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2018年06月02日23:46
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視覚芸術百態
２フロア、全館を使ったコレクション展示です。 メインビジュアルは中原浩大の《レゴ》。 裏側はつるっつるの絶壁でそれはそれは面白い。
視覚芸術百態
19のテーマによる196の作品
@国立国際美術館
会場構成
(実際の並び順による)
【B3F】
04空間
05光
06動き
10タイトル
08視点
07スケール
03素材と形態
09台座と支持体
02色彩
01点・線・面
【B2F】
11-1人
13自然
11-2人
17ミュージアム
16流用
15文学
14物
12動物
18反復
19偶然
見てお分かりの通り、展示はカテゴリー番号順になっていません。
なぜでしょうね。
「点・線・面」を1番目のカテゴリーにしたのは
バーネット・ニューマンの《夜の女王�機佞鬟螢好箸虜能蕕肪屬�たかったから
…なんてことはないか(笑)。
もちろんピカソやジャコメッティといった代表的なコレクションも出ています。
＊＊＊＊＊＊＊
担当されたキュレーターさんのお話をききました。 以下、流れのメモ。
作品と類似:コレクション展のキュレーションについて
講師:中西博之主任研究員
中西氏は国立国際美術館ニュースの６月１日号にも関連記事を
書いていらっしゃいますのでその説明から。
【所蔵作品展について】
所蔵作品展は
１．収蔵品であるという事実が様々に営業日する。
たとえば作品を借りる場合は作り手の同意が必要だったり
そのようなことはないのがプラスである。
それと反対に「何かをつけ加える」ことは期待できない。
２．借用により展覧会と互いに補完しあう関係にある。
ただし前提として、そもそも所蔵作品展は地味菜存在であり
位置づけが複雑である。
もっとも豊かな所蔵品があれば〜ルーブルのように〜
所蔵品をみせることがメインであることもある。
日本の公立美術館ではなかなかそうはいかないが。
【よくある質問】
プレス向けの内覧会のときにもよく訊かれた質問にさきにお答えします。
今回の会場には小さな壁が沢山ある、その意図です。
今回のように各部屋に複数作家の複数作品が並ぶような場合には
小さな部屋の方が展示しやすいのです。
これは経験則です。
部屋の４隅のうちつながってエル字型になっているのは１カ所だけ、
３つの隅が幅１．８mほどの出入り口に解放されています。
そうするとエル字型の壁と直線の壁に全く違う作品を展示できる。
コの字型だと同じものを並べないといけない。
一つの部屋に周囲の壁とは独立した１２〜１３ｍの
３つの壁を並行に並べるのも同じです。
周囲の壁とかならずしも相性があわない作品でも並べられる。
反対に以前おこなった森山大道さんの個展では、同一作家の限られた時代に
限定されていましたので、閉じた部屋で作品を連続して並べました。
会場の構成についてはそんなところです。
【カタログ】
カタログについても説明しておきましょう。
今回は写真を何度も撮り直しました。
たとえばポスターのメインになったレゴの作品ですが、これまで
ある画廊で撮られた写真しかありませんでした。
そこで今回、どこで撮ったかを観るひとに考えさせないように
背景になにもない写真を撮りました。
高松次郎の《点》
これは作品保護のために額装のほかアクリルの箱に入っているのですが
カタログの写真では額のない作品だけの画像に加工しています。
工藤哲巳の《二つの軸とコミュニケーション》
ではカタログのとなりあう
ぺージとの関係も考慮しました。
そのように、展覧会を見やすく、カタログも見やく、
を心がけています。
【コレクション展のキュレーション】
では本題にはいります。
そもそも作品の配置に関しては、学術的・専門的な
バックボーンがありません。
では趣味的なものか
センスなのか
経験か
（現存作家なら）作家の指示か
そして美術というものは本質的に学際的で
あらゆる視覚情報と関連していますし
文学や建築といった他の分野の方法論を援用出来る
可能性があります。
そこで今回は認知科学の専門家に文をよせていただきました。
鈴木宏昭氏の『類似と思考』に示唆的な部分があったからです。
・作品間の関係次第で鑑賞者の思考内容な変化する
