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2017年12月29日21:24

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深夜、重い映画を観た。

 昨夜、年賀状の出し忘れがないかとぼんやり考えていて、古い知己である有名女流カメラマンに年賀状を出してみようと思った。今月、印刷博物館で開催中の「世界のブックデザイン展」を友人と見に行った際、彼との会話で印刷に於けるダブルトーンの話題になった。風合いのあるモノクロームの写真集ではしばしば使われる手法で、特色のグレー+黒、特色のセピア色+黒というような2色分解をして2色で印刷するのがダブルトーンだ。素人目には、綺麗に刷られたモノクロ写真にしか見えない。で、友人にその女流カメラマンの名を挙げて、「来年は美しい写真集を作ってみようかしら」などと話したのだった。
 彼女の住所はiPhoneの住所録(「連絡先)に載っていたが、かれこれ10年以上、ハガキなどの郵便物を送ったことがない。だから念のために電話をして住所確認をしたら、なぜだかいたく間の抜けた私の電話を喜んでくれ、「ぜひ、年賀状をちょうだい。それと、観て欲しいものがあるの」と言われる。
 映画を撮ったの。内容は簡単に言うとネットの自殺サークルなんだけど、公開する劇場を探していたところで座間の事件が起きちゃった。でもそんなことはともかく、風さんにはぜひ観て欲しいし、協力して欲しいこともあるのよ。風さん、文章書ける人だもん。
 私は文筆家じゃありませんけど。
 だいたい彼女の話は凡人の私には理解出来ないことが多い。
 畸人ないし天才は、だいたいに於いて自分流を貫いていて、意味が掴みかねる話し方をする人が大半だ。「映画をぜひ観て欲しい」と言われたので、彼女が私の書いた年賀状を受け取ってからDVDでも送ってくるのかな、と推測しつつ電話を切った。
 と、すぐにメールでVimeoのアドレスとパスワードが届いた。
 なるほどこういう便利なシステムがあるのか。
 で、夜11時、指定されたアドレスにアクセスしてパスを打ち込んだら、完成したばかりの映画が流れ始めた。映画は1時間半の尺だから最後まで観るとすれば午前零時半。なんか行きがかり上、すぐに観ないと自分が人非人に思える。
 部屋の電気を最小に落とした。MacBook Proとパワードスピーカーを繋いで、左右のスピーカーの真ん中に座った。
 女流カメラマンは私にとっていつも奇想天外な人で、突然に電話が入ったかと思うと東京芸大の大学院で勉強していると言ってみたり、しばらく音信がないと思っていたらロンドンに住んでいたり、「大学で講義をしているので一度聴講に来てよ」と言ったり、映画監督になったりで、平凡な私はそのつど、なんだかよく分からないけど面白そうとだけ感じ入るのだ。彼女の本を編集している間も幾度か彼女主催のパーティに呼び出され、あるときはまだ10代半ばの野村萬斎君が会の余興で能を披露したり、とても綺麗な女性がいたので名前を尋ねてみたら秋吉満ちる(のちにMonday満ちると改名)だったりで、びっくりさせられることが多かった。
 映画はかなりアブストラクトな構成と映像で、いかにも彼女らしい映像作品だった。座間の凶悪犯罪とは似ているストーリーだが、当然のことながら質が違う。生きるって何?という命題がストレートに貫かれている。
 深夜零時半を過ぎたところで見終った。まだ入眠剤は飲む前だったが、ひどく眠たい。
 でも、念のためにマイスリーを飲んでから、ちゃんと見ましたよ、という証拠を示したメールを3分くらいで書いて返信。今朝、自分がいったいどんな感想を書き送ったのか、覚えていません。
 
 今日はこの2カ月間ずっと懸案事項だった礼状を書いた。
 礼状の法則というのがある。すぐに出すなら、「ありがとうございました」に毛の生えたくらいの短い文章で済ませることが出来る。1カ月ほど経ってから出そうとすると、それなりの内容でないと許されなくなる。2カ月だとどうか?
 ちょっとした研究誌が11月1日前後に送られてきた。で、その冊子の中に私の本名と詩人に関する解釈が引用されていたのだった。それゆえ寄贈された。
 送られてきたのは編集作業でひどく忙しい真っ直中の時期で、私はどうしても詩人と詩人の先生について深く語って感謝の意を述べるということができなかった。「脳力」が乏しい私は、対象に100パーセント対峙しないと、自分の思いを述べられない。11月いっぱいはどうしても頭を切り替えることが出来なかった。
 12月の第2週から、今週中には礼状を書こう、と思いながら、毎週末、飛ばした。
 で、とうとう今日29日を迎えてしまった。
 まず午前中、3枚ほど年賀状を書いたあと、献本された研究誌をすべて目を通し、さらに自分が持っている参考資料をいくつか読み直した。徐々に、礼状で何をどう書いたらいいのかが見えてきた。
 昼イチから礼状をしたため、途中コーヒー・ブレイクを1回挾んで、午後3時過ぎに書き終えた。なんだか論文執筆をしたような気分。
 ラズリの散歩を兼ねて郵便局へ。
 青空が本当に美しかった。たぶん肩の荷が下りたからだ。
 もっとちゃちゃっとやればいいのに。
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