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2018年11月03日23:01

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京のかたな

開門前にできた行列が５００人超。
帰るころにも入場者列がとぎれない。

京(みやこ)のかたな
～匠の技と雅のこころ～
@京都国立博物館

こんなに混んでいるのは『刀剣乱舞』の影響ですね。
刀はシロウトなので、一気に沢山の刀剣を見られるチャンスだと行ったものの、
あまりの混雑ぶりに驚きました。
《三日月宗近》などは最前列でみるためには５０分待ち。

確かに展示は充実しています。
展示替えがあっていまは後期なのですが、今日見られたものだけで 165点（屏風絵巻など含む）。
うち国宝・・13
重要文化財・59
重要美術品・22
これだけみるとさすがに自分の好みがわかってきます。

銘品を最前列でみることは諦めたのに時間が足りませんでした。
というのは記念講演会に参加したため。

事前の基礎知識のために参照した『BRUTUS』執筆者の対談を聴きました。

対談『京のかたな』総まとめ
橋本麻里（美術ライター・永青文庫副館長）
末兼俊彦（京博主任研究員）

ステージのスクリーンでは末兼さんは（マリリンの下僕）
なんて表示されていましたが…親しさが伝わってきますね。
お若い頃幕張メッセなどにも同行されていたそうです。

【３０万人】

本展が目標とした入場者数です。
でも後半折り返した時点で「ムリっぽい」。

そもそも何故３０万人が目標だったのかというお話から始まりました。

京都国立博物館の現時点入場者数ベストテンはつぎのとおり。
1.平成29年国宝・・・・・・・・・・・・624,493人
2.昭和48年中華人民共和国出土文物展・・372,231
3.平成27年琳派京を彩る・・・・・・・ 327,925
4.昭和51年国宝・・・・・・・・・・・・315,231
5.平成14年大レンブラント展・・・・・・282,178
6.平成2年千利休展・・・・・・・・・・ 263,579
7.昭和44年日本国宝展・・・・・・・・ 252,814
8.平成21年 Theハプスブルク展・・・・・ 247,078
9.平成22年長谷川等伯・・・・・・・・・244,347
10.昭和51年韓国美術五千年展・・・・・243,326

意外なことに『鳥獣戯画』は入っていません。
あんなに並んだのに。
それどころかレンブラントにハプスブルク？？
そういえば『スターウォーズ展』とかもやってたなぁ。
（ハプスブルクに゛The゛ってヘンですよねえ、と末兼さん）

つまり、３０万人動員すれば５位になれたということ。

末「そんなに数字が欲しいのか、って？欲しいよ！」
京博は独立行政法人なので。

末「（今回は）後期になって入場者数が激減したんです。　
みなさん゛あんなに並んだのに゛って思うでしょ？　
でも案外何回も戻ってみたりしているので混んでいるようにみえるだけ。　
それはこちらがオススメしたせいもあるのですが」

末「あと、絵巻ものも人が進まないので混んでいるように見えますね。　
ベストテンに『高山寺（鳥獣戯画）』も『雪舟』も入ってないでしょ。
『若冲』も京博でやったときの入場者は９万人でした。
都美はすごかったですけど」

末「そもそも京博や奈良博の役割は第一に文化財を守ることなんです。
明治の廃仏毀釈でへんに忖度したため多くの文化財が失われた。
興福寺の三重塔まで売りにでましたからね。その反省で」

末「見せる事だけが一次目的ではない。
　そもそも展示のあとでは背景に敷いた紙が脱色するほど傷んでしまう。
　ではなぜ見せるのか？
　見ないと無関心になってお金を出してくれなくなるからです」
橋「お布施ですか（笑）
　ルーブル美術館ではいつ行ってもモナリザと自撮りできますけど
　日本美術の出しっぱなしはムリですよね」
末「東京国立博物館では、会期を４週間と短めにしてしょっちゅう展示替えする。
　そうしてまわしているんです」

橋「京博でもお布施？はあつめているのでしょう？」
末「それでも修理案件だけで５０億くらいあってとてもとても」

【京のかたな展について】

橋「では末兼さんに少しお休みいただいて、美術展とメディアのかかわり
　についてお話しします」

橋｢美術のメディアというのは実はとても少ないのです。　
芸術新潮とか美術手帖とか・・・
そして大きな出版社では配置転換もありますから　
なかなか専門家がそだたない。　
よって独自に企画するとか独自に展覧会特集をつくることが難しい。　
フリーランスの美術ライターがそこで登場するのですが、好きすぎてそこに頼りがち｣

