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2019年06月24日13:19

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池田良二/海老塚耕一/小野二郎

昔なつかしい砧緑地公園に足をのばしたのは
エッチングの展覧会のためでした。


池田良二と海老塚耕一
それぞれのふたり
@世田谷美術館


文章的にも作品画像的にも実に丁寧な冊子が各々無料で配られていました。
フォト


ここの画像的には
本物>印刷>その写真
というわけで無残ですが。


池田良二は一つの作品のなかに 
フォトエッチング・エッチング・アクアチント・ドライポイント・
メゾチントを組み合わせてそれをベラン・アルシュ紙に・・・という
複雑さ。
それを一部の狂いもない静謐さでみせてくれます。
ご本人によればその版は「やすりのよう」で「触ると指紋が消える」・・・


本物をみられてよかった、と思います。

7月21日まで。
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/collection/detail.php?id=col00103

***************


ところでこれはコレクション展示で
同時期に行われていたこちらがメインの企画展示でした。





ある編集者のユートピア
小野二郎:ウィリアム・モリス、晶文社、高山建築学校
@世田谷美術館


ある編集者、とは小野二郎。
晶文社の創立者です。
フォト



この字体、みたことある!
これこそ平野甲賀による大きな書き文字体。
この平野が晶文社のマーク、サイもデザインしたのだそうです。


会場に入ると、中央に小野愛用の回転書棚がありました。
そこに納められていたのはウィリアム・モリス著作集24巻。


展覧会の構成は
第一部 ユートピアを求めて
第二部 編集者小野二郎の誕生
第三部 高山建築学校


第一部では小野の研究したウィリアム・モリスについて。
モリスはいわずとしれた装飾芸術の復興者ですが
晩年はケルムスコット・プレス社を設立し、53タイトルの
美しい書物を作ったのだそうです。
そのケルムスコット・プレスの書籍が展示ケースにずらり。
なかでも世界で最も美しい本の一つ、『チョーサー作品集』がこれ。
絵はエドワード・バーン・ジョーンズですね!
フォト



(展覧会フライヤーより)


会場の壁には各界の人々が二郎を語っていて
そのなかに鶴見俊介さんの文章がありました。

いわく、モリスは卒業された思想家だった。たとえば大正期には柳宗悦が注目していたし、
芥川龍之介は卒論をかいている。よって大正中期からはマルクス・レーニン
に追い越されたとして顧みられなかった。
それを小野二郎が独自の社会思想家として取り上げた。
その着眼と粘りに鶴見は感動したといいます。
最後の本『紅茶を受け皿で』ではジョージ・オーウェルの目撃譚から
イギリス大衆文化をとらえようとしている‥


そして第二部は東大卒業後。

まずは弘文堂に入り、わずか数年で編集者として頭角を現します。
現代芸術論叢書シリーズのたちあげ、『サド復活』『ランボオからサルトルへ』、
20代だった大岡信や谷川俊太郎の本を出したり。
そしてほどなく学生時代の友人・中村勝哉と晶文社を立ち上げます。
(中村勝哉からは「俺はもう読む本が無くなったよ」 と言ったという小野の
学生時代のエピソードも語られています)


設立趣意書には
「もっとも先端的で、同時にもっとも伝統的なもの、要するに語の根源的な
意味のラジカルな出版物を出したい」と意気盛ん。
しかし新会社の経済を安定させるために、『中学受験案内』も出すという‥
まあ東大学力増進会の先輩が株を半分買ってくれたそうですしね。
それでも大学の教員をしながらふたまたの草鞋で小野は次々に本を出していきます。
基本的に編集者の展覧会なので、出版された本がたくさん並んでいました。
手に取ってみたいものもたくさんあったな。
植草甚一のものとか。
文学のおくりものシリーズの『たんぽぽのお酒』(ブラッドベリ)など
懐かしかった。
しかし小野は52歳で突然世を去りました。


最後の部では、晩年講師をつとめた高山建築学校の様子が。
そして展覧会のおわりには小野をしのんでモリス・テーブル。





いまさらながらこちらのポッドキャストを聴いています。

実際に小野二郎に学ばれた、日本女子大教授・英文学者の川端康雄さん
のインタビュー記事です。
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/blog/entry.php?id=blg00104


6月23日にて終了
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00193





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