居住する世田谷区内なのに我が家からは交通不便、電車を3路線を乗り継ぎ、1時間に2本しかないバスに乗って30分。バス停降りても入り口まで坂道を上がる。
そんな静嘉堂文庫美術館には、世界で3点しかない国宝・曜変天目茶碗のひとつがあり、浄瑠璃寺の十二神将立像のうち7体(5体は東博所蔵)がある。足繁く通いたいところだが、そんな事情でこれまで3度しか行ったことはなかった。
来年丸の内の明治生命館に移転する報を知り、これからは気軽に行かれると喜んだが、さてもこの地が最後かと思うと行きたくなるのが人の常。行こう行こうと思っていたら、緊急事態宣言突入で休館。所蔵国宝7点が全て見られる前期を逃してしまった。6月1日に再開して6日までの会期を13日までノンストップ延長の温情に感激して、3日に一人で行く。
多くの人が別れを惜しむように建物の写真を撮っていた。ここは予約制ではないのだが、私が見終わって出る頃(2時半ごろ)には入場制限をしていた。中はそれほど混んでいないが、まだ緊急事態宣言下なので、収容者数上限を低く設定しているのだろう。ただし、原美術館閉館の時もそうであったように、終了が近付けばさらに混むことが予想される。(今日土曜日は整理券を配布した模様)
美術館
文庫の建物は大正13年建築
http://www.seikado.or.jp/exhibition/index.html
http://www.seikado.or.jp/exhibition/constitution.html
静嘉堂文庫美術館は、移転前最後の展覧会「旅立ちの美術」を開催。2022年に展示ギャラリーを千代田区丸の内・明治生命館内に移転するのに伴い、本展を現在の世田谷区岡本からの「旅立ち」と位置づけ、旅立ちとそれに伴う「出会い」と「別れ」をテーマに収蔵作品を展示する。
前期(4月10日〜5月9日)では、同館が所蔵する《曜変天目》《禅機図断簡智常禅師図》など国宝7点を一挙に公開。1998年の「静嘉堂・国宝展」以来23年ぶり、かつ展示室に一堂に会するのは初めてのこととなる。
後期(5月11日〜6月6日)では《曜変天目》に加え、《太刀 銘 包永(かねなが)》《倭漢朗詠抄太田切》の国宝3点を展示するほか、重要文化財《聖徳太子絵伝》を修理後初公開する。
展示ギャラリーの移転先である丸の内は、静嘉堂文庫創設者・岩��彌之助が美術館建設を夢みた場所。本展は、岩��彌之助、岩��小彌太の父子によって集められた名品にまつわる様々な逸話を交えて紹介しながら、開館30周年を迎える静嘉堂の歩みも振り返る。
1 旅立ちー出会いと別れの物語
2 理想郷へー神仙世界と桃源郷
3 名品の旅路ー伝来の物語
4 旅する静嘉堂ー静嘉堂の歩んだ130年(パネル展示)
世田谷最後の展覧会を「旅立ち」と位置づけて、
第1章:はなむけとして送った書画や詩歌、さまざまな送別の物語
第2章:神仙世界や桃源郷を描いた絵画やその入り口とされた枕や壺、瓢箪、酒宴
第3章:「旅立ち」と「出会い」を繰り返して伝来された美術品の数々
を展示。
うまい企画だなぁ。「日曜美術館」アートシーンで河野館長が熱く語っていたのを思い出す。
では、作品をいくつかご紹介。
九淵龍賝題 《万里橋図》
諸葛孔明が呉国へ旅立つ使者へ「万里の行はここより始まる」と言って送り出した橋を「万里橋」という。橋の上に人物が3人描かれていてそれが細かい。
五世大木平藏《木彫彩色御所人形」のうち「宝船曳」「輿行列」》
岩崎小彌太氏還暦のお祝いに夫人が作らせた御所人形。小彌太氏は卯年生まれだったので、従者は皆兎の面を被っているが、それがなかなか可愛い。宝船も兎だ。七福神のうち、布袋様を小彌太氏、弁天様を孝子夫人に似せて作ったとか。は〜お金持ちのやることは違うぅ。
