位置真正面だ。だがバウンドを合わせるのに一瞬迷ったのだろう。前へ出て自分でベースと踏むか、それとも下がって捕球しカバーに入る投手へトスするか。これまで何万回も何十万回も練習でやってきたプレーだ。だからこそエラーが起こるというのは迷った時なのだ。上武の芳賀君は1回戦からずっと出ている選手だ。その彼が下がって処理しようとしたボールは無情にもミットをはじき後ろへと転がり、代打の石川君は1塁ベースを駆け抜けた。エラー・・・

ここから神宮の神様は慶應に傾いていく。それはあの守備妨害かどうかという微妙なプレーも関連していたのかはわからないが、続く渡部遼人君はライト前に運んで無死1・2塁。今日はこの渡部遼人君がキーマンだった。そしてもちろんラッキーボーイは石川君なのだが・・・・

この無死1・2塁で上武は加藤君をマウンドに送った。1回戦では西日本工大のドラフト候補隅田君と堂々と投げ合い、ブライト君のソロ本塁打による1点を守り切って1−0で完封した投手だ。そして彼は2塁へ牽制球を投げた。石川君は完全に逆を突かれ完全にアウトだったが、ボールが高くそれタッチが遅れたためセーフ。この石川君はやはり今日のラッキーボーイだ。

その後下山君がライト前にタイムリー。先制本塁打を放った正木君はショートゴロで完全に併殺打だと思われたが2塁手が1塁へ悪送球で同点。その後福井君の安打で慶應は6−5と逆転に成功した。

上武も力を見せる。7回表に先頭の川端君が安打で出塁し犠打で2塁としたところで慶應は橋本達也君をマウンドに送った。だが2死後、ブライト君は泳がされながらもバットの先でセンター前に運んで同点。そして打席には先ほど満塁弾を放った進藤君。もちろん連続本塁打などは望めない。ならばブライト君がなんとしても2塁へ・・・・

これは慶應もわかっている。盗塁狙い見え見えのブライト君に長谷川君はけん制を2球続けた。そして3つ目の牽制。それまでの牽制球より早いボールにブライト君は刺された。

彼が2塁に進んでさらに進藤君だったらどうなったかわからなかった。

そしてその8回裏、慶應は試合を決める。先頭の朝日君のバックスクリーン直前まで飛んだ打球をブライト君が好捕。しかし打席にはラッキーボーイ石川君。打った打球はショートゴロ。完全にアウトのタイミングだったが送球が高く1塁手がジャンプしたすきにベースを駆け抜けた。当然ショートのエラーかと思ったが記録は安打だった。7回にも先頭打者としてエラーで出塁し逆転の狼煙を上げた石川君。そして渡部遼人君は四球。下山君の内野ゴロで2死2・3塁とすると正木君が泳ぎながらも強くたたいてセンター前に運び2点。上武はここで抑えたかったが福井君を歩かすと前進守備の外野陣の間を突く3塁打を広瀬君が放って10−6とした。

上武は最後は2三振を含んで三者凡退に倒れた。だが、この試合では決して慶應には負けてはいなかった。その差は実はほんの些細なプレーだ。エラーと記録されたものもあるが、打たれながらも踏ん張った上武の先発上村君。チャンスを逃したかに見えた慶應の正木君の先制2ラン。微妙なプレーの直後の初球満塁本塁打。追撃される上武を襲ったエラー。それでも4番の意地で追いつく上武。

そして最後は力尽きる上武・・・・

内容的には全く負けていない。いや、むしろ選手層という意味では多彩な投手陣に長打力のある打撃陣。今日は下位打線が当たらなかったが、1回戦から運よく全試合を観戦できた上武を見るとこの秋の躍進を期待せずにはいられない。

ベンチ前で後片付けをするブライト君の表情にこの秋での再会を期待したいと思った。



2021年6月12日 第70回全日本大学野球選手権 準決勝(於 明治神宮野球場)
上武大
000 014 010 = 6
002 001 34x = 10
慶應義塾大

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