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2019年03月24日21:51
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岡上淑子
庭園美術館のアールデコ空間にぴったりで
幻想世界と現実の境がわからなくなるような展覧会でした。
岡上淑子 フォトコラージュ
〜沈黙の奇蹟〜
@東京都庭園美術館
高知県立美術館での展覧会から１年。
東京での大規模展とは”きてます”ね。
わずか6年ほどの活動期間、文字通り彗星のごとく現れたコラージュ作家。
結婚とともに筆を折られたのが本当に惜しまれます。
【展覧会構成】
第一部 マチネ
�機ゲ�上淑子とモードの世界
高知県美のメインビジュアルだった《招待》
金井美恵子『ピースオブケーキとトゥワイストールドテールズ』の表紙になっている
《彷徨》
今回のメインビジュアルになっている《夜間訪問》などはここに。
関連資料としてモノトーンなディオールのイブニングドレスが展示されていました。
�供ソ藉�の作品
初期はなるほど学校の課題っぽい。
高知県美のタイトル《はるかな旅》
ご本人が一番好きだという《海のレダ》はここに。
�掘ヂ躙�修造とマックス・エルンスト
シュールレアリスム作家と位置付けられていますので
関連展示ということでしょうね。
しかしエルンストの《慈善週間または七大元素》などから
影響を受けたことがよくわかります。
そのほか瀧口修造との往復書簡、1956年の個展案内はがきなど。
�検シ浸罎�らフォトコラージュへ
岡上が切り抜いたパーツや洋裁の型紙など。
�后ゥ灰蕁璽献絨聞�
�此イ修梁彰慙∋駑�
【第二部 ソワレ】
第一幕 懺悔室の展望
廃墟となった東京を経験した岡上の戦争やカタストロフを思わせる作品群。
第二幕 翻弄するミューズたち
《イヴ》のイメージかしら。
第三部 私たちは自由よ
いちばん好きだったコーナー。
《真昼の歌》
まるで庭園美術館で実際にあった出来事のよう
に見えます。
**************
講演会をききました。
沈黙の薔薇〜岡上淑子の視覚世界
神保京子（東京都庭園美術館学芸員）
神保さんは岡上淑子の再評価につながった2000年の
第一生命南ギャラリーの展覧会に係った方なので
今回の展覧会は満を持して、という感じでしょう。
作品を映しながら岡上さんのひととなり、同時代の作家との比較まで幅広くお話されました。
以下概略のメモを。
岡上さんは今年3月3日で91歳、いまもお元気で高知県にお住まいです。
こちらが(写真左)今回の展覧会のメインビジュアルである
《夜間訪問》。
作品タイトルはすべて岡上さんによるものです。
言語的センスもすばらしいですね。
この作品をみると、端正で優雅で破たんのない画面です。
でも人物の頭がなかったりしますので
不気味だとか怖いと思われた方もいるかもしれません。
それがシュールレアリスム、そしてコラージュの特質でもあります。
《幻想》
写真右。
バロック的で饒舌な作品です。
シャンデリアから手が出ているし、人物の顔は馬。
そのほかにも３頭の馬がいます。
これを展覧会の最初におきたい、と思いました。
鏡や窓のアーチがこの美術館・朝香の宮邸の構造にぴったりだからです。
ちなみに、本展のはじまりは馬の出てくるこの作品、最後も馬の登場する作品になっています。
（このバナーのみ撮影可でした。）
《沈黙の奇蹟》
見逃さないでください。大広間から噴水のような彫刻の左側の
小部屋に一つだけ展示しました。
森の中にたたずむ頭部のない人物。
パラシュートについている頭がその人物のものでしょうか。
そして画面左には神主のようなコスチュームの集団が
銃をもって立っています。
この作品が岡上さんの再発見のきっかけになりました。
そしてこの部屋には岡上の２つの詩も展示しています。
《祈祷書の薔薇》
深夜祈祷書の薔薇は目覚める
野生のヴェールに巫女たちは羞恥をかき抱き
大理石の歩道は客席のない舞台に続く
なめらかな足なみは時間の刺青を消してゆく
ちなみにこのトークのタイトル【沈黙の薔薇】はここから拝借しました。
《娘達は》こちらは長いので”娘たち”のつく部分だけを
抜粋して紹介します。
娘達は奇蹟の中で深呼吸する