《山水蔦蒔絵螺鈿笈型香棚》
棚といっても香合など小さなお道具を置くものだから、小さい。小さいが精巧な作りで美しい。
笈(おい)というのは、修験者や行脚僧などが仏具・衣類・食器などを入れて背負う、あしつきの箱のことで、背負うものだから内側2本の足が背の丸みに沿ってたわんでいる。この写真だとよく分からないけれど、四角柱でなく歪んでいるので、そこもまた面白いところ。その足も竹に模してある。
画像はないが、京焼の《色絵松竹梅文笈型丁子風炉》もまた笈の形をしてたわんでいて、趣あって可愛らしかった。
河鍋暁斎《地獄極楽めぐり図》
今回のお目当て。これが見たくて行ったようなもの。かつてどこかで見たことがあった気がするが思い出せず…老化・涙
これは、暁斎のパトロンの大店主人の娘田鶴が14歳で亡くなり、悲しんだ主人が暁斎に注文したもの。おたっつぁんが臨終となって、先に亡くなった親族や贔屓役者と再会したり、三途の川や地獄の見学をしつつ、最後は極楽浄土へ行くという楽しい旅物語のような画帖。とても美しく丁寧に描かれていて、大店主人はどんなにか慰められたろうと思う。と同時に、気持ちこもった描き方に二人の交遊の深さもうかがえる。
展示は、内裏雛、龍、小動物、小鳥、魚、お道具たちが皆きれいなべべ着て極楽入り口で田鶴一行を出迎えるシーンと、当時開通した汽車と馬が引く人力車が極楽に向かって走るシーンの二つ。細かいところまで見応えあり!
後1として、画面一杯に描かれた蓮の葉、後2は釈迦如来と蛙がとまる蓮の葉の絵。
内箱には、柴田是真筆の田鶴の影絵。
その他の場面は、小さな画面なれどタブレットで全部見られる。堪能!
谷文晁《八仙人図》
八人の仙人が取り囲むは立って煙を吐く蝦蟇。
鈴木鵞湖《武陵桃源郷》
漁師が船を降り洞窟を抜けた先に桃源郷があったという場面。山水図のすごいところは見ているといつの間にか絵の中に入り込めるところか。とても鮮やかな青色緑色を多用しているが、これは仙境を描く時に用いる「青緑山水画法」というそうで、これに金泥が加わった「金碧青緑山水」はさらに華やかな理想郷になる。
この章では、「邯鄲の夢」にちなんで、唐代の陶製枕も展示。陶製枕には焼くときのために小さな穴が開いているが、この穴が次第に大きくなって夢の中に吸い込まれるというわけなのね。
室町時代の《十二霊獣図巻》
鳥獣戯画乙巻には霊獣もあったが、ここでの展示は、白澤と三角獣と…もう一つが読めない!帰宅後調べたら「兕(凹の下に儿・ひとあし)」で「ジ」と読むとのこと。水牛に似る一角獣だそうだ。
《端渓双鵞硯》
浦上春琴の旧蔵品。鵞鳥を愛した王羲之の蘭亭序をイメージしたもの。箱に描かれた2羽の鵞鳥の絵が気に入ったので、調べたら富岡鉄斎筆だって。
後期の目玉は4幅からなる《聖徳太子絵伝》修復後初披露とか。生まれてから亡くなる51歳?まで描かれていて、細かい〜、暁斎ですでに力尽きていたのでさくっとパス。
景徳鎮窯《染付荘子香合》
蓋の上に蝶々が。荘子「胡蝶の夢」に因んだもの
尾形光琳《住之江蒔絵硯箱》
光悦の《舟橋蒔絵硯箱》ほど蓋が盛り上がっていない印象だが、やはりよく似ているなぁと思う。光悦は「後撰和歌集」で、こちらは「古今和歌集」
建窯《曜変天目》
静嘉堂文庫と言ったらやはりこれ。今回はすごく低い位置に展示されていたので、チビの私も背伸びせずに鑑賞できた。また丸の内で会いましょう!
ここの庭園は急斜面を降りて行かなければならないので、私は全部巡ったことがない。無理ですもん(涙)
6月13日まで
ログインしてコメントを確認・投稿する