また原題をからかうとしたら、僕は決してこの映画の場所にいなかった、ということです。こういう作家気取りの映画作りが、imdb投票者の５％から“10点満点”を得ているということが信じられません。ま、類は友を呼ぶというやつでしょう。僕は今後こういう映画には近づかないようにします。←というのは穏便な言い方で、この監督の映画は金輪際見てやらねぇ、という意味です。
物語は、オールシネマオンラインからコピペすると、“闇社会での人捜しを専門に請け負う孤独な元軍人の男が、組織に掠われた少女を救出する中で思わぬ陰謀に巻き込まれていく”ということです。その話を、観客にちょびちょびとしか分からせない、意味ありげなカッコつけただけの“スタイリッシュな”(これは＝不細工な、という意味)話法(＝自分勝手な主観)で描くわけです。
こういう映画を作る人は、自分の妄想世界に浸りきって満足してるんでしょうね。先日の「タモリ倶楽部」で、妄想世界にはまり込んだ“達人”が登場して、架空世界の言語を作り上げた人とか、架空の相撲世界における星取表を長年続けている人が登場しました。こういう方々に対して僕は、“ようやるわ”という感慨しかありません。でも彼らは、それを公開して誰かから金を取るという行為はしませんから、何も問題はない。
このリン・ラムゼーという監督は、映画を作っているわけです。そして一般に公開して金を取っている。僕は彼の「少年は残酷な弓を射る」(2011)を見ていますが、このときも人間を描ききれないくせに社会問題であるテーマに手を出すバカ手監督、いや若手監督だなと苦々しく思ったのでした。ということで、僕の「ジョーカー｣の感想を読んだマイミクさんから、「ビューティフル・デイ」を見てくださいよと言われて、「少年は残酷な弓を射る」が嫌いだからなぁと二の足を踏んでいたのですが、とりあえずＤＶＤに手を出したしだい。←あ、マイミクさんに責任はありませんよ。映画を選ぶのはあくまでも自己責任(＝事故の責任、ね)。
ま、50歳を過ぎた女流監督に“若手”はないわな。だからバカ手が正しいと思う。同じように僕の若いころ世界的な大スターだった人と同じ名前のパチモン監督も、バカ手ですけど。しかし、このリン・ラムジー(僕はラムゼイの表記が音に近いと思います)監督は、物事を分かりにくく描くことが“スタイリッシュ”だとでも思っているんでしょうか。僕は、カッコつけることがカッコ悪いという60年代末のフォーク歌手の彗眼に出遭っているから、今どきアホなスタイリッシュさを楽しむ気がありません。
せめて鈴木清順の諸作や、この監督はイギリス出身らしいから同国の先輩ジョン・ブアマンあたりのスタイリッシュさを学んでから映画を作れ、と言っておきます。周囲を見せずに物語を進めて観客を惑わすと言うのは、安手のホラーの常套手段であり、それをもったいつけてキザな画面作りで見せても、映画を作ったことにはならないのです。
僕は今、これらの言葉を、日本の若手女性監督に対して発信しています。つまり「21世紀の女の子」という映画を期待して見たのですが、15エピソードのどれひとつとして面白くなかった。15名の“新進監督”の中には、僕が認めている井樫彩さんもいるわけで、彼女も含めて、そもそも映画とは何なのかという根本から考え直したうえで作り方を改めてもらいたいと思っています。
自分の妄想世界を呈示する、それだけの映画があってもいいでしょう、という説は、その論理だけは“正しい”と認めてあげます。しかしそれは、きちんと鑑賞に堪える“作品”を作ってから発言しなさい。箸にも棒にもかからない、独白とも言えない我田引水映像の羅列で、映画を作ったと思わないでいただきたい。個人的な習作なら構わないけれど、それをＤＶＤで発売してるわけですから、その“社会的責任”を取ってもらいたいわけです。
ということで、リン・ラムゼイ監督の映画は、金輪際見ないでおこうと決めました。殺し屋として“優秀だ”と言われても、せいぜい行方不明の少女を探すしか能のない人間です。そんな主役が下手を打って野垂れ死にしかけても生き延びて、という勝手な妄想映画を、少なくとも70年代のスコセッシ作品にオマージュを感じている「ジョーカー」と並べることはできません。つまりバカは死んでも治らない、という事実を僕は知っているということです。
ログインしてコメントを確認・投稿する