娘達はそうしてまぶしい心臓を手に入れる
娘達は奇蹟の中で明るい誓をたてる
娘達はそうして無為の花に生氣を与える
（言語的にもシュールだと感じますね)
では岡上さんはどんな方だったのか。
これは恵泉女学園卒業後に羽田空港で撮った写真です。
次の写真。女学園の卒業旅行で友人と。はじける笑顔が印象的です。
次は文化学院の卒業時。
この学校は、男女平等を理念としていたり、皆洋装だったりとユニークな学校でした。
教授陣も与謝野晶子や芥川龍之介、菊池寛などそうそうたるもので
ここで学んだ事が岡上さんに大きな影響を与えたと思います。
愛読書はとおききしたら三島由紀夫や横光利一を挙げられました。
ここの先生方ですね。
そして、フォトコラージュをはじめたのもここに在学していたときでした。
赤ラシャを地紙とした「ちぎり絵」が課題になったのです。
もともと洋裁が盛んで、小学生の頃から人形の服を作っていた岡上にとって
ハサミと糊は手に取りやすい道具だったのでしょう。
これを機会に自分で自由にコラージュ製作を始めました。
素材は海外の雑誌『ヴォーグ』『ハーパーズバザール』『LIFE』等です。
具体的にいつのどの号かは鈴木けい子さんの研究があります。
1947年のディオールのイヴニングドレス2点
バレンシアガのピンクのドレスを参考展示していますが
この時代は物資不足にもかかわらず生地を贅沢に使ったドレスが流行りました。
《女心》
《彷徨》
《水族館》
優雅ですがダイナミックな動きもあります。
《海のレダ》
作品はモノクロなのですが、色々な雑誌からとっていますので黒も色々で立体的に見えます。
ここでコラージュというものを説明しておきましょう。
コラージュはフランス語のcolle(コル・糊 糊付け)からきています。
《西本願寺本三十六家集》国宝 平安末期
これが日本でもっとも古いコラージュです。
装飾的・平面的に紙を継いでいます。
その上に歌が書いてあるわけですね。
ピカソも「パピエ・コレ」を制作しましたし
これはダダイスムのラウル・ハウルマンの作品。政治的批判が込められた作品です。
そしてシュールレアリスムについても少し見ていただきましょう。
1924年のアンドレ・ブルトンの「シュールレアリスム宣言」に始まる20世紀最大の芸術運動です。
超現実主義と訳されますが、決して非現実主義ではないんですね。
あくまでも現実の中にある。日常の割れ目にある現実とでもいいますか。
「はかない美」でなく「痙攣する美」。
フランス語のdepeyser(転地 国外追放)から転じて
本来あるべき文脈から切り離して異なる場所に置き、意味や機能性を撹乱させて驚きに満ちた表現をしようとするものと定義されます。
ロートレ・アモンの「解剖台の上のミシンと蝙蝠傘の偶然の出会いのように美しい」を
マン・レイは写真で作品化しました。
マン・レイ
《おくりもの》
《アングルのヴァイオリン》
メレットオッペンハイム《毛皮の朝食》
いずれもデベイズマン的な表現ですね。
シュールレアリスムは文学や言語にも及びました。
無意識をいかに作り出すか、そのために自動記述法も考え出されました。
紙を４つに折って４人がばらばらに言葉を書いて組み合わせる
コラージュ的な活動も行われました。
《優美なる・死骸は・新しい・酒を・飲むだろう》
という具合です。
マックスエルンストによるコラージュロマンとして
《百頭女》
《カルメル修道院に入ろうとしたある少女の夢》
《慈善週間または七大元素》
を展示しました。
日本においては古賀春江の《海》が代表的ですね。
海と空のほかに別の時空が差し込まれている。
この絵の中には『ラ・ナチュール』からのモチーフもあります。
岡上さんの作品に戻りましょう。
今回出ていませんが
《刻(とき)の干渉》
《羽化》
いずれも頭がありません。
そのため見る人が自己投影できる。
"あなたは私"というように。
普遍性が高まりますし、より解放されて自由度が増す。
これは瀧口修造の書斎の写真ですが、
机の正面の壁、目立つところに岡上さんの作品が飾ってあります。
《変貌の一夜》
瀧口さんのご所望だったとのことです。
他の作家のコラージュを見ておきましょう。
平井輝七《夜の夢想》《生命》
山本(かんすけ)《漂流記》
瑛九《作品Q》
ハンナ・ヘッヒ《English Dancer》
