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2019年07月25日10:42

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7/19 松方コレクション展@国立西洋美術館

https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019matsukata.html
https://artexhibition.jp/matsukata2019/
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神戸の川崎造船所(現・川崎重工業株式会社)を率いた松方幸次郎(1866(慶応元年12月1日)−1950)は、第一次世界大戦による船舶需要を背景に事業を拡大しつつ、1916-1927年頃のロンドンやパリで大量の美術品を買い集めます。当時の松方のコレクションは、モネやゴーガン、ゴッホからロダンの彫刻、近代イギリス絵画、中世の板絵、タペストリーまで多様な時代・地域・ジャンルからなり、日本のために買い戻した浮世絵約8000点も加えれば1万点に及ぶ規模でした。
しかし1927年、昭和金融恐慌のあおりで造船所は経営破綻に陥り、コレクションは流転の運命をたどります。日本に到着していた作品群は売り立てられ、ヨーロッパに残されていた作品も一部はロンドンの倉庫火災で焼失、さらに他の一部は第二次世界大戦末期のパリでフランス政府に接収されました。戦後、フランスから日本へ寄贈返還された375点とともに、1959年、国立西洋美術館が誕生したとき、ようやく松方コレクションは安住の地を見出したのです。
開館60周年を記念した本展では、名高いゴッホ《アルルの寝室》や、2016年に発見されたモネの《睡蓮、柳の反映》など国内外に散逸した名品も含めた作品約160点や歴史資料とともに、時代の荒波に翻弄され続けた松方コレクションの百年に及ぶ航海の軌跡をたどります。

プロローグ
1 ロンドン 1916〜1918
2 第一次世界対戦と松方コレクション
3 海と船
4 ベネディットとロダン
5 パリ 1912〜1922
6 ハンセン・コレクションの獲得
7 北方への旅
8 第二次大戦と松方コレクション


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初めて西美に行ったのは小学生高学年の時だろうか、父に連れられて。私は父の趣味のおかげで、日展で東山魁夷や杉山寧を知り、西美でルノワールやモネを知った。同級生が夢中になった漫画の少女たちは全然好きになれず、ルノワールが描いた少女にうっとりしていた変な子供だった。
ルノワール《帽子の女》フォト

中1の時には担任の先生がモネ展に連れて行ってくれた。その時以来モネに夢中になった。
モネ《ウォータールー橋》フォト

モネ《船遊び》フォト

モネ《陽を浴びるポプラ並木》フォト
中でも一番好きなのがこれだった

西美が開館したのは1959年4月、私が生まれた半年後だ。フランスに接収されていた大量の作品が国立美術館開館を条件に返却されたニュースは、私は知らぬところであったが、絵画好きの父が当時そのニュースをどんな風に喜んだか、今想像するだけで楽しい。だから、まだ幼い私を連れて行ってくれたのかも、と思う。

ルノワール《アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)》フォト
粘り強く返還交渉をして1959年パリからやっと日本へ戻った作品の代表、西美の創設コレクションとなった。子供の頃から好きな作品だったが、そのことを今回知り、感無量。

以降現在に至るまで、西美の所蔵品展をしばしば観にいくようになる。もちろんその大半が松方コレクションということも知っていた。しかし、多数の作品にこんな激動の運命があったとは今回初めて知ったことだった。HP内の「作品のゆくえ」を見ると現松方コレクションは松方幸次郎が蒐集したコレクションの半分以下なのだ!愕然。あとの半分は…?
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この展覧会は、松方コレクションの逸品を鑑賞するだけでなく、散逸した作品にも再び会え、行方不明の作品たちに思いを馳せることにできるちょっと変わった展覧会だった。
展示1作目は松方氏がモネのアトリエに行って直接購入した《睡蓮》。
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売却しないつもりでモネ自身が大切にしていた作品を松方氏なら、と譲ったものだ。
そして、展示最後の作品は、先ごろ修復された《睡蓮、柳の反映》
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こちらは、第二次大戦中ナチスドイツの略奪を逃れるためにフランスの寒村に疎開した時にすっかり傷んでしまい、そのためフランスから返却される時にリストから漏れて忘れ去られていたもの。2016年発見されて、松方家より寄贈、この度修復された。上半分は痛みがひどくて修復は想像の域を出ないのでそのままであることが痛々しいが、大作だ。右側中央やや下寄りに睡蓮のピンクの花が絵の具を盛り上げて描いてあって、画像だとわかりづらいが生き生きと浮かび上がっていたのが印象的。
地階のエントランスにはデジタル復元した映像もある。
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最初と最後のモネ《睡蓮》、なんとドラマチックな展示だろう。

プロローグではフランク・ブラングインが描いた《松方幸次郎の肖像》
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早い筆致で人となりを描ききっている。ブラングインはロンドンでの蒐集のよき助言者となった画家。松方が日本に「共楽美術館」建設の構想を持ったのもこの時。彼の作品もたくさん購入しているのに、1939年保管していたロンドンの倉庫が火災に遭って喪失。