・、作品の類似関係と鑑賞者の思考内容の関係は可能性として考えてみる事は可能であるしそれを行う必要がある
・学習者は白紙の状態から学習を始めるわけではないということである。
過去に学習した事項を巧みに、しかし時には謝って用いながら。
・アナロジー的思考の複雑さには３つのレベルがある。
例えば、今回の展覧会にあったように
「枕の絵」 と「樹脂でできた枕のようなもの」 といった「ものが同じ」というレベルから
関係性や特製が同じ、というレベル
より高次な 「よくよく考えてみれば共通項があるかも」というレベルまで。
ただし絵画や音楽のような芸術には、その複雑さゆえ、アナロジーがどれほど
貢献しうるかということにはふれていません。
アナロジーの利用には常に批判的な分析が大切なのです。
…以上が、カタログの文章について説明になります。
（カタログの論説をお読み下さい）
【学際的であること】
ここでは
『本を読むときに何が起きているのか』（ピーター・メンデルサンド）
から紹介します。
言葉は意味を含むがもっと重要なのは言葉が意味の有効性を
高めていることである（p302）
今回の展覧会では１９の言葉をテーマとし、
その言葉と複数作品によって逆にテーマも浮き彫りになることを目指しています。
たとえば
「色彩」などのテーマは作品リストに載せていますが
展示室においてテーマの説明はあえて掲げていません。
それは所蔵作品展でやるべきことではないと思う。
本を読みながら私たちは登場人物のイメージをぬりかえていく。
それは展覧会において一度観た作品を見直すことに似ています。
さらに
『ヴィジュアル・アナロジー―つなぐ技術としての人間意識』（バーバラ マリア・スタフォード）
をひきながら
差異を細かく追うより類比を、というのです。
模範的な推理においてコンテクストこそが決定役を果たす（ｐ３１）
アナロジー化のよいところは遠くの人々や他の時代を我々の一部にしてくれること。
近似ものになれば理解できるようになるのです。
歴史にかかわる各研究分野は現在危機的状態でないものはなく、美術史も例外でない（ｐ１８９）
所蔵作品展における展示方法は
長く 「時代別」 「地域別」 になされてきましたが
現代の美術作品を対象とする場合、それがうまくいかなくなっています。
一つの作品のなかに、いくつもの価値観が併存し
様々な地域、時代の価値観と繋がっているのです。
そこで時代・地域 といった尺度に替わる展示方法として考えられるのが
「テーマ別」 という方法なのです。
既に２０１３年に開催したテーマ収蔵品展は、歴史的な方法と想像の現実が
かみあわない現状をふまえ
美術の現在をリアルなものとして呈示しようとした試みであり、今回展は
その増補改訂版です。
今回の１９のテーマは２０１６年８月から検討してきました。
その過程でなくなったものもあります。
「コラージュ」 「ストーリー」 「ヌード」 などは消えました。
美術とは本質的に永遠に未完であり、
展示について絶対的・恒久的な方法は存在しません。
そうこころえたうえで、実現する意味がある計画ができあがるまで
情報を入手しつつ考え続ける事が必要なのではないかと思います。
収蔵品は増え続け
作品の解釈は変化し
人や時代も変化していくのですから。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
Q＆A
問い。
作品そのもののもつ意味は作者から説明されないのですか。
答え。
今回、作家とのコンタクトは著作権を得る確認のみで
作品の意味は訊いていません。
問い。
今回認知科学を方法論としたということはわかりました。
他の方法論も考えられているのですか。
答え。
方法論ではなく、今回も作品選択は伝統的な方法で行っているが
説明として認知科学が援用できると考えています。
アーティストがやれば許容されることですが
私たちは何らかの根拠を示さないといけないからです。
作品選択ということではモダニズム系は選びやすいのですが
「ストーリー」はテーマから消したので。
作品によってはこうした展示が友好なこともある、ということです。
問い。
感性的な理論はないのですか。
答え。
選定や展示に感性的なものは考えますが、今回のように
作家やジャンルが広い場合は混乱しないようにしようと考えます。
感性的な要素は完成に近いレベルでの調整にとどめました。