ヘッヒはダダイストなので、顔自体が分断されていますし、接合に整合性がないので暴力的な印象を受けます。岡上さんの方が緻密ですね。
最後に展覧会の各コーナーの狙いを話しましょう。
はじめの【懺悔室の展望】
岡上さんは1928年生まれなので戦争体験があります。
たとえば女学校に入っても校名が「東洋英和→永和」に変えられたり。
1944年に学徒動員
1945年に繰上卒業
同年5月 東京大空襲
同年7月 高知へ疎開
同年8月 終戦
9月 東京の自宅に戻る…
作品にも戦争が色濃く影を落としています。
《予感》では戦闘機が並列して飛んでいますし
《荒れ野》などそのものずばり。
さらに「水」によるカタストロフの表現が
リアルな現実との対比をさせます。
エルンストと通ずるところです。
【翻弄するミューズたち】
《イヴ》
画面左に並んでいるのは英国議会の議員たち。
それをリンゴを持った女性の半裸体が嘲るようです。
《暗い休日》
《街灯》
【私達は自由よ】
力強くエネルギッシュな女性たち。
瀧口修造は岡上さんを認めながら
「画家ではありません。お嬢様です」
と紹介している。
確かに特定のグループに参加していないし
作家的な工房に所属していないし
他の芸術家たちと交流もしていない。
野心がないようにもみえます。
しかし作品には明らかに強い精神性があります。
そこで展覧会の最後には岡上さんが雑誌に寄せた文章を掲げました。
コラージュを他人の作品の借用、といいながら
「…ただ私はコラージュが其の冷静な解釈の影に幾分の嘲笑を込めた歌としてではなく
この偶然の拘束の上に意志の象を拓くことを願うのです」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ショップでは図録が3240円。
高知県美のときは三万を越える価格の豪華版の
予約受付だけだったので嬉しいことです。
未見の作品のポストカードを購入。
これはどこにあるのでしょう。見てみたい。
4月7日まで。
https:/
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
庭園美術館、お庭の工事が終わってまた開放されるようになったのはうれしい。
もう一週間もすれば桜がきれいなことでしょうね。
幻想世界と現実の境がわからなくなるような展覧会でした。
岡上淑子 フォトコラージュ
〜沈黙の奇蹟〜
@東京都庭園美術館
高知県立美術館での展覧会から１年。
東京での大規模展とは”きてます”ね。
わずか6年ほどの活動期間、文字通り彗星のごとく現れたコラージュ作家。
結婚とともに筆を折られたのが本当に惜しまれます。
【展覧会構成】
第一部 マチネ
�機ゲ�上淑子とモードの世界
高知県美のメインビジュアルだった《招待》
金井美恵子『ピースオブケーキとトゥワイストールドテールズ』の表紙になっている
《彷徨》
今回のメインビジュアルになっている《夜間訪問》などはここに。
関連資料としてモノトーンなディオールのイブニングドレスが展示されていました。
�供ソ藉�の作品
初期はなるほど学校の課題っぽい。
高知県美のタイトル《はるかな旅》
ご本人が一番好きだという《海のレダ》はここに。
�掘ヂ躙�修造とマックス・エルンスト
シュールレアリスム作家と位置付けられていますので
関連展示ということでしょうね。
しかしエルンストの《慈善週間または七大元素》などから
影響を受けたことがよくわかります。
そのほか瀧口修造との往復書簡、1956年の個展案内はがきなど。
�検シ浸罎�らフォトコラージュへ
岡上が切り抜いたパーツや洋裁の型紙など。
�后ゥ灰蕁璽献絨聞�
�此イ修梁彰慙∋駑�
【第二部 ソワレ】
第一幕 懺悔室の展望
廃墟となった東京を経験した岡上の戦争やカタストロフを思わせる作品群。
第二幕 翻弄するミューズたち
《イヴ》のイメージかしら。
第三部 私たちは自由よ
いちばん好きだったコーナー。
《真昼の歌》
まるで庭園美術館で実際にあった出来事のよう
に見えます。
**************
講演会をききました。
沈黙の薔薇〜岡上淑子の視覚世界
神保京子（東京都庭園美術館学芸員）
神保さんは岡上淑子の再評価につながった2000年の
第一生命南ギャラリーの展覧会に係った方なので
今回の展覧会は満を持して、という感じでしょう。
