既に優勝は明治に決まっている。早慶戦は勝ち点3同士、2位3位決定戦となった。ボクが神宮に着いたのは11時。フレッシュリーグでなんと東大が満塁からタイムリーが出て法政を相手に逆転劇を演じたところだった。
早慶戦に集まり始めた観客のほとんどは東大を応援している。連盟規定で8回にて試合終了となった時は大きな歓声が沸いた。もう1万人は入っている。もちろん普通に行われる公式戦の東大対法政より観客は多い。もちろん校歌もなく応援団はいないがそれでもこの観衆の中で勝った東大の新人たちに与えた影響は大きいかもしれない。
東大は開幕当時こそ投手陣がボロボロだったが、リーグ終盤には投手陣も安定した。秋季リーグに期待を持たせる東大の戦いぶりだった。
六大学はみんな仲がいい。とかく批判を浴びる東大の存在にも六大学ファンの温かい。東大あっての六大学だと思っている人が多いのだ。
そこに文化がある。フレッシュリーグの試合が終わって、1塁側の早稲田の応援席に慶應の応援団が、逆に3塁側の慶應に早稲田の応援団が入って「華の早慶戦」の大合唱が行われる。
相手校のリーダーの下に「華の早慶戦」を謳い相手校の応援を一緒にやる。
もしサッカーの日韓戦の前に相手サポーターが乗り込んで来たら友好的に対応ができるだろうか。もちろんできない。そうだ、もちろんできなかったのだ。かつての早慶戦は・・・
球場で興奮した観客にけが人が出ることは日常茶飯事だった早慶戦。戦前のリンゴ事件に端を発し早慶戦だけはベンチが固定された経緯も今は一つの伝統として残っている。
今は友好を最も大事にする六大学。今日もそんな空気の中で試合は始まった。早稲田の先発は早川君でほかのスタメンもいつもの固定メンバー。一方の慶應は1番センター柳町君というアナウンスにボクは感じた。もう秋が始まっていると・・・・
今年から3塁を守る柳町君を昨年までのセンターに戻して2番に三塁手として1年生の下山君を起用した。昨年の甲子園、春夏連続出場の慶應高校で3番を張った選手だ。そもそも慶應の3塁者は昨年の内田選手が卒業し柳町君をコンバートすることで外野手に渡部君に中村君のレギュラー陣に2年生の正木君のポジションを空けたとも言えよう。
4年生が多く今年がピークの慶應に対しバッテリーも3年生で1年生の中川君をフルイニングで出場させている早稲田。
優勝がない今年の早慶戦。これぞ大学野球だと思わせるスタメンだった。
先攻は早稲田。慶應の先発高橋佑樹君は3回まで完全。危ない打球は一つもない。慶應のファンからすればこんな投球ができるなら明治との試合でもと思ったくらいだろう。
早稲田は3年生エースの早川君。初回は2つの四球とエラーで満塁とされるが何とか無失点。これまでの出来からすればよくないと思った。
そして3回には安打とエラーで1死1・3塁から犠牲フライで1点を失うがその後は凌いだ。
そして早稲田は4回の表、瀧澤君が早稲田初安打を放ち3塁まで進むと本盗を成功させた。四球やワイルドピッチなども絡んで1死2・3塁の場面だった。捕手からの返球を受けた慶應の高橋佑樹君はゆったりとロジンバックを手にした。その時、３塁走者の瀧澤君はホームにスタートしていた。慌ててグラブからボールを握った高橋君はもう本塁へは送球できなかった。
瀧澤君は高橋君の投球の癖を見抜き、それまでまさかと油断していた一瞬のスキを狙った。瀧澤君の素晴らしい走塁だった。
しかし高橋佑樹君はそこで踏ん張って4番の加藤君を5番の檜村君を内野ゴロに仕留めた。
早慶共に先発投手が失点しながらその後に踏ん張ったことがこの試合を面白くした。
6回の早稲田はあっさり2死、しかし福岡君はレフトに流し打ってそれがスタンドに入った。慶應は7回に内野ゴロの間に同点としたが、その直後の8回、今度は瀧澤君がバックスクリーンの左横に本塁打。早稲田の本塁打はともにあっさりと2死となった後に生まれた。
慶應は8回の裏、瀧澤君から被弾した投手の高橋亮悟君に打順が回ったが代打を送らず９回も投げた。先頭打者に四球を与え2安打を浴びたが、早稲田の走塁ミスもあって何とか無失点。しかし、9回裏は三者凡退に倒れた。
早稲田は8回までにわずか4安打で3点。本盗とソロ本塁打2本という効率のよさだった。慶應は2回戦に備えて投手陣を温存したのかもしれない。昨年は春秋ともに初戦と取りながら連敗した慶應。今年は初戦を取られた。豪華な継投陣を誇る早稲田からいかに得点するか。2回戦でそれが試される。
2019年6月1日 東京六大学野球春季リーグ戦 第8節1回戦（於 明治神宮野球場）
早稲田
000 101 010 = 3
001 000 100 = 2
慶應義塾
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