展覧会には様々な知識をもったひとがくることが想定されます。
そのみかたが可能かというグルーピングを考えます。
セクション作りに完成を使うことは試みていません。
問い。
まず、今回新収蔵品が５０余りあるといいますが、それが示されていません。
次に、５つのセクションにわたって高松次郎の作品がありましたが、その意図は。
また、カリン・ザンダーは直近の展覧会 『トラベラー・まだ見ぬ地を踏むために』にも出ていたが。
答え。
新収蔵品は確かにこれ、と示していません。いまからではちょっと・・・
高松次郎については、３年前に高松の大きな展覧会をやったこともあって
そうすると、買いませんか、とかいう話がきたりするのです。
それを見せようと。
カリンは。たとえば収蔵品から２００点をえらんで作品集をつくる、というときには
選ばないと思います。よくきて下さるかたにも見た事がないものを、と心がけていますが。
問い。
テーマとしてコラージュは省いた、とのことですが、私は
各コーナーの作品が集まってひとつのコラージュをつくっているように思いました。
答え。
コラージュはない、というのは作り手側のいいかたで。
ご覧になる方がそう見られるのは構いません。
問い。
認知科学がテーマ展示の根拠づけということはわかりました。
先行研究へのひもづけ、先行展示とのひもづけはどうですか。
答え。 それは研究者の領域ですね。私は前例を網羅的に調べてはいませんし その必要性はないと思います。 「展覧会史」 という研究もありうるとは思いますが。 たとえばテートモダンのオープン展示などは歴史に残るものでした。 そのほかMOMAなどのコレクション展示にも歴史的なものはあります。
問い。
作品の並べ方のねらいを具体的に説明してください。
答え。
どこかが突出する印象を与えないよう、どこも８０点以上にと心がけたので
具体的に説明するのは難しいですね・・・
｢スケール｣で説明しましょうか。
これは
三木富雄の大きな耳の彫刻《EAR》をきっかけに
となりにヴォルスの繊細な版画《耳》を並べ
それと直角の壁には、久しぶりに展示する
ジム・ダインの《帽子》で描かれた帽子と立体の帽子でサイズ感を出し
トーマス・ルフの巨大なポートレイトをその向かいに配置しました。
そして『美術館ニュース』の裏表紙に掲載されている カバコフの
《天使と出会う方法》ではミニチュアの人物と天使。
そこまでいったところで問題はローリー・シモンズの写真
《ペイルブルー・リビング・ルーム》。
さてこれは実際にはどのような大きさのものでしょうか。
わからないでしょう？そんな面白さをねらっています。
問い。
今回は収蔵作品展ですが、次回のプーシキン展のような場合は
先方から展示方法について指示があるのですか。
答え。
巡回する展覧会で作品を並べるのは各々の担当です。
先方からのチェックは入ります。
問い。
欠落を感じさせないようにするとか逆に雑音を消すとか。
それぞれのデメリットは。
答え。
優先するのは、観るひとに｢このテーマならこの作品がないと｣
という状況をつくりたくないということです。
問い。
前回展の｢トラベラー｣も収蔵作品展でした。
今回とあわせてもまだ出していない収蔵品はどのくらいあるのですか。
答え。
ポスターや版画なども入れれば８０００点以上あります。
問い。
コンセプト、コンテクスト、言葉がよくわかりません。
コンセプトは「ねらい」でいいですか。「テーマ」は「主題」？
答え。 コンセプト、という言葉自体は 「概念」でしょうが コンテクストも同じようにアートの世界で常用される言葉です。 言葉の意味は文章のなかで使われて定まるものなのでそれだけですと・・ チラシには 「１９のテーマによる１９６の作品」 とうたっています。 チラシの時点で１００％理解されることが必要だとは思いません。 多少の誤解があっても前向きにとらえられる言葉遣いがよいと考えます。
問い。 写真撮影ができるのは展示風景だといいますが、作家の許可があれば 作品写真もいいのですか。
答え。 撮影については許可証と一緒にお渡しする文章を読んでいただいて 何が風景か、などは個々人の方々におまかせしています。 （商業的利用の禁止などがかかれています） 基本的に美術館に著作権はありませんので。
問い 展覧会タイトル、 ｢視覚芸術｣ という言葉へのこだわりは。