作品を映しながら岡上さんのひととなり、同時代の作家との比較まで幅広くお話されました。
以下概略のメモを。
岡上さんは今年3月3日で91歳、いまもお元気で高知県にお住まいです。
こちらが(写真左)今回の展覧会のメインビジュアルである
《夜間訪問》。
作品タイトルはすべて岡上さんによるものです。
言語的センスもすばらしいですね。
この作品をみると、端正で優雅で破たんのない画面です。
でも人物の頭がなかったりしますので
不気味だとか怖いと思われた方もいるかもしれません。
それがシュールレアリスム、そしてコラージュの特質でもあります。
《幻想》
写真右。
バロック的で饒舌な作品です。
シャンデリアから手が出ているし、人物の顔は馬。
そのほかにも３頭の馬がいます。
これを展覧会の最初におきたい、と思いました。
鏡や窓のアーチがこの美術館・朝香の宮邸の構造にぴったりだからです。
ちなみに、本展のはじまりは馬の出てくるこの作品、最後も馬の登場する作品になっています。
（このバナーのみ撮影可でした。）
《沈黙の奇蹟》
見逃さないでください。大広間から噴水のような彫刻の左側の
小部屋に一つだけ展示しました。
森の中にたたずむ頭部のない人物。
パラシュートについている頭がその人物のものでしょうか。
そして画面左には神主のようなコスチュームの集団が
銃をもって立っています。
この作品が岡上さんの再発見のきっかけになりました。
そしてこの部屋には岡上の２つの詩も展示しています。
《祈祷書の薔薇》
深夜祈祷書の薔薇は目覚める
野生のヴェールに巫女たちは羞恥をかき抱き
大理石の歩道は客席のない舞台に続く
なめらかな足なみは時間の刺青を消してゆく
ちなみにこのトークのタイトル【沈黙の薔薇】はここから拝借しました。
《娘達は》こちらは長いので”娘たち”のつく部分だけを
抜粋して紹介します。
娘達は奇蹟の中で深呼吸する
娘達はそうしてまぶしい心臓を手に入れる
娘達は奇蹟の中で明るい誓をたてる
娘達はそうして無為の花に生氣を与える
（言語的にもシュールだと感じますね)
では岡上さんはどんな方だったのか。
これは恵泉女学園卒業後に羽田空港で撮った写真です。
次の写真。女学園の卒業旅行で友人と。はじける笑顔が印象的です。
次は文化学院の卒業時。
この学校は、男女平等を理念としていたり、皆洋装だったりとユニークな学校でした。
教授陣も与謝野晶子や芥川龍之介、菊池寛などそうそうたるもので
ここで学んだ事が岡上さんに大きな影響を与えたと思います。
愛読書はとおききしたら三島由紀夫や横光利一を挙げられました。
ここの先生方ですね。
そして、フォトコラージュをはじめたのもここに在学していたときでした。
赤ラシャを地紙とした「ちぎり絵」が課題になったのです。
もともと洋裁が盛んで、小学生の頃から人形の服を作っていた岡上にとって
ハサミと糊は手に取りやすい道具だったのでしょう。
これを機会に自分で自由にコラージュ製作を始めました。
素材は海外の雑誌『ヴォーグ』『ハーパーズバザール』『LIFE』等です。
具体的にいつのどの号かは鈴木けい子さんの研究があります。
1947年のディオールのイヴニングドレス2点
バレンシアガのピンクのドレスを参考展示していますが
この時代は物資不足にもかかわらず生地を贅沢に使ったドレスが流行りました。
《女心》
《彷徨》
《水族館》
優雅ですがダイナミックな動きもあります。
《海のレダ》
作品はモノクロなのですが、色々な雑誌からとっていますので黒も色々で立体的に見えます。
ここでコラージュというものを説明しておきましょう。
コラージュはフランス語のcolle(コル・糊 糊付け)からきています。
《西本願寺本三十六家集》国宝 平安末期
これが日本でもっとも古いコラージュです。
装飾的・平面的に紙を継いでいます。
その上に歌が書いてあるわけですね。
ピカソも「パピエ・コレ」を制作しましたし
これはダダイスムのラウル・ハウルマンの作品。政治的批判が込められた作品です。
そしてシュールレアリスムについても少し見ていただきましょう。
1924年のアンドレ・ブルトンの「シュールレアリスム宣言」に始まる20世紀最大の芸術運動です。
超現実主義と訳されますが、決して非現実主義ではないんですね。
あくまでも現実の中にある。日常の割れ目にある現実とでもいいますか。