展示は購入順、購入先毎になっているので、年代順で見る常設展とはまた違う趣。常設展では、ロダンの彫刻を見てスロープを上がりきったところにある宗教画がいつも新鮮な驚きなのだが、天井の高い第一展示室に高く飾られたそれらの華やかさにまた驚く。
カルロ・クリヴェッリ《聖アウグスティヌス》(中央)フォト

ロセッティ《愛の杯》フォト
あちこちの美術館に貸し出される作品も多い。

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ミレイ《アヒルの子》は、松方から一旦は三井家の和田久左衛門に渡って、また松方のコレクションになったそうだ。

セガンティーニ《花野に眠る少女》フォト 

これらもこの時期ロンドンで購入。造船会社の社長松方幸次郎は第一次世界大戦の特需で海外出張を兼ねて絵画の蒐集に邁進。
戦争特需とはいえ、戦争に悲惨さを伝える絵も購入しているあたり、松方氏の人となりを想像してちょっとホッとする。また、海や船の絵も多く蒐集、4月に見た海運王バレルのコレクションと通じる。

一方で、ロンドンに留め置いたコレクション約900点が第二次大戦中倉庫火災で消失してしまったという衝撃的事実。その倉庫保管リストが先ごろ見つかったのだ。英字タイプのリストだから一体どんな作品が失われたのか実感はわかないが、その数の多さに心が痛む。

「K.マツカタという日本人がパリの近代絵画の画廊を空っぽにしている」という噂が立った1921〜1922のパリでの買い付け。私が魅了された印象派前後の絵画がここに並ぶ。シャヴァンヌやモローの名はこの美術館で知ったのだった。

シャヴァンヌ《貧しき漁夫》フォト

モロー《牢獄のサロメ》フォト

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デュランの《母と子》も美しい作品で好きだが、元の額が右横に展示してあって、こういうのもこの展覧会ならでは。

ゴーガン《扇のある静物》フォト

ゴッホ《アルルの寝室》フォト

ゴーガンは《ブルターニュ風景》はいつも展示してあったが、このようなジャポニズム色濃い初期作品もあったの?ゴッホのこの有名な《アルルの寝室》はここのコレクションだったの?…と思ったら、どちらもオルセー美術館の所蔵。
とにかく松方コレクションの、時代に翻弄される姿がまるでドラマのようにすごいのだ。
昭和金融恐慌のあおりで川崎造船所が経営破綻に陥り、松方が社長を引責辞任した1928年以降、第二次世界大戦期にかけて、松方コレクションは散逸の時代を迎える。国内では差し押さえられた作品群の売立が1941年まで続き、ロンドンでは1939年に倉庫保管分が火災で灰燼に帰す一方、1940年、400点あまりの作品がロダン美術館に保管されていたパリではドイツ軍の侵攻が迫る。そこで、一部作品を売却しながらフランス郊外の寒村に疎開。戦争終結後は、敗戦国として1944年フランス政府によって接収される。のちに日仏政府間の返還交渉が始まり、国立美術館建設を条件に返還されるが、うち20点は重要美術品として返還されなかった。この20点の中に先のゴーガン、ゴッホの名作があったわけだ。

元ハンセン・コレクションのこの3点もバラバラになったが、この度並んで展示され、身震い。
ドガ《マネとマネ夫人像》北九州市立美術館フォト

マネ《ブラン氏の肖像》国立西洋美術館フォト

マネ《自画像》ブリヂストン美術館/アーディソン美術館フォト
いずれも元は松方コレクションであったのが、1930年代に日本国内で売却されたもの。

川崎造船経営破綻後の「売立目録」も資料展示されていたが、夥しい数。何回にも分けて売却されていた。目録の名称が「展覧会」となっていたのも悲しい。

資料で衝撃的だったのは、ロダン美術館保管時代に松方コレクションを写したガラス乾板。
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先頃見つかったものだが、中には、返却された作品、売却された作品などが写っている。現所在の特定に繋がったものや修復や破損前の元の姿を捉えたものもあって、この発見は大いに意義あるものであったことがわかる。
モネの《睡蓮、柳の反映》もあった。しかし、マティスの《窓の下の女》はいまだ行方知れず。見たかったなぁ。

今回、特別出品のマネ《嵐の海》フォト
この作品も乾板に写っていた。ナチから逃れるため、松方から依頼を受けた日置が作品疎開をした時に疎開費用として売却した20点のうちの一つで、2013年にミュンヘンで発見された。今はベルン美術館にある。嵐の前の二艘の船が松方コレクション自体の運命を示唆しているようにも見える。マティスやボナールの大半は経営破綻時に売却されたまま行方知れずという。第8章の展示室では、ちょっと涙がこぼれそうになった。


2時間超の鑑賞。
金曜日午後5時前に入ったら程よい混み具合でした。
9月23日まで。


特別展「モダン・ウーマン」も素晴らしかったので、後ほど日記を書こうと思います。


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