答え。 ｢美術百態｣ でもよかったのでしょうが。 自分は音楽もいいけれどやはり見るものが面白いと思っているので。 ｢視覚芸術｣ という言葉も日常的に受け容れられているかと。
7月1日まで。
http://
視覚芸術百態
19のテーマによる196の作品
@国立国際美術館
会場構成
(実際の並び順による)
【B3F】
04空間
05光
06動き
10タイトル
08視点
07スケール
03素材と形態
09台座と支持体
02色彩
01点・線・面
【B2F】
11-1人
13自然
11-2人
17ミュージアム
16流用
15文学
14物
12動物
18反復
19偶然
見てお分かりの通り、展示はカテゴリー番号順になっていません。
なぜでしょうね。
「点・線・面」を1番目のカテゴリーにしたのは
バーネット・ニューマンの《夜の女王�機佞鬟螢好箸虜能蕕肪屬�たかったから
…なんてことはないか(笑)。
もちろんピカソやジャコメッティといった代表的なコレクションも出ています。
＊＊＊＊＊＊＊
担当されたキュレーターさんのお話をききました。 以下、流れのメモ。
作品と類似:コレクション展のキュレーションについて
講師:中西博之主任研究員
中西氏は国立国際美術館ニュースの６月１日号にも関連記事を
書いていらっしゃいますのでその説明から。
【所蔵作品展について】
所蔵作品展は
１．収蔵品であるという事実が様々に営業日する。
たとえば作品を借りる場合は作り手の同意が必要だったり
そのようなことはないのがプラスである。
それと反対に「何かをつけ加える」ことは期待できない。
２．借用により展覧会と互いに補完しあう関係にある。
ただし前提として、そもそも所蔵作品展は地味菜存在であり
位置づけが複雑である。
もっとも豊かな所蔵品があれば〜ルーブルのように〜
所蔵品をみせることがメインであることもある。
日本の公立美術館ではなかなかそうはいかないが。
【よくある質問】
プレス向けの内覧会のときにもよく訊かれた質問にさきにお答えします。
今回の会場には小さな壁が沢山ある、その意図です。
今回のように各部屋に複数作家の複数作品が並ぶような場合には
小さな部屋の方が展示しやすいのです。
これは経験則です。
部屋の４隅のうちつながってエル字型になっているのは１カ所だけ、
３つの隅が幅１．８mほどの出入り口に解放されています。
そうするとエル字型の壁と直線の壁に全く違う作品を展示できる。
コの字型だと同じものを並べないといけない。
一つの部屋に周囲の壁とは独立した１２〜１３ｍの
３つの壁を並行に並べるのも同じです。
周囲の壁とかならずしも相性があわない作品でも並べられる。
反対に以前おこなった森山大道さんの個展では、同一作家の限られた時代に
限定されていましたので、閉じた部屋で作品を連続して並べました。
会場の構成についてはそんなところです。
【カタログ】
カタログについても説明しておきましょう。
今回は写真を何度も撮り直しました。
たとえばポスターのメインになったレゴの作品ですが、これまで
ある画廊で撮られた写真しかありませんでした。
そこで今回、どこで撮ったかを観るひとに考えさせないように
背景になにもない写真を撮りました。
高松次郎の《点》
これは作品保護のために額装のほかアクリルの箱に入っているのですが
カタログの写真では額のない作品だけの画像に加工しています。
工藤哲巳の《二つの軸とコミュニケーション》
ではカタログのとなりあう
ぺージとの関係も考慮しました。
そのように、展覧会を見やすく、カタログも見やく、
を心がけています。
【コレクション展のキュレーション】
では本題にはいります。
そもそも作品の配置に関しては、学術的・専門的な
バックボーンがありません。
では趣味的なものか
センスなのか
経験か
（現存作家なら）作家の指示か
そして美術というものは本質的に学際的で
あらゆる視覚情報と関連していますし
文学や建築といった他の分野の方法論を援用出来る
可能性があります。
そこで今回は認知科学の専門家に文をよせていただきました。
鈴木宏昭氏の『類似と思考』に示唆的な部分があったからです。
・作品間の関係次第で鑑賞者の思考内容な変化する
・、作品の類似関係と鑑賞者の思考内容の関係は可能性として考えてみる事は可能であるしそれを行う必要がある
・学習者は白紙の状態から学習を始めるわけではないということである。
過去に学習した事項を巧みに、しかし時には謝って用いながら。