「はかない美」でなく「痙攣する美」。
フランス語のdepeyser(転地 国外追放)から転じて
本来あるべき文脈から切り離して異なる場所に置き、意味や機能性を撹乱させて驚きに満ちた表現をしようとするものと定義されます。
ロートレ・アモンの「解剖台の上のミシンと蝙蝠傘の偶然の出会いのように美しい」を
マン・レイは写真で作品化しました。
マン・レイ
《おくりもの》
《アングルのヴァイオリン》
メレットオッペンハイム《毛皮の朝食》
いずれもデベイズマン的な表現ですね。
シュールレアリスムは文学や言語にも及びました。
無意識をいかに作り出すか、そのために自動記述法も考え出されました。
紙を４つに折って４人がばらばらに言葉を書いて組み合わせる
コラージュ的な活動も行われました。
《優美なる・死骸は・新しい・酒を・飲むだろう》
という具合です。
マックスエルンストによるコラージュロマンとして
《百頭女》
《カルメル修道院に入ろうとしたある少女の夢》
《慈善週間または七大元素》
を展示しました。
日本においては古賀春江の《海》が代表的ですね。
海と空のほかに別の時空が差し込まれている。
この絵の中には『ラ・ナチュール』からのモチーフもあります。
岡上さんの作品に戻りましょう。
今回出ていませんが
《刻(とき)の干渉》
《羽化》
いずれも頭がありません。
そのため見る人が自己投影できる。
"あなたは私"というように。
普遍性が高まりますし、より解放されて自由度が増す。
これは瀧口修造の書斎の写真ですが、
机の正面の壁、目立つところに岡上さんの作品が飾ってあります。
《変貌の一夜》
瀧口さんのご所望だったとのことです。
他の作家のコラージュを見ておきましょう。
平井輝七《夜の夢想》《生命》
山本(かんすけ)《漂流記》
瑛九《作品Q》
ハンナ・ヘッヒ《English Dancer》
ヘッヒはダダイストなので、顔自体が分断されていますし、接合に整合性がないので暴力的な印象を受けます。岡上さんの方が緻密ですね。
最後に展覧会の各コーナーの狙いを話しましょう。
はじめの【懺悔室の展望】
岡上さんは1928年生まれなので戦争体験があります。
たとえば女学校に入っても校名が「東洋英和→永和」に変えられたり。
1944年に学徒動員
1945年に繰上卒業
同年5月 東京大空襲
同年7月 高知へ疎開
同年8月 終戦
9月 東京の自宅に戻る…
作品にも戦争が色濃く影を落としています。
《予感》では戦闘機が並列して飛んでいますし
《荒れ野》などそのものずばり。
さらに「水」によるカタストロフの表現が
リアルな現実との対比をさせます。
エルンストと通ずるところです。
【翻弄するミューズたち】
《イヴ》
画面左に並んでいるのは英国議会の議員たち。
それをリンゴを持った女性の半裸体が嘲るようです。
《暗い休日》
《街灯》
【私達は自由よ】
力強くエネルギッシュな女性たち。
瀧口修造は岡上さんを認めながら
「画家ではありません。お嬢様です」
と紹介している。
確かに特定のグループに参加していないし
作家的な工房に所属していないし
他の芸術家たちと交流もしていない。
野心がないようにもみえます。
しかし作品には明らかに強い精神性があります。
そこで展覧会の最後には岡上さんが雑誌に寄せた文章を掲げました。
コラージュを他人の作品の借用、といいながら
「…ただ私はコラージュが其の冷静な解釈の影に幾分の嘲笑を込めた歌としてではなく
この偶然の拘束の上に意志の象を拓くことを願うのです」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ショップでは図録が3240円。
高知県美のときは三万を越える価格の豪華版の
予約受付だけだったので嬉しいことです。
未見の作品のポストカードを購入。
これはどこにあるのでしょう。見てみたい。
4月7日まで。
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庭園美術館、お庭の工事が終わってまた開放されるようになったのはうれしい。
もう一週間もすれば桜がきれいなことでしょうね。
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