橋｢今回の『BRUTUS』ですが、可処分所得の多い都市在住の男性カルチャー誌です。
それがときどき美術特集をやる。
なぜかというと、現代美術の特集にはヴィトンやエルメスといったブランドの広告がとれるからです。
それがあるとき
『きみはフェルメールを見たか』
というのをやった。
それがよく売れたのでフォーマットができたのです。
以後、西洋美術では藤原えりみさん、
日本美術では私橋本麻里が書き手になりました。
でもその二人で済んでしまうんですね｣

橋「平成２８年の国宝展のBRUTUSはよく売れました。　
そのころ末兼さんは？」
タイでハードワークだったようです。

やがて2016年に永青文庫の《歌仙兼定》が登場します。
BRUTUS でそのグラビアページで兼定とともに写っているのが末兼さん。

橋「あのとき初めて人間に持たれた刀のかっこよさを知りました」
美術館のガラスケースのなかではわからない美しさ。

橋「初心者向けのいい参考文献はありませんか？とお訊きしたら」
末「ねーよ」・・・

『日本刀の鑑賞基礎知識』という大変クラシックなものしかない。

よろしい。ならばBRUTUSで作ろうと。

コンセプト。
1.わかる　楽しい　かっこいい
2.間口は大きく
　（刀剣乱舞ファンだけでなく、たとえばスターウォーズファンは？）
3.ニワカ大歓迎。作り手もニワカ。
4.人間と刀のグラビアをかっこよく
5.BRUTUS名物脱力Ｑ＆Ａ　　　（実は書きたい内容から質問を考えた）
6.背後の物語を紹介する
7.京博・刀剣乱舞・ＪＲ東海と全力コラボ

【うらばなし】

いやあ人が持っていると刀はサイズ感もわかるしいいですよねえ、とオフショットを紹介しながら
（諸般の事情？でモデルは末兼さん）

末「でもこそこそ聞こえてきたのは
・今日も同じスーツだった
・ピンストライプばかり
・いっちょうらなの？・・・・持ってるよ！！（怒）」

『男性社会におけるファッション』のフリップを映す末兼さん。
会場爆笑。

なんですかそれ、という橋本さんをふりきって
『理論・伝統・規則』
『色ーーネイビー/グレー　
柄ーーソリッド（無地）/ストライプ（縞）/チェック（格子）』
と次々とフリップを繰り出す末兼さん。

「スーツ姿がかっこいい彼の私服がサイアク！」という指摘？には
ロバートダウニーJr やダニエルクレイヴのびしっとスーツとデレデレ私服の画像。

クレリックシャツは本来汚れを防ぐツギハギルックであり正装たりえなかったが　
→→チャールズ皇太子が結婚式で着用し正装ＯＫとなった

日本の閣僚がモーニングで就任夜会　
→→本来昼の儀式なのでOKとなった

末「集団にとけこむためにファッションは使われる」
橋「秀吉が好きだったから井戸茶碗、利休が好きだったから楽茶碗ができたのだし　
毛利輝元は刀剣に興味がなかったけれど秀吉が好きだったから上洛前に勉強した」

どこまで脱線するかと思われたおはなしが漸く刀剣に戻ってきました。

【Ｑ＆Ａ】

あらかじめtwitterで質問をつのっていたのだそう。

問い。
オシの刀について語って下さい
答え。
研究者は全体を愛するもの。なので金属文化全体がオシ。

問い。
刀剣研究の未來は。
答え。
ダメでしょうねえ。教えをうけた隅谷先生に２１年ぶりの展覧会をみせたかったしコラムも書いていただきたかったのですが亡くなられましたし。
最後の山城鍛冶だった流さん（彫刻家）も亡くなって間に合わなかった。
もう少し早ければ・・・でもそうすると今の刀剣ブームにのれなかったし。タイミングは難しいです。

問い。
今後の刀剣展覧会の切り口は
答え。
今回は『京のかたな』だから、備中とか、九州とか、各地の刀の展覧会はできるでしょうね。
京博はもうやんないよ。ネタがないもん。

問い。
後期展示のみどころは。
答え。
前期にもいったけど、刀剣８００年の歴史を１日で体験できることですね。

【おまけ・トンデモ宇宙論】

ウィトルウィウス人体図のように刀剣にも類した刀図があるそう。
・陰の太刀は演に内接し、陽の太刀は概説する
・きっさきの大中小は演に内接する　etc.

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今回の展覧会は若い女性がとにかく一杯でした。
このなかから研究者が育つといいですね。
刀剣乱舞バージョンのとらりんも嬉しそう。