・アナロジー的思考の複雑さには３つのレベルがある。
例えば、今回の展覧会にあったように
「枕の絵」 と「樹脂でできた枕のようなもの」 といった「ものが同じ」というレベルから
関係性や特製が同じ、というレベル
より高次な 「よくよく考えてみれば共通項があるかも」というレベルまで。
ただし絵画や音楽のような芸術には、その複雑さゆえ、アナロジーがどれほど
貢献しうるかということにはふれていません。
アナロジーの利用には常に批判的な分析が大切なのです。
…以上が、カタログの文章について説明になります。
（カタログの論説をお読み下さい）
【学際的であること】
ここでは
『本を読むときに何が起きているのか』（ピーター・メンデルサンド）
から紹介します。
言葉は意味を含むがもっと重要なのは言葉が意味の有効性を
高めていることである（p302）
今回の展覧会では１９の言葉をテーマとし、
その言葉と複数作品によって逆にテーマも浮き彫りになることを目指しています。
たとえば
「色彩」などのテーマは作品リストに載せていますが
展示室においてテーマの説明はあえて掲げていません。
それは所蔵作品展でやるべきことではないと思う。
本を読みながら私たちは登場人物のイメージをぬりかえていく。
それは展覧会において一度観た作品を見直すことに似ています。
さらに
『ヴィジュアル・アナロジー―つなぐ技術としての人間意識』（バーバラ マリア・スタフォード）
をひきながら
差異を細かく追うより類比を、というのです。
模範的な推理においてコンテクストこそが決定役を果たす（ｐ３１）
アナロジー化のよいところは遠くの人々や他の時代を我々の一部にしてくれること。
近似ものになれば理解できるようになるのです。
歴史にかかわる各研究分野は現在危機的状態でないものはなく、美術史も例外でない（ｐ１８９）
所蔵作品展における展示方法は
長く 「時代別」 「地域別」 になされてきましたが
現代の美術作品を対象とする場合、それがうまくいかなくなっています。
一つの作品のなかに、いくつもの価値観が併存し
様々な地域、時代の価値観と繋がっているのです。
そこで時代・地域 といった尺度に替わる展示方法として考えられるのが
「テーマ別」 という方法なのです。
既に２０１３年に開催したテーマ収蔵品展は、歴史的な方法と想像の現実が
かみあわない現状をふまえ
美術の現在をリアルなものとして呈示しようとした試みであり、今回展は
その増補改訂版です。
今回の１９のテーマは２０１６年８月から検討してきました。
その過程でなくなったものもあります。
「コラージュ」 「ストーリー」 「ヌード」 などは消えました。
美術とは本質的に永遠に未完であり、
展示について絶対的・恒久的な方法は存在しません。
そうこころえたうえで、実現する意味がある計画ができあがるまで
情報を入手しつつ考え続ける事が必要なのではないかと思います。
収蔵品は増え続け
作品の解釈は変化し
人や時代も変化していくのですから。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
Q＆A
問い。
作品そのもののもつ意味は作者から説明されないのですか。
答え。
今回、作家とのコンタクトは著作権を得る確認のみで
作品の意味は訊いていません。
問い。
今回認知科学を方法論としたということはわかりました。
他の方法論も考えられているのですか。
答え。
方法論ではなく、今回も作品選択は伝統的な方法で行っているが
説明として認知科学が援用できると考えています。
アーティストがやれば許容されることですが
私たちは何らかの根拠を示さないといけないからです。
作品選択ということではモダニズム系は選びやすいのですが
「ストーリー」はテーマから消したので。
作品によってはこうした展示が友好なこともある、ということです。
問い。
感性的な理論はないのですか。
答え。
選定や展示に感性的なものは考えますが、今回のように
作家やジャンルが広い場合は混乱しないようにしようと考えます。
感性的な要素は完成に近いレベルでの調整にとどめました。
展覧会には様々な知識をもったひとがくることが想定されます。
そのみかたが可能かというグルーピングを考えます。
セクション作りに完成を使うことは試みていません。
問い。
まず、今回新収蔵品が５０余りあるといいますが、それが示されていません。
