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2020年08月27日00:27

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なんと“フランスの巨匠の幻の遺作”をCSで再見できました。アンリ・ジョルジュ・クルーゾオ監督「囚われの女」(1968)。

当然、日本未公開です。僕はVHSで持っていました。DVDを買おうかどうしようかと迷っているところで、CSのザ・シネマが放送してくれました。町山なんとかという男が20分くらい語っていますが、そんなものカットしてしまえばいい。ちらちら聞いただけですが、いろいろ固有名詞を並べて喜んでいるみたい。勝手に喜んでろ。

物語は、幾何学模様が得意な美術家ジルベール(ベルナール・フレッソン)が、妻のジョゼー(エリザベート・ウィネル)を“仕事に行く時間だぞ”と起こすところから始まります。ジョセーは神経症の患者らしき人々を撮影した16ミリフィルムを編集している。仕事からの帰りに夫も出品している画廊に行くと、夫は女性新聞記者に言い寄っている。てなわけで美術展の中心人物スタン(ローラン・テルジェフ)の誘いに乗って彼の自宅へ行く、という展開です。

スタンが自宅で、有名人の筆跡の写真をジョゼーに見せていると、1枚人物写真が挟まっている。スタンは“間違いだ”と謝りますが、四つん這いの人間を鎖でつないだような写真を、ジョゼーは忘れられなくなる、というあんばい。スタンは専門のモデル(ダニー・カレル)を雇っていて、そんな写真の撮影風景をジョゼーに見せつけるわけです。

なにしろ1968年の映画ですから、いくらフランス映画と言っても現在のようなSM劇は作れません。もちろんボンデージ・ファッションなどというものも画面に出せない。そしてまた、「恐怖の報酬」や「情婦マノン」を作った名匠とは思えない、平凡な人物像なのでがっかりしました。

ところが終盤、ジョセーとスタンが海岸の岩の上に立ち、そこへかなり大きな波が打ち寄せるシーンがあるのですが、これにはびっくりしました(写真3)。よく主演の2人をこんな岩場に立たせたな、と思ってしまう。何しろCGIなんかない時代です。もちろんスクリーンプロセスではない。この場面を見るだけでも価値があるから、1000円以下ならDVDを買いなさいね。

思うに、このころ話題になったフランスのプライベート・フィルム(日本ではブルーフィルムとも言う)に、ジャン・ループ・グロダールという監督が作ったと話題になった映画がありました。週刊誌で読んだだけなので、この映画とは何も関係ないのですが、もしかしてクルーゾオもプライベートではとてつもない映像を作り上げていて、その費用を浮かせるために検閲を通る内容で劇場版を作ったのではないか、と思う訳です。前出のグロダール監督は、その週刊誌によると、名前から容易に想像がつく監督さんだそうです。

とりあえず幾何学模様の美術品(オプティカル・アートですね)は結構楽しめます。ジョセフ・ロージーの「唇からナイフ」よりも、本気でした(笑)。それとヒロインのジョゼー役がバルドーあたりだったらもっとよかったと思うのですが、それだと「セシルの歓び」のキャストとかぶるからなぁ。要するにジョゼーにうきうきした楽しさが感じられないのです。

ということで、これがクルーゾオの遺作とは“ちと悲しい”(by山中貞雄)わけですが、とりあえずVHSを捨てることができるから、僕は満足したのでした。
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