桜美林高校ならよく知っている。ＰＬ破って甲子園で優勝した時はテレビで見ていた。桑田真澄さんの息子さんが外野手を守っていた時の桜美林高校は江戸川区球場で見た。だが、桜美林の大学を見るのは初めてだ。
そのユニフォームに驚いた。全身真っ赤。ストッキングも真っ赤だ。西武ライオンズが上下濃い青のユニフォームだった時があったような気がするが、大学野球でこんなユニフォームがあるとは思わなかった。ツートンカラーなら派手な色のユニフォームも見たことはあるが全身真っ赤とはまるで何とかレンジャーのようだ。
しかし、その桜美林は初出場の勢いを買って初回から攻めた。上武の先発新谷君からいきなり河原木君が２塁打。バントで送ると３番の森田智貴君がライトスタンドへライナーで叩き込んだ。なおも２死後安打と死球でチャンスを作る。２回も２死から安打と盗塁で得点圏に走者を進める。桜レンジャーの勢いは止まらないように思えた。
首都リーグはそもそも東都準加盟佼だった東海大が参加校を呼びかけて作ったリーグであるため当然東海大が優勝回数はダントツの１位。日体大がそれを追い、筑波・帝京・桜美林・武蔵の６校が１部を占める期間が続いている。かつての強豪城西や大東文化、明学は２部に低迷したままだ。そんな中で2016年秋以来2度目の優勝を遂げた桜美林はこの全日本には初出場。しかしその2016年秋はプロ入りした佐々木千隼を擁し、�法�星を要する明治と神宮大会で決勝を戦い準優勝となっている。東海が圧倒的に強い首都リーグではあるが桜美林も結果を出してきたのだ。
3塁側には多くの関係者が訪れた。そして序盤の攻勢に盛り上がる。桜美林のおそろいのTシャツを着た子供たちも応援に来ている。だが、2009年明治神宮大会準優勝、2013年全日本大学選手権優勝の経歴を持つ上武大学も落ち着いていた。
上武も初回から毎回安打でチャンスを作り続けて流れを渡してはいなかった。5回表の2者連続三振から2連打と四球で満塁のピンチに内野ゴロに仕留めたその裏、1死から四球で走者を出す。打席にはブライト君。1回戦では本塁打を放ち今日もすでに安打を放っている。ガーナ人を父に持つ彼は足が速く、都立葛飾野高校という野球強豪校ではないにも関わらず高校通算38本塁打を放っている。関東第一で甲子園に行ったオコエを思わせる彼がこの秋にはドラフト候補に挙がってくるのは間違いないだろう。
そしてここで桜美林の津野監督はマウンドに足を運び1分ほどバッテリーと話した後に投手交代を告げた。桜美林は多間君から山本君へと交代した。
だがブライト君は三遊間を抜ける安打。さらに四球で上武はチャンスを広げ山脇君の犠飛で1点を返すと、6回には桜美林の山本君は3つの四球を与えて1死満塁のピンチ。ここで桜美林は武藤君の投手を替えたが2死後ブライト君の安打で同点とされた。逆転を狙った2塁走者は本封されたが・・・・
もう流れは上武だった。続く7回の裏、上武は先頭の藤原君が3塁手のエラーで出塁。その後のワイルドピッチで2塁へ進んだ藤原君は3塁を狙うそぶりを見せ慌てて帰塁するとボールをカバーしていた桜美林の捕手は2塁へ送球して暴投となった。藤原君は3塁へと進んだ。
ここなのだ。ボクが思ったのは・・・・
桜美林の津野監督はここまで2度投手交代を告げている。先発の多間君から山本君、その山本君から武藤君。ともに球審からのボールは受け取らずマウンドまで行って話し込んだ挙句の交代だった。すでに交代を決めているのであればマウンドに行く前に球審からボールを受け取り交代を告げてからマウンドに行くのがボクが知っている限りの大学野球での常識だ。
だが、津野監督のやり方は違った。それは津野監督のやり方なんだろうからとりわけ言いたいこともないが、あれだけマウンドから降りる選手に語り掛けてから交代を告げるのであれば、内野手のエラーとワイルドピッチと、さらに捕手のエラーで無死3塁とされた投手にタイムをかけて何らかの間を取ることはないのかとボクは思った。このままではやられるなとボクは思ったのだ。
そして案の定だった。その無死3塁から山脇君がライトスタンドに叩き込んだ。４−２・・・・
それから津野監督は悠然と投手交代を告げた。試合はそのまま４−２で上武が勝利した。
津野監督ができることはもう一つなかったのかとボクは思った。いや津野監督ではなくとも、内野手が声をかけるとか、外野手がスパイクの靴紐を結びなおすとか・・・・
それによって勝ったとは言わないが、それによって変わった可能性はわずかでもあったように思う。
2021年6月9日 第70回全国大学野球選手権 2回戦（於 明治神宮野球場）
桜美林大
200 000 000 = 2
000 011 20x = 4
上武大
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