次に、５つのセクションにわたって高松次郎の作品がありましたが、その意図は。
また、カリン・ザンダーは直近の展覧会 『トラベラー・まだ見ぬ地を踏むために』にも出ていたが。
答え。
新収蔵品は確かにこれ、と示していません。いまからではちょっと・・・
高松次郎については、３年前に高松の大きな展覧会をやったこともあって
そうすると、買いませんか、とかいう話がきたりするのです。
それを見せようと。
カリンは。たとえば収蔵品から２００点をえらんで作品集をつくる、というときには
選ばないと思います。よくきて下さるかたにも見た事がないものを、と心がけていますが。
問い。
テーマとしてコラージュは省いた、とのことですが、私は
各コーナーの作品が集まってひとつのコラージュをつくっているように思いました。
答え。
コラージュはない、というのは作り手側のいいかたで。
ご覧になる方がそう見られるのは構いません。
問い。
認知科学がテーマ展示の根拠づけということはわかりました。
先行研究へのひもづけ、先行展示とのひもづけはどうですか。
答え。 それは研究者の領域ですね。私は前例を網羅的に調べてはいませんし その必要性はないと思います。 「展覧会史」 という研究もありうるとは思いますが。 たとえばテートモダンのオープン展示などは歴史に残るものでした。 そのほかMOMAなどのコレクション展示にも歴史的なものはあります。
問い。
作品の並べ方のねらいを具体的に説明してください。
答え。
どこかが突出する印象を与えないよう、どこも８０点以上にと心がけたので
具体的に説明するのは難しいですね・・・
｢スケール｣で説明しましょうか。
これは
三木富雄の大きな耳の彫刻《EAR》をきっかけに
となりにヴォルスの繊細な版画《耳》を並べ
それと直角の壁には、久しぶりに展示する
ジム・ダインの《帽子》で描かれた帽子と立体の帽子でサイズ感を出し
トーマス・ルフの巨大なポートレイトをその向かいに配置しました。
そして『美術館ニュース』の裏表紙に掲載されている カバコフの
《天使と出会う方法》ではミニチュアの人物と天使。
そこまでいったところで問題はローリー・シモンズの写真
《ペイルブルー・リビング・ルーム》。
さてこれは実際にはどのような大きさのものでしょうか。
わからないでしょう？そんな面白さをねらっています。
問い。
今回は収蔵作品展ですが、次回のプーシキン展のような場合は
先方から展示方法について指示があるのですか。
答え。
巡回する展覧会で作品を並べるのは各々の担当です。
先方からのチェックは入ります。
問い。
欠落を感じさせないようにするとか逆に雑音を消すとか。
それぞれのデメリットは。
答え。
優先するのは、観るひとに｢このテーマならこの作品がないと｣
という状況をつくりたくないということです。
問い。
前回展の｢トラベラー｣も収蔵作品展でした。
今回とあわせてもまだ出していない収蔵品はどのくらいあるのですか。
答え。
ポスターや版画なども入れれば８０００点以上あります。
問い。
コンセプト、コンテクスト、言葉がよくわかりません。
コンセプトは「ねらい」でいいですか。「テーマ」は「主題」？
答え。 コンセプト、という言葉自体は 「概念」でしょうが コンテクストも同じようにアートの世界で常用される言葉です。 言葉の意味は文章のなかで使われて定まるものなのでそれだけですと・・ チラシには 「１９のテーマによる１９６の作品」 とうたっています。 チラシの時点で１００％理解されることが必要だとは思いません。 多少の誤解があっても前向きにとらえられる言葉遣いがよいと考えます。
問い。 写真撮影ができるのは展示風景だといいますが、作家の許可があれば 作品写真もいいのですか。
答え。 撮影については許可証と一緒にお渡しする文章を読んでいただいて 何が風景か、などは個々人の方々におまかせしています。 （商業的利用の禁止などがかかれています） 基本的に美術館に著作権はありませんので。
問い 展覧会タイトル、 ｢視覚芸術｣ という言葉へのこだわりは。
答え。 ｢美術百態｣ でもよかったのでしょうが。 自分は音楽もいいけれどやはり見るものが面白いと思っているので。 ｢視覚芸術｣ という言葉も日常的に受け容れられているかと。
7月1日まで。
http://
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