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2018年04月30日10:37

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村野藤吾

昨年秋の 生きた建築ミュージアム(イケフェス)の折には
平日開催だったため見逃した
村野藤吾建築をめぐるキャンパス見学会に参加しました。


関西大学博物館ミュージアム講座
大阪の近現代建築とその楽しみ方
第1回 関西大学の村野建築



関大千里キャンパスは大阪北部の丘陵地帯に広がります。
市内とは別世界、滴るような緑でした。

【講演会】
講座前半は関大准教授・橋寺知子氏による講演。

村野藤吾(1891〜1984)といえば大阪の近代建築を背負ってきた存在です。
渡辺節建築事務所に属していた時代の《綿業会館》、
独立してからの《そごう心斎橋》《大阪歌舞伎座》《京都都ホテル》など名建築も多く
戦後の建築で多くの重要文化財を創り出しました。
かとおもえば大阪駅前の巨大な換気筒など奇抜なものも残しています。

その中でも関西大学の建物群は、その最盛期に30年にわたって関わり続けたことが特徴です。

かつては付属中高のものを含め37もあった建物のうち
現存するのは13。

キャンパスの拡張とともに作られていった建物を映像とともに説明されました。

そもそも関大は1886年(明治19)設立ですが
戦後の新制大学への転換や施設の充実を目指す時期に村野が登場します。

お話の中に出てきた建物のうち、いくつかのメモ。

◆大学院学舎 大学ホール(1949現存せず)
白い壁に赤いスパニッシュ瓦の勾配屋根という美しい建物。
ご本人もお気に入りだったそう。

◆法文学舎改築(1956頃)
水平線が強調された、いわゆる「モダニズム」の建物。
大学院に比べて大味のようですが、それは求められるキャパシティの違いから当然ともいえます。
欧米のキャンパスにならい、吹き放ちのピロティから入ると中庭を囲んで教室が配置されています。
その窓は1階がやや奥まり、2/3階が壁面フラット、4階は窓の下に出っ張りがあったりと微妙なディテールに凝っています。
このような窓の変化は岩崎記念館にも見られます。

◆簡文館
現在は博物館ですが当初は図書館でした。
フォト


円形です。
グラウンドの円形観覧席からこの建物を臨むアングルが
上り坂の地形とあいまって千里山キャンパスの象徴的な存在です。
(写真右下は村野による木造の千里庵)

◆外苑
建物というより配置の問題ですが
1950年に《千里山遊園》敷地を取得すると(現在は幼稚園や中高があります)
その園路や広場等を活かした配置を行いました。

ここ以外にも小路や路地のような抜け道的空間があり、歩いていて楽しい。

◆村野藤吾が語った大学建築

《Approach》という竹中工務店のPR誌(1965春号)の記事から
いくつかのキーワードを紹介されました。

「建物の学生に与える影響力」

「外部空間の整理」
→最初から全て一気に計画したのではなく敷地拡張にあわせていった。

「自然のもの」
→誠志館の出口は整然とした階段でなくモルタルのぐしゃっとした塊だった。
いまではバリアフリー的に考えられない遊び心。

「工費」
→残念ながら関大の仕事は資金が豊かではありませんでした。
そのなかで最適なものを選択するうちに学舎毎のデザインの違いが出てきたらしく。

2つめの図書館が円形になったのは多数の方形案も検討した結果。
どの学部に正面を向けるか各学部からの要求に苦慮したところもあって。
結果として光線の当たり具合も季節や時間、天気で変わる美しい建物となりました。
フォト



「圧迫したり圧倒的な形をとったりすることを出来るだけ避けたい」
→幅100mもの直線的に続く建物では、壁が地面にすとんと接しているのでなく、なんと地面と壁の間に隙間を開けたりしています。
(写真右下)

「陰のある建物」
「やわらかい感じ」
「強さと弱さをぶっつけないで緩衝地帯を作る」・・・


おぼろげながらコンセプトがわかってきたところで見学会。

【階段ツアー】

村野藤吾の階段には熱烈なファンも多く一つひとつが個性的です。
裏側まで美しく、手すりも一つひとつ違っていて。
その階段を堪能しました。

フォト



普通の折り返し階段に対して
長ーく降りて180度回って3段降りて長ーく降りるとか

階段と窓の高さのピッチが揃っていないとか(どうやって窓を開けるのか?)

階段室がガラスで囲まれて見えているとか

階段に囲まれた空中トイレとか(有名な関大七不思議)


1番いいなと思ったのは、階段を上がると広い広い踊り場があり、
その半分の幅は折り返して数段上がって右の教室へ行くのに
残り半分はそのままの高さで左の教室への廊下へ繋がっている。
よって上と下で話ができる。
さらに左の廊下は折り返して階段に繋がる踊り場があるので
そこからも右の教室へ行く階段にいる人と視線が合う。
文字にするとむちゃややこしいのですが
なんだか物語のある空間だという気がしました。

耐震補強のため多くの建物に鉄骨がはめられているのが無惨ですが
現役で使われているのはいいですねえ。

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