神宮スズメの独り言2021春〜59〜投手陣全崩壊

さすがにしんどかった。今日の全日本大学野球選手権の準々決勝の第3試合。福井工大対名城大。名城大の松本君は開幕日の7日に対沖縄大学戦で132球、被安打３で完封。8日の仏教大学戦でも途中リリーフで4イニング54球を投げ込んでいる。

この松本君をボクは知らない。だが経歴を見ると2019年の兵庫県大会で神戸国際大付のエースとして明石商に決勝で敗れている。しかも8回まで１−０とリードしながらも最終回に4点を失っての敗戦。明石商はセンバツベスト４でこの松本君に勝って出場した案津野甲子園もベスト４だ。サイドハンドからコーナーを突く切れのある松本君のボールには力があり先頭打者を空振り三振に取った。だが、その後は３連打を浴びて１点を失う。ここでボクには違和感があった。簡単に打てるようなボールには思えなかったが、いとも簡単に打つ。２回も先頭の井元君に右中間を破られ３塁打。その後内野安打で１点を追加された。松本君は決してボールが上ずっているわけでもなく甘いところにきたようにも見えなかったが、もしかしたらこれまでの試合のデータから配球を読まれているのだろうか。松本君は２イニングで降板した。

福井工大は３回４回ともに１点ずつを加え名城も４回裏に１点を返した。４−１。これから接戦になっていくのかと思われたが、５回の表の福井工大は２つの四球の走者を置いて３連打。さらに四球のあと４番の尾堂君が右中間を破る走者一掃の３塁打で６点を入れた。なおも走者は２塁だ。そして死球。１０−１となったこの試合。あと１点入れその裏を無失点に凌げばコールドが成立する。

しかしその後の追加点はなくその裏の名城大は連打で無死１・２塁とすると２死後大川君がバックスクリーンに叩き込んで１０−４。これで７回コールドの７点差すらなくなった福井工大は６回の裏にも２点を失って１０−６と詰め寄られた。

だが試合はそのまま９回へ。

９回表の福井工大は先頭打者が四球。送りバントを名城の捕手の送球エラーで無死１・２塁。続くショートゴロで併殺かと思われたが簡単なトスを２塁手が落球。四球と２つのエラーで無死満塁。そして伊藤君の打球はセンター前へのライナー。ここでの中堅手の動きでボクはもう抜かれると思った。突っ込むなら思いっきり突っ込んで勝負だ。安全策ならきっちりとワンバウンド捕球だ。だが、迷いながら前へ出てきて慌てて前へダイビング。ボールとのタイミングが合わず後逸。ボールはバックスクリーンのフェンスまで達してランニング満塁本塁打。これで１４−６。しかもその後２つの四死球と安打で再び満塁とすると２塁打と内野安打でさらに３点を追加し１７−６とした。

もう集中力を完全に失ったと見えた名城大はしかしその裏先頭の打者が安打で出ると藤田君がライトスタンドへライナーで叩き込んだ。なおも内野安打で無死１塁と抵抗する。だが名城大の反撃もここまで。１７−８という壮絶な試合は幕を閉じた。ネットのニュースには華麗なる打撃戦を福井工大が制したと記されていた。たしかに福井工大18安打に対して名城大も12安打だ。だが、福井工大が与えた四死球は７。そして名城大は15。両チームとも6人ずつの投手をマウンドに送り最長イニングを投げたのは福井工大の2番手南大河君の3イニング。華麗なる打撃戦というより投手陣全崩壊の試合だった。

名城大は18安打を浴び15の四死球を与え、3つのエラーのうち2つは打者走者を1塁に許したものだった。35人の走者を許して17失点ならある意味上出来かもしれない。

しかしこの試合がそうなった要因は初回の松本君が浴びた違和感ある3連打によるものであるような気がする。



2021年6月10日　第70回全日本大学野球選手権　準々決勝（於　明治神宮野球場）
福井工業大
111 160 007 = 17
000 132 002 = 8
名城大